2023.1.10 めでたいたい焼き

昨年師走の診察室。

Aさん(75歳過ぎ、男性)入って来るなり、『センセイ、こんなものもらっちまったわ~』

『血糖値上がりました?』(いつもの血液検査の結果?)

『そっちは調子いいけど…』と、差し出したのは、違反切符。

一方通行を侵入してしまい、ミニパトの御用になったそう。

あの道は、昔は一方通行でなかったような…

『そうなんだわ、最近一方通行になったらしいわ』

更にもう一枚の紙を。

『後期高齢者だからボケてないか、認知症の検査して来い!だってさ。

センセイ、認知症の検査やってよ~』

当院は名古屋市の認知症早期発見事業として、もの忘れ検診を実施しています。

結果は、問題なし。

まぁ想定内でしたが。

 

眼科と言えども、患者さんとの会話が比較的多い当院では、会話がかみ合わなくなってきたら『あれ?』

認知症疑いや認知症を発見することもあります。

『この紙を出して、罰金払ってきておしまいだけど、痛い出費やな~

有馬記念(競馬)で頑張らんと!

センセイは何に賭ける?』

院長は、息子の影響で競馬は少々かじりますが、ビギナーズラックの後の落差が大きすぎて、以後賭けない!と誓ったのでした。

『幸運を祈ります!』

 

先日、かかりつけ医の認知症対応向上研修を受けてきました。

認知症は75-79歳で約10%(後期高齢者の入り口)

80-84歳ではその倍の約20%

85-89歳では約40%と増えていきます。

もの忘れ検診は、認知症早期発見・早期対応を推進する名古屋市の事業の一環です。

認知症サポート医になるには養成研修を受け、さらにフォローアップ研修を受けます。

 

よく、やれない事とやらない事を混同される場合があります。

例えば『掃除はきちんとできているか?』の問いに

1.もともとやったことがない(機会がない、経験がない)。

2.以前は、やっていたが(誰かが代わりにやるようになり)やる機会がない。

3.意欲低下でやれない。

4.やろうとしてもうまく出来ない。

と色々返答はありますが、認知症では『以前はきちんとできていたのに、出来なくなった』

4番の答えが該当します。

 

名古屋市には、『名古屋市認知症の人と家族は安心して暮らせるまちづくり条例』があります(院長も初めて知りました)。

いきいき支援センター(地域包括支援センター)では、認知症の人を介護する家族への支援も行っています。

徘徊する認知症の人のために、

『はいかい高齢者お帰り支援事業』(捜索協力メールが配信される)

『なごや認知症の人おでかけあんしん保険事業』(徘徊した人が起こした事故の補償などを支払う。名古屋市が保険料負担。医師の診断書要)

 

65歳以上がもの忘れ検診の対象です。

子供じみた検査と思わないで、もし見つかったら怖いと思わないで。

どんな結果でも意義ある検診です。

 

さて、年内最終日。

受付スタッフから『Aさんから差し入れです』

まだほんのり温かいたい焼き。

『いただいたときは熱々だったんですよ』

Aさん、きっと有馬記念上手く当てたのね!?

1着のイクイノックス単勝ってわけでなく、いつものように3連単買いなのかな~

 

Aさんにとって、めでたいたい焼きだったと信じたい。

人間万事塞翁が馬というように。

院長もスタッフも、たい焼きでめでたい(ハッピー)気分。

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小さなめでたい!を見つけて感謝していきたいと思います。

今年もよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事

2022.4.12 白内障と認知症

新聞の旅行広告に加え、週刊誌などの広告も欠かさずチェックしている院長です。

週刊誌を購読する習慣もなく、喫茶店に入って読むという習慣もないので、見出しだけで勝手に想像しています。

”眼の老化「白内障」の手術で「認知症発症リスク」は30%低減”

ある日の週刊誌の広告見出しです。

いつもならサ~っと流し読みですが、職業柄、ん?

今月の眼科学会誌でこのような内容を読んだばかり。

 

眼科学会では、高齢化に伴う眼科医療について常々検討・論議されています。

週刊誌の詳しい内容はわかりませんが、出版業界としては、目を引くような見出しやワードが読者の関心を引き売り上げにつながります。

健康関連の一般向け書籍でも、タイトルはびっくりするほど気を引きますが、内容は大したことがなかったり、医学的根拠に乏しいことも多々あります。

体験談が多いのも特徴です。

院長なりの学会誌に基づく解釈をしたいと思います(→院長コメント)。

 

まず、健康寿命を脅かす3大要因は、認知症・メタボリック症候群・フレイルです。

 

#高齢者の健康状態の特徴とQOL(生活の質)を調査する疫学研究(藤原京スタデイ・奈良県65歳以上約2900人参加)において…

視力不良を0.7(運転免許必要視力)未満とした時

視力良好(0.8以上)群では認知症5.1%

視力不良(0.7未満)群では認知症13.3%

視力が悪いほど認知症が増加していた。

 

#視力不良(0.7未満)群では、認知症のリスクが2.9倍高かった。

 

→白内障は加齢に伴い必発の病気です。

矯正視力0.7が視力不良のひとつの目安です。

 

 

#白内障手術既往群(668名)と非手術群(2096名)の2群で分析を行ったところ、視力の要因と関わらずMCI(軽度認知機能障害=認知症の前段階)を2割程度防げることが分かった(藤原京スタディ)。

 

→まずはMCI の早期発見が大事だと思われます。

名古屋市では65歳以上対象に物忘れ健診を実施しています。

当院でも実施していますのでお問い合わせください。

 

#80歳以上では、白内障手術を受けていない眼は、手術を受けている眼よりも優位に視力(0.7)が悪い。

 

→80歳以上だと、白内障手術をした眼のほうが、白内障手術をしていない眼よりも有意に矯正視力がよくなっています。

白内障手術をした眼は、眼鏡で矯正すれば視力が出る。

白内障手術をしていないと、眼鏡で矯正しても思うように視力がでない。

80歳未満だと、両者に有意差は出ていません。

 

→80歳未満だと、白内障手術をしなくても、眼鏡で良好な矯正視力が出れば、白内障手術を慌ててする必要もありません。

80歳以上だと、眼鏡よりも白内障手術をしたほうが、良好な視力が出やすいということです。

 

 

今すぐにでも認知症予防に、白内障手術を受けたほうがいいの?と心配されるかもしれません。

白内障は、多くは加齢による水晶体の濁りなので、しわのように多少に関わらず出現してきます。

矯正視力や裸眼視力で運転など支障がなければ、急いで手術する必要はありません。

多くは、眼科医のほうから手術適応のタイミングで声を掛けます。

もちろん視力がよくても、見え方の質にこだわられる方は、早めに受けることも可能です。

 

テレビや週刊誌の見出しで慌てず、眼科医にご相談ください。

 

 

 

カテゴリー:眼に関すること

2020.3.24  MCIって?

先日、『名古屋市もの忘れ検診』について告知したところ、検診を受けられる方が増えています。

当院まで、ほぼ自力で通院。

受付後、視力検査をし、時には視野検査や画像検査もしてから診察。

この間、必要事項だけでなく、何気ない会話が成立している眼科の患者さんは、しっかりされている方が多いように思われます。

 

『もの忘れ検診』のパンフレットを見せると…

『うん、うん。気になってたのよね~最近、良く忘れるし』

『大丈夫だと思うけど、受けて、確認してみようかな~』

『私より、お父さん(夫)の方が心配なのよね~』などなど、様々な反応がありますが、概して検診意欲あり。

もちろん、なかには『結構です!大丈夫です!』ときっぱりと拒否、もしくは『そのうちに…』との先延ばしの返事もありです。

 

難しいことは何もなく、簡単な質問に答えていくだけです。

同居家族の方が、医療者より検診を受けられる方のことを良く知っていることが多いので、夫婦・家族などで質問に答えることも有意義です。

 

『今いるところはどこですか?』

『はせこうさん』(はせ川こうクリニックは結構短縮で呼ばれています。院長を示す場合もあり)

『緑区兵庫』(近所だと地名までわかります)

名古屋市。日本。地球。など、どれも正解です。

 

『一人で買い物出来ますか?』

『いつも嫁さんが買い物してくるから、一人で買い物なんかしたことないな』こういう答えもあります。

 

『入浴は一人で出来ますか?』

『当たり前じゃない。誰かと一緒なんて、お父さん(夫)とでも嫌だわ~』

 

想像を超えた返答が他にも多々…

 

生活に関する質問は、検者や配偶者・家族との関係も垣間見えて、更に世間話的に広がりが出ます(検診後)。

そういった一連の検査結果を集計し、判定します。

 

『認知症の低下は認めない』

『認知機能低下の可能性あり』

『認知機能低下がある』

 

いずれかの結果を伝えます。

『検診受ける前は、ドキドキだったわ~』

少しでも認知機能低下がみられれば、精密検査を推奨します。

 

積極的に検診を受けられる方、80歳近くになっても仕事を持っておられる方は『認めない』傾向にあります(当院調)。

 

『もし認知症だったら怖いから、受けない』と乗り気でない方があります。

実は、いきなり『認知症』になるのではなく、その手前には『MCI:Mild Cognitive Impariment 軽度認知障害』が存在します。

正常な状態と認知症の中間です。

 

アルツハイマー型認知症の原因物質アミロイドベータは、アルツハイマー型認知症を発症する20年位前から蓄積されていると言われています。

MCI(軽度認知障害)の段階でも、脳内にはかなりのアミロイドベータが蓄積しています。

しかし、MCI(軽度認知障害)の時点で早期発見することで、適切な対策や治療で発症を遅らせられる可能性があります。

そのためMCI(軽度認知障害)の早期発見が重要なのです。

 

これは、緑内障でも言えます。(←話は飛びますが、眼科専門医からのメッセージ)

患者さんが、見え方の異常を自覚して来院された時には、中期から末期になっていることがほとんどです。

他の理由で来院されても、リスクや怪しいサインがあれば、緑内障の精密検査を勧めます。

緑内障の前段階の『前視野緑内障』の病態も、注目されています。

40歳過ぎたら、緑内障(前視野緑内障)に注意!

 

早期発見すれば早期治療が可能です。

気軽に検診受けてみませんか。

 

こちらもご覧ください

名古屋市もの忘れ検診

カテゴリー:眼に関すること

2020.2.25  名古屋市もの忘れ検診

院長は眼科専門医ですが、『名古屋市もの忘れ相談医』でもあります。

スタッフも講習を受けて『認知症サポーター』です。

眼科はせ川こうクリニックは『認知症の方にやさしい店』に指定されています。

当院では、患者さんと会話の多いクリニックゆえか、眼科診療中の会話の中で『あれ?』と『認知症』を疑うとスクリーニング検査をし、『認知症サポート医・専門医』に繋げています。

『認知症』も軽度だと、簡単な会話は成立するので、既に内科にかかっていても、気付かれないこともあります。

 

今年度から、『名古屋市もの忘れ検診』が始まっています。

当院も実施医療機関です。

 

検診に関連して、国立長寿医療研究センターの先生から認知症の講義を受けてきました。

 

認知症に大きく関与しているのは…

中年期では、高血圧・肥満・聴力障害

高齢期(60歳~)では、うつ・糖尿病・運動不足・社会孤立・喫煙だそうです。

 

中年期の肥満は発症リスクを上げるけれど、高齢期にはやや太っている(ぽっちゃり)の方がリスクを下げます。

また、やせ(BMI<20)もリスクを上げます。

高齢期には、無理に痩せてはいけません。

体重減少と認知症も相関ありです。

 

糖尿病は認知症発症のリスクを上げますが、糖尿病性網膜症(眼底に出血など起こる)など末梢血管の循環が悪くなると、さらにリスクが高まるとのこと。

眼科と認知症もリンクしています。

 

喫煙もリスクありなので、禁煙をお勧めします。

喫煙は、眼科の病気(加齢性黄斑変性症など)を含め、ほとんどの慢性の病気のリスクになっていますが。

 

運動習慣も大事です。

推奨は1日60分ほど、1週間に3~4回、中~強度の強さで続行すること(体力のない人、機能の衰えがある人はこの限りでない)。

有酸素運動、筋トレ、太極拳(体幹を使う)などの運動が有効です。

 

あとは、社会との繋がり。

繋がりの大きさは関係なく、外部社会に参画することが重要。

 

内容は、どれも、スタディ(研究)に基づいた事実や仮説であり、非常に興味深い内容でした。

眼科以外の勉強は、いつもリフレッシュ出来て楽しい!と思うのは院長だけ?(もちろん眼科の勉強も楽しいですが)

 

人生100年時代。

現在95歳以上だと、女性の4人に3人、男性の4人に1人が認知症です。

誰もが、なり得る認知症だからこそ、発症リスクを抑える努力(予防)をしたり、早期発見・治療に主眼が置かれてきています。

認知症になったとしても、社会生活に支障を及ぼさずに、天寿を全うする。

これが、今の認知症治療の目標です。

 

認知症の患者さんを、目の病気の依頼で往診します。

認知症の程度も様々、認知症の進行具合も様々です。

 

『名古屋市もの忘れ検診』は、1年に一回受けられます。

65歳以上で認知症と診断されていない市民が対象です。

受付にお申し出ください。

 

まだ若い(と言っても中年…)院長は、今のうちに、リスク軽減に努めたいと思います。

カテゴリー:クリニックに関すること 眼に関すること
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