2021.12.21 目薬コロコロ

『キャー!何やってるの!?』

オバサンの大きな声。

院長は、とある地方都市のホームに停車中の本駅発列車の横シート座席に座って本を広げたところ。

昼下がりの午後の車内は乗客もまばらです。

 

『何やってるの!』

みんなが一斉に向けた視線の先には…

オジサンのが太ももがホームと列車の隙間にスッポリ。

目が点…あっけにとられている間もなく、すぐに、男性数人がオジサンを引っ張り上げ始めました。

発車まで数分。

事なきを得、救助した男性たちも、取り囲む人たちもサーっとそれぞれの方向へ。

 

70代前後のオバサンは、大声で『この人(同年代オジサン)、バスで疲れちゃったんですよ~。どこか、席座らせてもらわないと』と、アピール。

乗降口付近の乗客は、さっと別の席へ。

オバサンが先に座り、オジサンが後に続きます。

二人は、それぞれ4泊5日分くらいのキャリーケースを持っていました。

どこかの旅行の帰り?

飛行機+バス旅行?

だとしたら、あの空港から?

オジサンは、左太ももをさすっています。

『何やってるの?』(と言われても…)大声で繰り返すオバサン。

()は院長のつぶやき

『痛いの?』(そりゃ、痛いでしょ)

『骨折したの?』(まさか、それはない。おそらく挫創)

無言で太ももをさするオジサン。

対面の席で、大きな声で詰問するオバサンに、院長も怒られている気分に。

 

恐らく、加齢により、足を上げる力、踏み込む力が弱くなり、歩幅が狭くなってはまってしまったのでは。

大事に至らなくて本当に良かったです。

 

オジサン普段から、つまづき易かったり、転びやすかったりするのかな…

 

点眼薬も転がります。

先日、ある患者さんから『出してもらった目薬が、すぐ転がってしまう』との声。

後発品(ジェネリック)の場合は、医師がメーカーを選択することは出来ないので、薬局に在庫がある薬を受け取ります。

見せてもらったのは、ジェネリック品。

確かに、円柱形なので、キャップもボトルも、転がりやすそうです。

 

先発品新製品が出るたび、院長はあらかじめ点眼してみます。

 

・透明か濁りか

・しみるか否か

・さらりかどろり(粘度)か

・点した後の充血ありか

・点した後のかすみありか

など、特徴ある点眼薬を処方する場合は、予め、伝えるようにしています。

自分の体験談も。

 

先発品が優れていると一概には言えませんが、各社、点眼薬のボトルにも患者さん目線で考えています。

 

キャップの形で採用されているのは、10角形のねじれ。

12角形だと円柱型と同じように転がってしまうそうです。

8角形以下のねじれだとバランスが悪くなるそうです。

 

また、点眼瓶の先に穴が開いているだけのように見えますが、メーカーによっては、開栓しやすい様に、らせんのねじれになっています。

 

ボトルの形も様々です。

市販の点眼薬は、おしゃれなデザインで、医師が処方する点眼薬に比べて固いものが多いです。

処方点眼薬は、患者さんが使用するという前提で設計されています。

3本の指で、持ちやすいよう、指との接着面が広く安定するようになっています。

扁平型だったり、胴体がくぼんだ型だったり。

そして、少ない力で正確に1滴点眼できるよう設計されています。

 

容器も機能と見た目を兼ね備えているデザインになっています。

 

人は老化し、機能も見た目も低下してきます。

自身で努力できることはし、デザインの低下を少しでも抑えていきたいと思うある日の出来事でした。

オジサンの挟まった太ももを案じつつ…

 

 

来週12/28は『公センセの部屋』はお休みします。

今年もありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2022.12.7  押したり引いたり

担当の職場(スーパー)に近づくと、頭の中でテーマソングが流れるようになった産業医(院長)です。

 

1年に一度は健康診断結果の判定をします。

該当職場で労働は可能か、否か。

制限付き(時間・配置転換など)で労働は可能か、否か。

あとは、健診結果から、『要受診』対象者をピックアップします。

昨年、『要受診』と指摘した人が、今は『治療中』になっていると、ほっとします。

高血圧・糖尿病は特に自覚ないまま見過ごされやすいので、早期発見早期治療が大事です。

眼科健診項目は、視力・眼圧までがほとんどで、眼底検査まで健診で受けている人は少ないです。

眼科医としては、40歳過ぎたら、自覚症状がなくても眼科受診を!と言いたいところ(実際啓発しています)。

 

 

労災事故は、発生防止に努めていますが、担当する店舗でも一件発生しました。

50代女性スタッフが、飲料を積んだ台車を引いている際、誤って台車の車輪に足の小指を巻き込み骨折。

普段、台車(スーパーやホームセンターのカートではない)を使用したことのない院長は、早速、職場巡視で確認。

バックヤードに台車は多数。

荷物が載っているのも、空のも。

『これで小指骨折するんですか?』

カートを前後に動かしながら店長さんに尋ねます。

別のカートの場所に連れて行ってくれます。

2リットルペットボトル6本1箱が12箱。

上下2段に乗っています。

合計144キロ。

該当女性に近い院長(体系は不明)。

かなり重いながらも、車輪がついているので、押す方向にも引く方向にも動きます。

 

『引いていた時の事故でしたよね?』

普段、台車やカートは押すイメージの院長。

スーパーでは、品物の量(かさ)も重量も多くなります。

押して動かすと、前方不注意や、重量で走行の制御が効かず、お客様に被害を及ぼす恐れもあるそうです。

だから、自分のほうへ引きながら商品を運ぶのだそう。

しかし、重量のある台車だと、引いた時の重さで、すぐに静止しない場合があり、今回もこれに該当(かつ、バックヤード通路がやや暗かった)したとのこと。

自分も144キロ荷重の台車をやや勢いをつけて引いてみます。

結構なパワーの台車を受け止めないといけません。

小指が下敷きになったら折れるかも!?

その後、念のため、安全シューズの支給もすることになりました。

 

台車を引きながら浮かんだのは、視覚障害者を誘導する体勢。

クリニックでは、眼の悪い患者さんが多く来院されます(眼科なので当たり前)。

中でも、視力や視野がひどく悪く、院内を歩くにも、介助が必要な方がいます。

もちろん付き添いの方がおられますが、誘導の仕方は色々。

目が見えないから…と、患者さんの手を引っ張って進行方向に後ずさりしていく介助者が多々。

これは、介助者も進行方向が見えないので危険ですが、患者さんにとっても引っ張られる行為は不安です。

見えていないのに、どんどん前に行く不安。

視覚障害の方を介助するには、原則、横に立つことです。

肩もしくは腰に手を添えて、声をかけてゆっくり進む。

白杖で介助者付きの場合は、介助者の肩に手をかけて後ろを歩くことが多いです。

その際も、介助者は、歩行のペースや障害物などを知らせる必要があります。

 

明日から、スーパーで台車を見かけたら、運搬方法と荷重を見てみようと思います。

今回も、新しいことを知った産業医業務でした。

 

 

 

 

 

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2021.11.9  もはやお母さんではない

就学時健診の時期です。

近隣の小学校3校を受け持っているので、自転車で出かけます。

 

毎度のことながら、校門には、習い事のチラシ配りの人が。

数年前までは『お母さんですか?』と聞かれたものの、今は声もかけられません(当たり前ですが)。

 

この秋から読み始めた源氏物語(現代語訳)で、主人公・光源氏は40歳で孫を抱くシーンがあります。

65歳くらいの尼君(明石の御方の母)に至っては、十分品よくふるまっているようだが、もうろくして耳もよく聞こえない様子(と書かれています)。

はるかかなた、平安時代は、寿命も短い分、人生の営みも早かったのでしょう。

現代は、結婚出産も遅くなったとはいえ、院長の年齢なら『おばあさんですか?』と聞かれて『そうです』と答える人もいます。

健診の介助に付く若い先生は、息子たちと同世代。

早い家系なら、おばあさんです。

 

担当する小学校は全て視力検査をしてから、眼科の健診になります。

教室に自分で入ってこられる子、母親と手をつながないと医師の前に立てない子、入り口で泣いて入ってこられない子、診察の前で急に泣き叫ぶ子などなど色々です。

しかし、入学後の学校検診では、ほとんどの子は問題なく健診を受けられます。

ほんの半年ほどですが、1年生になり心にも成長が見られます。

ルールに従うことも、多くの子供ができるようになります。

1年生と2年生、2年生と3年生など、学年による心身の成長差はいつも感じることです。

 

今回視力が出なかった子(B/C/D)には、近日中に眼科での再検査を勧めます。

また、気になる眼の症状(斜視や眼の病気)がある子も、眼科の受診を勧めます。

『はい、わかりました』という保護者。

『ホントに見えなかったの!?』と子供に詰問する保護者。

『ふ~ん』と全然気にしていない様子の保護者。

保護者も色々です。

 

視力は、本人の見え方なので、再検査したときに異常はないかもしれません。

しかし、遠視や近視・乱視や何かの眼の病気がある場合もあります。

異常がなければ『良かったね』

異常があれば『早めにわかって良かったね』

 

就学時健診で視力D/Dだった患者さんが来られました。

少し遠い地域からの来院です。

強めの近視がありましたが、どんな度数を入れても矯正視力が出ません。

本当に近視なのか(子供は、見かけ上の近視ということがあります)、眼の奥に異常はないのか、精密検査をしました。

すると、見かけ上の近視で、実際には近視ではありませんでした。

また、眼の病気は何もありませんでした。

視力は出るはずなのに…

トリックを使って視力検査をすると、ちゃんと1.0まで出ました。

急を要する眼の病気はないこと、心因的な要因があること、視力は出ることをお母さんにお話しして経過を見ています。

『大丈夫!』

『安心して!』

お母さんによくかける言葉です。

 

先日81歳で校医をしておられる先生とお話しする機会がありました。

いまだに、自院の診療も。

81歳から見たら、まだまだ自分(院長)は若造ですが『お母さんですか?』と聞かれる年でもなし。

定年が来るまで、学校医頑張ります。

 

こちらの記事もぜひ、ご覧ください

お母さんですか~?

年齢分の長所

受診のお勧め用紙を貰われたら早めの受診を

就学時健診の母?

学校検診

健診のお知らせの受診率と育児の放棄

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2021.10.5 しどろもどろ

新型ワクチン接種当番は秋になっても続きます。

秋のゴルフラウンド用に買ったウエアも、近々のラウンドは未定。

こんな秋晴れの日に、ワクチン当番。

人の多いワクチン接種会場に、新しいゴルフウエアで出務です。

誰か見てくれるかな~?

座って医師用ビブスを着て予診。

誰も見ないわ、気に留めないわ(当然)。

ゴルフウエアで、ペンを握る院長です。

 

初回は、地元小学校で、高齢者優先接種。

基礎疾患がある人が多いことや、地元ゆえに当院の患者さんもいて、予診で長くなることも。

その後、年齢が徐々に下げられ、若年でも持病のある人の優先接種が始まりました。

月ごとに、接種者の層が変化していきます。

 

今回は、12歳以上の若年者が大多数に。

ほとんどの人は、基礎疾患はないので、病気に関してはほぼスルーです。

しかし、今までになく、ベッドで寝ての接種希望が。

ワクチンごときで?と思うオバサン院長ではありますが、繊細なお年頃?(若者)は、安心のためにもベッドで。

若い人ほど、不安・心配の心情が見受けられます。

 

『医師と話がしたい』と付箋を付けてきた女子高校生。

付き添いの母親はすでに接種済みです。

ネットで、ワクチン接種否定の記事をたくさん見て、接種すべきか迷っていると。

ワクチンの開発の話、接種のメリット・副反応。

打たない選択をした場合起こりうること、などなど。

『○○は絶対ですか?』

『医学に絶対はないから、最後は自分で決めてね』

『もう少し考えます』

予診ブースを後退して悩むこと30分。

『来春、受験なので、その時コロナに罹って後悔したくないので、打ちます』

本日接種可能にサインして、接種ブースに進んでもらいました。

『受験頑張って!』

 

接種後のブースでは、何人かの若者が気分悪くなり(いわゆる脳貧血)、内科医師が駆け付ける場面も何回か。

人生経験が浅い分、不安も大きいし、迷走神経も過剰に働いてしまいます。

 

今回は、外国人も多い印象を受けました。

ベトナム・インドネシア・タイ・フィリピンなど東南アジア系。

バングラディッシュ・インド・パキスタンの南アジア。

中国・韓国。

ほぼ英単語を交えた日本語の日系アメリカ人もいました。

何人かに接していると、顔形・姿・名前の表記から、どこの国の人か見当がつくようになってきました。

最初は出身国を聞いていたのですが、そのうち『○○国出身ですか?』と尋ねると『そうです。よくわかりましたね』と言われる始末。

ほとんどの人が、日常会話には困らないよう。

子どもだけが日本語に堪能で、こちらの内容を両親に母語で伝える場面も。

インドネシアでは、苗字がないことを知ってびっくり(教えてもらった)、豆知識も。

 

『先生、英語大丈夫ですか?』

いきなり、係の人が尋ねてきました。

『少しくらいなら…』

『では、今から英語しか話せない外国の人お連れしますね』

え~!?

30代の浅黒い髭の生えた男性。

問診票は、もれなく問題なしです。

なのに日本語話せないの?(厚労省HPに各語の問診票あり)

まずは、お決まりの『どちらのご出身ですか?』(拙い英語で)

『パキスタン』

接種は問題ないけれど、接種に当たっての注意事項や確認をしないといけません。

相手の話の聞き取りは出来るのですが、話そうとすると焦ってしまいます。

しどろもどろながら、相手は理解してくれてやれやれ。

半年ほど前に、英会話の勉強を少々再開したもののこのお粗末さ。

トホホ。

 

若者と外国人。

院長、人生経験は半世紀あっても、まだまだドキドキは健在?です。

 

過去の記事もご覧ください「2021.6.8 こんな所で…」

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2021.9.28 契約更新

学校医は、学校保健委員会や就学時保健委員会など、年に何回かある委員会に出席します。

必ず校医として発言の場が設けられるので、意見や見解を述べます。

 

さて、産業医は安全衛生委員会の出席があります。

安全衛生委員会とは、その事業場における衛生に関する問題について関係者が話し合いをする場のこと。

労働安全衛生法に基づき、常時100名以上の労働者を使用する規模の事業場で、月1回以上開催することになっています。

 

担当するスーパーでは、委員長は店長さんです。

安全管理者・衛生管理者・メンタルヘルス推進担当者・産業医が会社側のメンバー。

労働者側からも何人か参加します。

水産部門・畜産部門・農産部門・総菜部門…など、各部門ごとに。

 

嘱託産業医の院長は、毎回出席は難しいので、その時は前回の議事録を見て、店長さんに質問します。

スーパーという職場柄、スタッフの皆さんは、エプロンや長靴・コックシューズのままで委員会に駆け付けます。

全店舗の労働災害の報告が人事部から毎月入って来るので、その報告から始まります。

 

毎月、スーパーで多いのは転倒事故です。

高齢の従業員の転倒が多くなると、ケガも重症化しやすくなり、休業も長期化しやすくなります。

転倒の主な原因は、滑り・つまづき・踏み外し。

 

水産部門の水・氷や総菜部門の油など、スーパーは滑る場所が多いので注意が必要です。

アイスクリーム搬入時に床が濡れてしまい、高齢のお客さんが転倒してしまったという事例も。

濡れ・汚れを見たらすぐ清掃を。

あわせて、お客さん(主に子供)が、店内でする嘔吐することも結構あるそうなので、迅速な処理を。

冬場はノロウイルスにも注意ですが、『汚物処理ツールボックス』と言う専用キット(初めて知った!)があるので、手順通りに使用すれば良さそうです。

買った商品(大物)を忘れるお客さんにも驚きましたが、店内嘔吐事故?多数発生にも驚き。

 

以前の巡視で指摘した切れの鈍くなったかぼちゃカッターは新しくなりましたが、他店での巻きずしカッターでの切創事例を聞くと、鋭利すぎも怖い。

気を付けて取り扱ってほしいものです。

労災事故は極力起こりませんように。

 

食品を扱うので、作業場の温度管理も重要です。

冷蔵庫や冷凍庫から商品や材料を取り出す際には、事前に作業場を冷却しておくことは、毎回、店長さんが繰り返し言うことです。

一般家庭なら、冷蔵庫からエアコンの効いていない室内に出して調理、と言うことはよくあります(院長も)。

しかし、職場では、たとえ少しの時間でも、まず作業場を冷やしておくことが徹底されます。

食中毒の発生は致命的なので。

 

店内はいつもひんやりしています。

売り場は24度。

しかし、揚げ物作業場では27度にもなります。

火傷しないように、長袖長ズボンキャップなので、まめな水分補給を勧めます。

一方、水産作業場は18度。

制服だけでは、体の芯まで冷えてしまうので、支給のインナーを着用しての作業です。

同じスーパー内でも、かなりの環境差があり、個々の健康を維持しながら、作業を効率に進めるために勘考しています。

 

院長も産業医として、意見を求められます。

初出務の時は、ドキドキしていましたが、だんだん概要が分かってきたこともあり、この職場が好きになっています。

 

『次回は〇月〇日でいいですか?』

『はい、大丈夫です。伺います』

 

あれ?1年契約だったのでは?

どうやら本部から契約更新してもらえたようです。

産業医の成長物語?は続きます…

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2021.8.31  パラを見る

東京2020パラリンピックが開催されています。

オリンピックはニュースで結果を知ったくらいでしたが、パラリンピックのいくつかは、中継で見ました。

『障がい者スポーツ医』としてはぜひ見なければ!

『障がい者スポーツ医』とは、障害がある人たちがスポーツを生活に取り入れ実践していくためのスポーツ指導者です。

日々の健康増進のためのスポーツから、競技としてのスポーツまで指導内容は多岐にわたります。

専門科目は多岐にわたるので、恐らく、各々自身の専門科を活かしたスポーツに関与することが多いと思います。

院長は眼科医なので、視覚障がい者スポーツに特に興味があります。

 

視覚障がい者の種目としては

ゴールボール

5人制サッカー

陸上

水泳

柔道

自転車(二人乗りで前に晴眼者、後ろに視覚障害者)

 

視覚障がい者と言っても、その程度は様々です。

視力の程度(全盲~0.1)や視野の程度によってクラス分けがなされます。

クラス分けをするのは、障がい者スポーツ医の中でもパラリンピック級の選手のレベルを判定できる上級の医師たちです。

障がいの部位(視覚や身体、知的)などにより、各種目ともクラス分けがなされています。

個々の障害が競技に及ぼす影響を出来るだけ小さくし、平等に競い合うために必要な制度です。

 

さて、一番気になっていたのは、ゴールボール。

ゴールボールは、視覚障がい者だけが対象で、交互に投球して相手のゴールを狙い、得点を競うスポーツです。

 

院長は、2回、ゴールボール実践体験があり、少し身近に。

まず、視覚障害の程度による不公平をなくすために、アイシェード(真っ黒なゴーグル)をします。

これで、まったく見えなくなります。

選手3人が横並びに位置するのですが、相手がどこにいるか見当がつきません。

鉛の鈴が入っている重さ1.25キロのボールを相手のゴールにシュートします。

ボールがガードされれば得点にならず。

ガードをくぐり、狙い通りにゴールに入ると得点が取られます。

暗闇の中で歩く、ボールを投げる(というより重いので転がす)…

音のするボールが向かってくるのはわかっても、正しい方向は?ガードするためにどの位置に向かっていけばよい?足取りも及び腰…

わずかな体験なのに、ぐったりの院長でした。

 

さて、実際の試合をテレビで見てみると…

投球の時点で、まったく違います。

体験の時は、選手はもう少しゆっくり投球していたと記憶していますが、勝負をかけた本番は全然違います。

ぐるっと回転させソフトボール投げ+砲丸投げも混じっているような投げ方(院長表現下手)で、すごい速さでバウンドして相手のゴールに飛んでいきます。

スピンの効いた時速60キロ程度ともいわれる重いボールをガードできるのは、圧巻です。

聴覚と触覚を研ぎ澄ますことで、ボールの軌跡や他選手の動きが分かるのでしょうか。

 

他の競技も見ましたが、障がいを克服して何かを成し遂げるのは大変なことです。

日常生活でさえハンディがあるのに、ましてやパラリンピックに出場など想像を絶するものがあります。

障がいを克服(残存機能・他機能を生かす・代替する、補装具を使う)して、健常人でさえ成し遂げられないスポーツの頂点に立ったパラアスリート。

 

パラリンピックを詳しく知り、大きな興味と知識を持って観戦できたことは、障害者スポーツ医として最初のステップ。

今後は、地域の障がい者スポーツの普及・指導に関わっていきたいです。

 

※関連記事もお読みください

→2020.3.3 障がい者スポーツ医

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2021.7.20 仕事の帰りに

スーパーの産業医の仕事も、この時期になると、新型コロナ対策に加え、スタッフの熱中症予防、食中毒予防のための食品温度管理も話題に取り上げられます。

 

暑くなると、飲料やアイスクリームの売れ行きは良くなり、在庫補充管理で忙しくなります。

慌てて、大量の飲料を積み込んだ台車で自分の足の甲を轢いてしまった事故も他店では起きていました。

荷重量があったにもかかわらず勢いよく台車を動かしてしまったのが、原因。

力任せに台車を動かさない。

積載量を減らすか、複数人で動かすのが、再発防止対策。

ヒヤリハットの報告は、当院も朝礼時に共有していることなので、職種は違っても参考になります。

 

その日、ある冷凍室はがらんどう。

清掃の日でした。

冷凍庫ではなく冷凍室。

隣の冷蔵室も同様に広い。

ふだんの生活では見ることのない小部屋に、このスーパーの冷凍食品の在庫が保管してあります。

 

7月は切創事故防止月間(強化期間)です。

スーパーの裏側は、切れ物が多く、しかも業務用なので本格派。

かぼちゃカッターは、機械自体が重いので、清掃中にバランスを崩して切創が起きやすい。

畜産のスライサーは、刃に当たるだけで切れてしまうので耐切創手袋の着用を。

水産では、水気をふき取る際に包丁で手を切ることが多いので注意。

惣菜では、巻きずしカッターの機械を分解するときに刃に触れ切創となることが多いので注意。

巡視のたびに、本格派の刃物・スライサーを見てぶるっとする院長です。

 

巡回中、かぼちゃカッターの切れが悪いと現場より。

『事故防止のためにも新しいのに買い替えましょう』と産業医(院長)。

『いいんですか?』とスタッフ(店長さんを見る)

『いいですよね。事故が起こってもいけませんし』

『もちろんですよ、新しいのにしましょう。その代わり、新しいのは、刃がよく切れるから、そっちも気を付けてくださいね』と店長。

次回は、新しいかぼちゃカッターが見られそうです(すごく切れそうで怖いです)。

 

スーパーひとつとっても、色々な職種・部門があり、毎回新発見です。

 

先日の新型ワクチン接種当番日。

大型ショッピングセンターの接種会場へは従業員出入り口から。

バックヤードを通るときは、つい産業医の癖で見ている自分に気が付きました。

 

さて、産業医の職場に行くことも、小さな旅なのですが、今回オプションを。

職場と同じ町に温泉があるのを発見しました。

バスもない2キロの道を、職場のスーパーで買ったペットボトル(自販機より断然安い!)を携え、グーグルマップを頼りにてくてく。

夏日に、時速6キロ(院長通常時速)で歩くと、汗が吹き出します。

やはりパンツとスニーカー・リュックで正解でした(いつもは仕事用鞄・パンプスです)。

広いお風呂に、地元のおばあ様2人連れ2組、祖母と孫1組。

露天風呂と大浴場に浸かって『はあ~極楽~』

神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩などの効用が。

よく浸かったと思って、出るとわずか20分弱。

それでも、日頃の筋肉痛(ほぼ年中筋肉痛)が取れたような…

着替えてさっぱりした後は、再び歩いて駅へ。

小さなオプションでも、ちょっとしたミッションを果たしたようで、一人ほくそ笑む院長でした。

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2021.6.8 こんな所で…

新型コロナワクチン集団接種の初当番日。

医師会から日時・会場・役割(予診か接種)が指定されています。

 

時間より少し前に到着すると、既に接種希望者と思われる人たち。

場外案内・場内案内などなど色々な色のビブスを付けた人たちが対応に当たっていました。

『医師』と記してある青いビブスを着ます。

 

既に一日当番に当たった家人が『仕切りは段ボールでできていた』と言っていたので、さすが名古屋市!?と納得。

いわゆる茶色の段ボールを想像していたのですが、見当たりません。

予診のパーテーションや、接種ブースはきれいな白い壁。

あれ?でも、触ってみると確かに段ボール。

見た目は、普通の家の壁と遜色ないくらいです。

 

さて、当日接種可能か否か、接種後の待機時間をどうするかを決めるのが予診の担当です。

問診票に記入漏れや不備がないか確認、血が固まりにくい薬の内服やアレルギー反応(発作)を過去に起こした人は要注意です。

一通り話をして、最後に医師のサインをします。

 

今回は、地元の小学校が会場なので、地元住民が多くなります。

緑区在住がほとんどですが、区外、しかも市の中心部からも。

ワクチンへの関心が高いことを感じました。

 

当院の患者さんの問診をする機会も多々。

院長が目の前にいるとは想像もしていないので、多くの人は、サインも見ずに接種場所へ導かれていきます。

しかし、たまに問診時、目が合って『あっ!?』と驚かれる方や、問診票のサインを見て話しかけてこられる方もありました。

 

『あれ~!こう先生、こんな所で!先生たちは、もう打ったんだよね。どうだった?痛かった?大丈夫だった?』Aさん(女性)。

『打ったところが少し痛む程度で大丈夫でしたよ』

『明後日、テニスできるかしら?』

『たぶん2日後なら問題ないと思います。でも無理しないでくださいね』

『それ聞いて安心したわ。こんな所で、先生に会えるなんてよかったわ~』

 

『はせこうさん、こんな所でも働いてるの?』Bさん男性。

『医師会からの仕事なのです』

『大変だね~。あ~、最近眼科さぼっているから、また行くわ~』

『お待ちしてま~す』(と言うのも変ですが…)

 

『あっ!長谷川先生。その節は、家内がお世話になりまして…』Cさん男性。

『○○さん、その後いかがですか?』

『あれから転んで骨折して入院したら、認知症がどんどん進んでしまったんです。

もう私一人では見られないので、施設に入りました』

『そうですか…大変でしたね…お大事になさってください』

と、意外な近況報告を聞いたり…

 

65歳以上になると、集団接種会場でも、何の疾患もない人は一握り。

多くの方が、生活習慣病を始め種々の病気の治療をされています。

おくすり手帳は、薬を提示するには便利だと再認識。

病気や年齢によりますが、すたすた歩く人、杖や介助、車いすなど移動の仕方は色々。

ラフな服装が多いのですが、お洒落をしてくる人も。

65歳以上で一括りとはいえ、100歳までの範囲でも35歳の幅があります。

予診の合間に、アクリル板越しに会場を見ながら人間観察をしていた院長でした。

 

接種後の皆さんは何もなく無事に帰路へ。

私たちも無事本日の任務を終えました。

会場スタッフ全員が、持ち場をきちんと遂行してくれたおかげです。

お疲れさまでした!

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2021.5.25  深夜労働

産業医としての職場はスーパー。

先月、ドライブがてら職場にお買い物へ。

道路の混雑もあり、車でも1時間以上。

やはり電車で行くのが気楽です。

はるばる来たので、1週間分の食料をまとめ買いしてきました。

お客としても優等生な?産業医です。

 

今回は、深夜業務従事者の健診結果を確認しました。

深夜業は、午後10時から午前5時までの時間帯の業務です。

深夜業の交代制勤務で多いのは、ライフライン関係・飲食・宿泊業・製造業・運輸・医療福祉・その他諸々の順。

当スーパーも午後11時まで営業しているので、該当する従事者がいます。

 

深夜業を含む交代勤務では、不規則な生活習慣や生体リズムの乱れにより、病気発生のリスクが高まります。

睡眠障害(不眠など)・胃腸障害・生活習慣病(肥満・脂質異常・高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中)。

前立腺がん。

女性では、月経周期の乱れや流産・早産、乳がんも。

 

安全衛生法では6か月ごとに健康診断を義務付けられています。

 

健診結果を見ながら

この血圧では…

このHbA1c(糖尿病の指標)では…

などなど、気になる人には精査を勧めます。

あまり数値が悪いと、産業医が就業措置を検討しなければいけません。

店長さんがスタッフをよく把握しているので、紙面だけでなく、その人を何となく想像できました。

 

遅くまで営業しているのは、昼間よりはお客が少ないながらも需要があるから。

ライフスタイルの多様化は小都市でも進んでいるよう。

院長の過去の深夜業務は、研修医時代の居残り(仕事覚えるため)と研究補助の2時間おきの眼圧測定(この研究で院長も博士論文を)、病院勤務時代の当直。

まだまだ若く元気いっぱいの頃だったので、体力的に苦だとは思いませんでした。

 

しかし、ほぼ規則正しい毎日を送るこの頃。

年に一回の医師会の夜間休日診療で午後10時頃に帰宅すると、その日はなかなか興奮して寝付けません。

 

安全衛生委員会では、初めて聞くワード(業界用語)が出ます。

『ロードラインを守る』

ロードラインとは集荷限界線で、その線を超えるとケース内温度が既定の温度(-18度以下)に保たれなくなる限界を示す線です。

冷凍食品が山積みされると、冷気がその品物に届かず品温が上がったりして、ショーケースの温度が守られなくなり、品質管理上好ましくありません。

職場巡視の際、ショーケースのロードラインを確認しました。

どこのショーケースもロードラインを越えずに、商品が並べてありました。

前回の霜取り棒と言い、知らないワードを知ると得した気分です。

近所のスーパーでも確認しよっと。

商品が山積みされているお店は要注意だわ~

 

その他色々検討事項や相談に対応して、無事終了。

 

 

さて、田村正和さんの訃報で、追悼視聴を始めた院長です。

まずは『古畑任三郎』

刑事コロンボ風の演出が気に入って、家人が買っていたオリジナルDVD。

古畑任三郎を演じた年齢は、今の私たちより若かった!なんて驚きです。

1日1話、1日の終わりのお楽しみに。

 

犯人役のゲスト俳優を見ても、事件の詳細が思い出せず、初めてのような気になって見ているお得な院長。

ミステリー好きの家人は細かく覚えていますが、繰り返し見るのは楽しいよう。

番組ひとつとっても、見方の違う夫婦です。

 

DVDを見ながら…健診の人たちは、今頃まだまだ働いているのね…

健康に働いてほしいものです。

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2021.5.18 ワクチン2回目

1回目の新型コロナワクチン接種から3週間。

2回目の接種をスタッフ全員受けてきました。

何でも初めてのことには緊張しますが、2回目は楽な気持ちで臨みます。

当日診療時間の遅延のお知らせも早々に掲示していたので、患者さんとも話が盛り上がります。

少し前に、高齢者の集団接種の受付が始まったところ。

 

『3日間かけ続けたけれど、つながらなかった』

 

『連絡がつかないので区役所に出向いたけれど、予約は出来なかった』

 

『子どもに言ったら、PCであれよと言う間に予約を取ってくれた』

 

『23回目でやっと電話がつながったけれど、最寄りの小学校は空きがなくて、区外の接種会場となった』

 

巷(当院患者さん)の声は色々。

 

”固定電話いのちの我は押しつづけて 四日目つながるワクチン接種日”

まさに、某新聞の投稿短歌の如くです。

 

さて、2回目接種。

『20%は発熱、40%は頭痛が起こりますからね』と、説明を受けます。

以前、医師会の動画で、職場では分散して接種が望ましいと聞いたのですが、小さなクリニックだからか?全員同時接種。

明日大丈夫?

 

翌日、スタッフの一人が微熱。

微熱以外の他の症状は何もないので、副反応と判断し、欠勤に。

当院院長およびスタッフ調査結果。

当日の痛み(①~⑤ ⑤がMAX)

①57%

②43%

③④⑤該当なし

局所の痛み以外異常なし。

翌日の痛み

①42%

②24%

③24%

④⑤該当なし

微熱以外に、頭痛2名、倦怠感2名ありましたが、業務に支障はありませんでした。

しかし、帰宅後、倦怠感2名は発熱。

幸いにも一過性で、一晩で解熱し体調も回復しました。

院長はいずれも①で、翌日接種部位に10円玉大の薄い発赤を生じるのみでした。

 

 

緑区でも先週から集団接種が始まりました。

家人も先発隊として出務しましたが、とてもスムーズに遂行されたとのこと。

 

先日ZOOMで指定都市学校保健協議会学校医研修会がありました。

学校医として、生徒が健やかに学校生活を送れるよう、眼科・耳鼻科・小児科部門にわたり研修を受けました。

 

記念講演では、国立感染研究所の先生から新型コロナ感染の話。

 

”2020.2時点では10代未満が1.7%10代が0.6%と低比率だったが、その後若年層の比率も増えている”

 

”家庭内感染は、小学生では78%、中学生では64%、高校生では34%(2020.6~20201.4)

学校内感染は、小学校5%、中学校7%、高校24%

小学生は家庭内感染の割合が大きいが、中高校生では、生活圏や行動範囲の広がりが要因のひとつ。

学校内感染は小学校、中学校では極めて低い。

学校での感染対策はもちろんだが、それ以外の行動での対策も個別に必要”

 

”クラスター発生率は、2020.6~2021.3までで、小学校0.27%中学校0.48%高校4.25%と限定的。

自主的な活動増加(部活も含め)が要因のひとつ”

 

”乳幼児や学童は、青年期(10代)より感受性(感染の受けやすさ)は低い。

感染性(感染させる力)についてはまだ検討を要する”

 

引き続き、学校医として生徒の健康をバックアップしていきます!

 

学校検診が始まりました。

コロナ禍以前なら、運動会の練習で、児童たちの声が運動場に響き渡っている時期。

昨年に続き、今年も静かに廊下を歩いてくる児童たちを、静かな保健室で静かに検診をする院長です。

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