2023.7.25 白目が真っ赤

日常診療で、充血が気になって来院される患者さんはとても多いです。

ある日、A君が何年かぶりに受診。

『朝起きたら、左眼がすごく充血していてびっくりして来た』とのこと。

診察すると…左眼の白眼は真っ赤!

充血ではなく出血です。

充血は、結膜(白目の上にある透明な膜)下の毛細血管の拡張です。

出血は、結膜下の血管が破れ、結膜の下に出血し、白眼(結膜)が鮮紅色になった状態を言います。

『充血じゃなくて出血ですね~』

 

内科的な病気(高血圧や糖尿病・抗凝固剤内服など)の有無は尋ねます。

 

外傷(物が当たったとか打撲とか)の有無も。

 

いきむようなことをしたか?も。

 

毛細血管へ圧が加わり、血管が破れて出血します。

 

原因を特定できない場合も多いのですが、50~60代に多いと言われています。

毛細血管の強さと、眼瞼の開閉の摩擦力のアンバランスが、この年代に最も起こり易いということです。

若い時は、瞬きが力強くても、毛細血管も強い。

高齢になると、毛細血管も脆くなるけれどまぶたの開閉の圧も弱い、というわけ。

 

最近では、ドライアイとの関連も明らかになってきました。

涙が少なく角膜表面の涙のノリが悪いと、まぶたの開閉に摩擦が起きやすくなります。

そのため血管が破れやすくなります。

若年で結膜下出血を繰り返す人は、ドライアイが隠れているかもしれません。

ヒトは通常1分間に約20回瞬きをします。

1時間で1200回、1日16時間起きていたら2万回近く瞬きをしています。

ドライアイの強い人は、ウオッシャー液無しでワイパーを動かしているようなものです。

 

多くの結膜下出血は経過観察でも消退していきます。

場合によっては、点眼薬を処方します。

原因不明として治ればよい結膜下出血なのか、その裏に隠れている要因を治療したほうがよいのかは、眼科医でなければわかりません。

例え受診して心配ないと言われても、それは眼科医からの責任ある言葉なので、自己判断・放置はしないほうが良いと思います。

 

さて、さきほどのA君。

『原因不明だけど、大丈夫。1週間くらいでひくから』

『あの~先生。昨日、飲み会があって、すごく飲んじゃって、最後に何回も吐いちゃったんですけど…関係ありますかね?』

あああ~

年齢見ると20歳!

Aくんは、ずっと中学生のまま(最後の受診)だと思い込んでいたけれど。

もう成人で飲酒する年齢。

吐くほど飲む…なんてこと、有り得る年齢でした。

嘔吐で腹圧は上昇します。

『そっか~。もう成人だもんね。飲むのはいいけど、ほどほどにしてね』

 

初診の80歳の患者Bさんは、『以前母が受診して』が来院理由。

お母さんの近況を聞くと、もうあちらの世界へ。

Bさんは、加齢により白眼(結膜)がたるんで(弛緩)いました。

その周辺に結膜下出血が。

『ひどい便秘で、今朝すごくいきんだからかしら?』

恐らくそうです。

排便時のいきみも要注意です。

 

『結膜下出血は50~60代に多い』の説明を他人事のように説明していた頃もありましたが、今はしっかりその年代。

眼科医として、自身の眼の変化も実感するこの頃です。

 

こちらもご覧ください

休日診療所

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2023.7.4 目の神様 in 仙台

先日は仙台で学会。

仙台と言えば、学会以外に気になる場所が。

目の神様ミーハー(罰当たり)の院長としては、マークしておいた目の神様にお参りに行かねば!

 

青麻(あおそ)神社と言います。

地図で調べると、『宮城県民の森』の中にあるそう。

基本、公共交通機関+自分の足で移動派の院長。

東北本線で仙台から北上し、岩切駅下車。

そこから神社までは5キロちょっと。

表参道は桜の名所だそうです(今回は時期外れ)。

歩けない距離ではありません。

 

しかし、目指すは森と言うより小山。

天候は小雨。

フォーマルではないものの、仕事で通用する格好。

 

駅前のタクシーに乗ります。

タクシーはぐんぐん坂を上がり山の上へ。

通りすがりの人影も車もなく、タクシー乗車でさえやや不安です。

徒歩決行せずに良かった!

 

言われは…

岩切村の山中に青麻権現社があった。

高さ1丈余りの岩窟があり、古来大日・不動・虚空蔵の三佛を祭ると伝えられていた。

純朴正直な青年が、長く目を患い、遂には失明に至った。

1682年4月1日に、一人の老人が、天を拝み黙禱(もくとう)するように告げた。

『吾はお前が純朴なので、目が見えなくなったのを憐れに思う。お前が吾が教えに従えば程なく病は癒えるであろう』

青年が毎日拝み続けることで、30日余りで目の病は全快した。

再び、老人が現れ、名を問うたところ、源義経公の臣下であった日立坊海尊とのことであった。

その後、海尊仙は、この岩窟に入られたとのこと。

 

現代の眼科では、失明は病気のエンドステージで、不可逆な状態です。

わずかな光でも感じられれば、失明ではないので、可逆的な(良い方向へ)期待が出来ます。

そして、その最先端は、iPS細胞を網膜に移植する研究・治験です。

 

しかし昔々であれば、目が見えなくなった=(現代の)失明ではないのでしょう。

おそらく、極端な近視や遠視もなく(もっとも、細かい文字を書いたり読んだりする機会もほとんどなく)、平均寿命も短かった(加齢に伴う現代の病気が発症する前に寿命が尽きた)ので、生活するうえで支障になる眼病はほとんどなかったのだと推察します。

感染症(結膜炎や角膜炎)は、当時のほうが、治療困難を極め(点眼薬なし)、眼病の主な原因だったかもしれません。

当時の生活での不自由さが生じた時点で、失明と定義されたのかも。

 

現在の眼科医は科学者ではありますが、心の拠り所としての寺社参拝は、日本人だからか?院長だからか?

今回も、患者さんのためにお参りします。

自身にも眼科医としての能力をもっと授けてください(願うだけでは叶いません)。

 

待たせておいたタクシーに乗って下山します。

帰りも誰ともすれ違わない不思議な道でした。

 

再び仙台駅に戻り、大好きだけどなかなか食べる機会のない『ずんだ餅』を。

一口頬張り『幸せ~』

若い子たちはずんだシェイクを頼んでいたけれど、お餅が王道でしょ~

 

今回も、迷医の院長がすがる?お守りをいただいてきました。

もちろん、院長も自己研鑽します。

 

■目の神様シリーズはこちらからご覧ください

やりなおしたい?

初めての御朱印

身代わりどじょう

目の霊山

余呉へGO,GO

鎌倉好き

医者も祈願する!?

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2023.6.27 何しに台湾?  その2

前回からの続きです。

 

台湾では、近視矯正手術やオルソケラトロジーも盛んです。

日本では、眼科医がオルソケラトロジーの講習を受け認定を受けて始めます。

当院でもガイドラインに沿って実施しています。

さて、近視大国?の台湾ではどうなのか、眼科の窓口に行ってみることにします。

 

大きな眼科です。

扉には、医師の名前、治療項目が書いてあります。

日本と同じ表記もあれば、中国語特有の表記も。

屈折手術をした有名人の立て札があります。

オルソケラトロジーについて聞きたいと言うと、隣接の眼鏡屋さんを紹介されました。

 

日本では、現在オルソケラトロジーは、近視になり始めの早期介入が勧められ、中等度近視までが良い適応とされています。

大体小学生位から中学生までの装用が多いようです。

 

一通り聞いて、息子の年(20代)と近視度ではどうか尋ねてみました。

(日本では、適応外となる年齢、近視度)

眼鏡屋さんは慣れた様子でオルソケラトロジーのパンフレットを見せ、息子の年齢でも可能だが、片眼は近視がより強いので料金は○○台湾ドル余分にかかることを説明してくれました。

きっとオーダーコンタクトレンズのデザインが変わったり、時間をより要するからなのでしょう。

 

ミッション2

オルソケラトロジーの適応範囲は日本より広い。

オルソケラトロジーは眼鏡屋さんの担当。

 

オルソケラトロジーが眼鏡屋さん担当なら、コンタクトレンズも眼鏡屋さんの担当です。

『コンタクトレンズを買いたい』と伝えると、

1デイか2週間タイプか?

日本では、1か月タイプや通年性のSCL(ソフトコンタクトレンズ)、ハードコンタクトレンズがあります。

台湾では、1デイか2週間のSCLのみ。

以前使ったSCLがあれば、同じ商品を勧められます。

種類は日本より少ないようです。

遠近両用SCLもありません。

『眼科に行かなくてもいいのか』と聞くと、必ずしも必要でないとのこと。

コンタクト初めてまたは希望すれば屈折検査(機械でどの程度の近視か測定)をしてくれます。

その値からSCLの度数を選んでくれます。

初めて台湾製のSCLを見つけました。

値段は、他の外資系SCLに比べても、一番の高価格です。

『なぜ、これはそんなに高いのか』と聞くと、シリコン素材の高品質で、保存液にはヒアルロン酸配合とのこと。

『せっかくなのでそれが欲しい』と言うと、遠近がない(院長老眼あり)ので、両眼遠方重視で近くを見るときに眼鏡をかけるか、片眼視(片眼で遠くを見えるようにし、もう片眼で近くを見えるようにする)を提案されました。

この辺りは、しっかり説明してくれます。

『試しにはめてみて、フィッティングと視力を測ってほしい』と言うと

???

日本の眼科での処方を話します(一般患者として)。

相互理解に至る、この時間が長かったです。

中国語トライ→英語トライ→翻訳アプリ。

苦笑しながら店員さん。

『試してみるとか、はめてから視力を測るというシステムはありません!』

『買ってから付け心地や視力の出が悪かったらどうするの?』

『まずは買ったのを使ってみて、次回別のを試(購入)しましょう』

 

ミッション3

台湾ではコンタクトレンズは診察なしで買える。

ただし、かなり自己責任部分があることも忘れず。

日本の眼科医による処方は安心(眼疾患の有無も確認)!

 

ほんの少しの中国語+少しの英語+翻訳アプリで気になっていたことを解決。

行かなきゃわからなかった。

中国語玉砕のリベンジは…します!

 

こちらもご覧ください。

2023.6.13  近視進まないで~

 

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2023.6.20 何しに台湾?  その1

近視関連の学会や話題が多くなってきた近年。

オルソケラトロジーも含め近視関連の論文を読んでいると、意外に中国・台湾・シンガポールといった東アジア発が多いことに気が付きます。

論文は英語なのですが、何篇も中国・台湾・シンガポール…と出てくると、近い外国だしいつか行ってみたい…

そんなきっかけから約1年前独学で中国語を開始。

腕試しも兼ねて一番行きやすそうな台湾行きを決行!

与那国島から見えたくらいだからね~

 

中部国際空港から台湾桃園国際空港へ。

人々の顔は似ていますが、中国語が飛び交います。

来ちゃったけど、大丈夫?

 

今回のミッション

1.台湾の小学校での近視進行予防の取り組みを聞いてみる

2.台湾でのオルソケラトロジーの話を聞く

3.台湾でコンタクト処方をしてもらう

 

故宮博物館を観覧していると、小学生の集団がやってきました。

小学3~4年生くらいです。

20代男性の先生が、注意を述べた後、自由観覧となりました。

チャンス!

すすすーと近づき

『初めまして。私は日本から来た眼科医です。2時間以上の屋外活動で近視を抑制したという台湾の論文を読みましたが、現場ではどうでしょうか?』

初対面なのに、かなり図図しい日本人オバサン(院長)。

若い先生は、警戒することなく(いい人だった~)対応してくれました。

ちなみに、最初の2文(中国語)は練習してきたからスムーズ。以後、文にならず…途切れ途切れ…だんだん英語に…

先生も、最初は中国語でゆっくり話してくれましたが、院長に合わせて英語で。

しかし、双方とも医学用語や教育用語など微妙なニュアンスが伝わらず、後半は日本語・中国語翻訳アプリの登場となりました。

アプリ恐るべし。

子どもたちが珍し気にどんどん集まってきました。

『何してるの?』『この人だれ?』って感じで。

どの国の子供も同じ。

 

まとめると…

小学生の近視の増加は、学校も気づいているし、気にしている。

厳密に何時間屋外活動とカリキュラムに取り入れられてはいないが、担任ごとに努力はしている。

例えば、昼休み90分の間はPCやテレビを見ないように指導。

月に一度は野外活動を計画。

先生は、『名古屋』や『三重』の地名や日本語も少し知っていて、大学で学んだとのこと。

 

別日に出かけた台湾民主記念館でも、同様の答えが。

この時は、小学1年生だったせいか、屋外でもさらに賑やか。

また、あちこち行かないように複数の先生が号令を。

天気の良い日だったので、バイオレット光も良く浴びました。

 

屋外活動が良いということはわかっているが、厳密に管理されているのではない。

(論文は、方法をきちんと設定したうえでのデータ)

しかし、教育の現場は何処も学童近視が少しでも進行しないように、努力している。

 

博物館からの帰り、タクシーに乗ってホテルを告げると、運転手さん『?』

地図は日本語と英語表記。

大きなホテルです。

しかし、ホテルも中国名で言わないとわからない運転手さんでした。

メーターは上がる、ちっともホテルに着かない…

どうしよう…焦っていると、交番の前で停車。

『場所を聞いてくる』(速い中国語で聞き取れず)と言ったよう。

戻ってくると、中国でホテル名を言いグ~の合図を。

ホテルはすぐそこでした。

メーターより安くしてくれて、謝ってくれました(ここは聞き取れた)。

『謝謝』

 

ミッション1終了。

続きます。

 

近視関連についてはこちらもご覧ください

2023.4.11 2023日本眼科学会総会

2020.5.26 ステイホームで見すぎちゃう

2018.3.6 子供の近視

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2023.6.13  近視進まないで~

オルソケラトロジーの近視抑制効果が証明されてきた近年。

医学は進歩し、医師の頭も上書き保存の連続。

親が近視なら、子も近視になるのは仕方がない。

親と同程度の近視になるのは仕方がない。

眼科医(院長)でもそう思っていました。

成人になった息子たちには申し訳ないが、当時はわかってなかったんだもん!

 

当院もオルソケラトロジーを導入しました。

今回は、よく尋ねられるQ&Aを。

 

Q1:近視抑制治療は何歳から始めて何歳までくらい続けますか?

A1:近視になった時が一番のタイミングと考えられます(学校検診で初めて用紙をもらった時など)。

ただし、自覚がないことが多いので、ためらうことも多いと思います。

次は、視力が低下(近視進行)して、眼鏡を処方しようかどうかの段階。

眼鏡をかけて経過を見たいか、オルソケラトロジーを始めるかを考えましょう。

治療を早く始めるほど、最終的な近視度数を抑えられると考えられています。

眼軸長(眼の奥行)の伸びと身長の伸びはある程度相関すると言われています。

一般には、眼軸長の伸びが落ち着く15歳(中学卒業)くらいが目安です。

もちろん、高校生以降も続けることに問題はありません。

 

Q2:30センチ以上離して、正しい姿勢で読んだり見たりすると目に良いのは本当ですか?

A2: 文部科学省の『児童生徒の環境に留意してICTを活用するためのガイドブック』から。

視距離は30センチ以上

背中を伸ばす

目線は画面に直行する角度に近づける  など。

シドニーの研究では、30センチより短い距離で読書すると、近視化を促進すると報告されています。

また、スマホなどの20センチの近業は、両眼で融像(左右の目でひとつに見る)できるギリギリの距離なので、視覚負荷が大きいことが分かっています。

ですので、近用時最低30センチは必要な距離です。

 

Q3:明るい部屋で読書をすると目に良いのは本当ですか?

A3:紙媒体の本を読むときは、室内光が明るい方が、読書速度の低下や眼精疲労の惹起を軽減します。

また、スマホやパソコンの場合、外の輝度と画面の輝度に違いがありすぎると、視線を移動したときに、順応の切り替えが必要になり、眼精疲労を起こしやすくなります。

ですので、室内照度は画面の輝度と同程度にすると疲れにくいと考えられます。

 

Q4:30分ごとに休憩すると目に良いのは本当ですか?

A4:労働衛生学的には、デジタルデバイスを用いた近業時に、眼精疲労を軽減するために、20-20-20ルール(20分近業作業→20秒作業中断→20フィート(6M)より遠方視)が推奨されています。

さらに、子供は1日2時間の屋外活動も推奨されています。

オーストラリアの研究では、30分程度の近業後休息を入れることで、近視抑制効果があることが示唆されています。

 

Q5:スマホ、テレビ、ゲームは目に悪いのは本当ですか?

A5:最近では、単なる近業時間の長さではなく、一定以下の視距離で行われる近業時間の長さが、近視発症の原因として重要視されています。

スマホや携帯型ゲーム機では十分な視距離を取ることが難しいのです。

中国のスタディでは、両親の近視の有無に関連なく、すべての生後1歳以内の乳児はスクリーンタイムを避ける必要があると結論づけられています(遺伝だけでなく環境も重要)。

生後8か月までは眼軸長は劇的に伸長するため、3歳まで屈折値の変動が非常に大きいので、視機能に大きな影響を与えます。

 

これから成長する小さな患者さんのために近視進行抑制のお手伝いします。

学校健診の紙をもらったら早めの受診を。

 

過去の記事もぜひご覧ください

寝押しのイメージ

2023日本眼科学会総会

 

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2023.5.30 脳と緑内障

名古屋で視野画像学会。

岐阜県多治見市で第一回が開催。

中央線に揺られて行ったのは、もう11年も前のこと。

 

眼科と言っても、大きな日本眼科学会総会や臨床眼科学会のみならず、部位や病気や検査など細分化されて、規模の小さい学会が多数あります。

例えば、角膜・水晶体・神経・網膜硝子体とかの部位。

近視・アレルギー・白内障・緑内障・糖尿病などの病気別。

視野画像・眼光学・眼薬理・眼循環など検査や基礎的な仕組み別。

総論と各論みたいな。

切り口色々。

そして、それぞれが繋がっています。

物事全てそう。

 

さて、今回の学会。

緑内障は、視野検査はもちろん画像検査も欠かせません。

患者さんの多くが、乗り気ではない視野検査は、病気・進行判定にとても大事間検査で、定期的に施行することでデータの信頼性も増します。

世界標準の自動視野計(当院も設置)は、発売当初(30年以上前)より非常に時短になり、進行予測も計算してくれます。

それでも更に短時間で正確な視野計を目指して、各社がしのぎを削っています。

 

眼圧は、緑内障診療では、アプラネーショントノメーター(点眼麻酔をして眼科医が測定)が世界水準ですが、自己測定用の自動眼圧計もいつも話題に上がります。

実用化され廉価になれば、家庭血圧計のように普及するかもしれません。

 

OCT(光干渉断層撮影)により、緑内障早期発見率がぐっと高まりました。

神経線維の厚みも、神経を栄養する毛細血管の様子もわかるようになりました。

診断機器の能力や可能性は日々進歩しています。

使いこなして、患者さんに還元しないと、宝の持ち腐れになってしまいます。

 

視野と画像…深い深い、もっともっとマニアックな話題が多々。

 

今回の学会で一番驚いたのは、『MRIによる緑内障患者の脳構造と機能』という題目の放射線科医からの発表。

眼科医は、眼科機器の進歩には敏感ですが、MRIの進歩までは…。

MRIの進歩も相当なもの。

緑内障は、視神経の変性ですが、視神経で起こっている変化は、脳に行く途中や脳内でも変化を起こしているようなのです。

実際、緑内障早期患者の脳では、局所的な脳の一部の機能低下や体積の減少が起こっていることが報告されました。

特に、中心視野の欠損症例に起こり易いそうです。

 

緑内障早期の変化を、脳構造の変化としてとらえることが出来る日が来るかも。

そうなると緑内障は眼科だけの病気でなく、脳関連の病気となる日が来るかも!?

 

緑内障疫学調査『多治見スタディ』では緑内障有病率は約5%でした。

その後の2017~2018の『久山町スタディ』では有病率は7.6%とアップ。

緑内障もありふれた病気になってきています。

だからこそ早期発見・早期治療が重要。

院長が眼科医になった時よりは、視野検査も画像検査も格段に改良・発展。

それらを駆使しても眼科医自身のスキルアップは必須です(ずっと勉強しないといけない)。

 

基本から最前線の事項まで。

専門過ぎて、ついていくのに必死な講演もありましたが、いつもより脳は活性化した自覚。

そのせいか、リフレッシュコーナーで供された赤福餅がとても美味しい。

物心ついた頃からある赤福(1771年創業)。

変わらない味のようで、実は時代に合わせて変化しているのか?

その疑問に、原料製法変化なしとの回答。

改良・進歩して良くなっていくもの、変化しないのが良いもの。

世の中、一通りではありません。

 

 

 

 

 

 

 

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2023.4.18 毎晩飲んでるの

午後のホテルのラウンジにて。

頼んだケーキが来てほっと一息。

『最近目が…』

このワードが聞こえて院長の耳はダンボに。

その元は、と見ると…距離が離れた隣席から。

 

『最近目が見にくくなったわ、よく見えてたのに』

『私も。

それで白内障手術したんよ。

よく見えとったけど、何やら痛うなってこの前眼科に行ったら花粉症と言われたわ。

何や目薬ぎょうさんもらってさしとるわ』

『そんなになるなら、手術せんでもいいね~』

はんなり京都弁のご婦人2人。

ここは京都。

 

Aさん(仮)は白内障で視力低下。

恐らく、近視はなかったよう(もしくは遠視)。

Bさん(仮)は白内障手術をした。

よう見えていたけど…に続くのは視力に関することだと思うけれど、痛みを感じた。

痛みはかゆみと同義語(特に子供)なので、痛いのはアレルギー症状の痒いに類似した表現だったかも。

ぎょうさんもらった、ということはアレルギー点眼意外にステロイド?ドライアイ?眼精疲労?の点眼か?

手術せんでもいいね~は短絡過ぎです。

全員がBさんになるわけでなく、個人差あり。

と、脳内で眼科医解説。

念力がないので、AさんBさんには届きません。

 

A『うちな、毎晩飲んでんねん。もう10年も20年も生きへんから我慢することないわ~って』

えっ!?ビール?ワイン?さすが、ホテルでお茶するご婦人たち!

ということは80歳超?

B『そや、私なんて4種類も飲んでるで。飲まんと寝られんの』

多くない?ビールから始まって4種類?日本酒4銘柄?ワイン4銘柄?

A『あんた、そんなに飲んでるの?私は2錠と言われてるけど1錠毎日やわ』

B『私は、精神科でも内科でももらってるの』

何?睡眠薬の事!?

A『まあ、寝られへんの我慢するより、飲んだ方がいいもんな~』

そっちの話でした。

 

それから夫の介護の話に移ります。

Aさん夫は介護施設に入院。

毎週手料理を持っていくそうです。

良い牛肉を炒めたり煮て、付け合わせにマッシュポテトや青野菜。

A『夫は耳が遠くて聞こえへんけど、いやや~と思わず、会えると思っていくんよ』

B『えらいわ~』

A『いい人やったから。まだ死んどらへんけどな。できるだけやれることはね~』

 

Bさん夫も入院中。

医師だったようです(患者さんのためによう尽くされはったね~のAさんの言葉より)。

A『私も最初は一人で寂しかったけど最近は慣れたわ。時々淋しくなるけどな』

B『私も慣れんとな。今夜は、息子が来てくれる』

Bさん夫入院は最近のよう。

 

A『人によって幸せは違う。

ひとのこと羨ましがってもきりがないなぁ。

いろんな人に左右されんよう生きたいと思ってんねん。

もう遅いけど』

B『そんなことないわ~』

 

帰り際

B『あんた明るいわ~』

A『アホやで~。あんたも明るいわ』

B『うちに帰ったら暗いわ』

B『楽しかったわ~もっと早くに会えばよかった』

A『また会お。夏過ぎたら』

B『それまで頑張るわ。ほんま、ありがと』

A『こちらこそ、ありがと』

 

とっさに取り出したメモに書きなぐった文字。

巷の人生訓。

所用と同じくらいの収穫でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2023.4.11 2023日本眼科学会総会

春は日本眼科学会総会(日眼)の季節。

昨年は、恐る恐る現地に出向いたのですが、今年は解禁!?

やはり会期中1日でも現地に足を運びたい院長です。

今回も現地聴講・ライブ視聴・オンデマンドと3体制。

院長は平日ライブで視聴し、週末東京へ。

 

土曜日は新幹線移動中にスマホでライブ視聴。

ライブ講演時間に合わせて新幹線を選びました。

途中、恒例の?アイスクリームを注文時、イヤホンを落としエライ(大変な)ことに。

 

まんべんなく聞くのは後日オンデマンドで。

 

『近視』は最近とてもホットな話題です。

当院でもオルソケラトロジーを開始したので、特に気にして学術的な情報を集めるようにしています。

眼軸長(眼の奥行)の伸長が近視進行の要因です。

眼軸長が伸び、近視が進行すると、緑内障を始め様々な目の病気の罹患率が上がります。

中高年以降に目の病気になりやすいということです。

緑内障は慢性的かつ進行性なので、今の緑内障治療をもっても回復・改善はしません(院長も緑内障を専門としていますので、悩みどころです)。

近視進行させないためには、眼軸長を伸ばさなければいいのだ!

というのが、今の近視予防の主流的な考え方です。

 

オルソケラトロジー

低濃度アトロピン点眼

二重焦点レンズ

以上が最近効果があると報告されている方法です。

 

オルソケラトロジーを施行した眼とそうでない眼では、明らかに眼軸長の伸びに差が出ています。

目はとても小さな臓器なので、1mm伸びると約3D(ジオプター)近視が進行したことになります。

発表では、弱度近視から始める方が、効果が大きいとのこと。

 

低濃度アトロピンも、近視になる以前の0度数やわずかな遠視の状態から開始すると、近視の発症を抑制したという報告がありました。

 

いずれも保険外診療ですが、試してみては、と思います。

そして、息子たちも院長似の強度近視にさせてしまったことを母としては少々悔やみます。

もっとも当時は、眼軸長と近視の相関関係がはっきり解明されていませんでしたが。

もう成人しているので、スマホやタブレットの視聴時間や距離を言っても聞く耳を持ちません。

せめて、毎年、母(院長)の定期検査を受けて~

 

その他、最大限聴いて終了。

 

今回のお楽しみはM先生とのランチです。

ある分野ではとてもエライ(偉い)先生。

お姉さんのような素敵な先生です。

3年前の学会で一緒のホテルに泊まる予定でした。

予約の件でラインしたら『HP読んだ?新型コロナで現地開催なしになったって』

 

3年分の話が弾みます。

3年間色々あった過去から現在、そして今後の展望まで。

『オルソケラトロジー始めたんです』

『うちは、もうとっくに始めてるよ』

あれま!?毎度、眼科の知識・情報をもらいます。

 

食後『江戸城付き合って~』

皇居ってこと!?

おもむろに取り出したのは、日本100名城スタンプ帳。

かなりの数のスタンプが。

『そうなのよ、はまってるの』

皇居=皇居ラン(以前マラソンにはまっていた時は上京したら走っていた)のイメージの院長。

ゆっくり歩くのも良い気分です。

城石を見て『切込接やわ~』とはしゃぐM先生。

城石の解説をしてもらいます。

スタンプを押して、江戸城制覇!?

 

犬山城と名古屋城は既に印が。

岡崎城・長篠城・岐阜城・岩村城・松阪城はまだとのこと(←100名城と知らない無知な院長)。

学会以外にも会える機会が増えそうです。

 

今回も、現地参加だからこそのお楽しみありの学会でした。

 

 

 

 

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 眼に関すること

2023.3.30 みんなが、周りが

『ICL(アイシーエル)ってどうなんですか?』

長年当院でHCL(ハードコンタクトレンズ)を処方している30代後半の患者さん。

HCL処方だけでなく、角膜炎や何やらで時々治療もしています。

『ICL考えているのですか?』

『ん~、周りがどんどんICLやり始めたので、私もやったほうがいいかな?って』

 

ICLとは…

ICLは有水晶体眼内レンズの略です。

 

一般の白内障手術は、濁った水晶体を除いて代わりに眼内レンズを挿入します。

ICLは、水晶体はそのままに(有水晶体)、自分の水晶体の前に(虹彩と水晶体の間)に眼内レンズを埋め込みます。

白内障手術後では、どのくらい見えるようにするか・したいかにより、眼内レンズのパワーを決定します。

一般的には、高齢になると近くのもの(新聞とか、食卓のものとか)がはっきり見えたほうが便利なので、近視に設定することが多いです。

 

一方、ICLは裸眼視力アップを目的とするので、裸眼で遠くがはっきり見えるように眼内レンズの度数を決定します。

白内障手術と類似の方法です。

レーシックと違い、角膜を削らない分、見え方の質が良いと言われています。

また、強度近視にも適応があります。

万一、何か起こっても眼内レンズを取り出せますが、内眼手術(眼の中の手術)であることは、それほど手軽ではないということです。

 

かたやレーシックとは…

角膜にエキシマレーザーを照射して角膜のカーブを変えることで、近視を減らし視力を回復させる手術です。

角膜をレーザーで削るので、強度近視(たくさん削らないといけない)や角膜の薄い人には不適です。

手術時間もリカバリー時間も短く、20年くらい前には大ブームになりました。

経時的に近視の戻りが出たり(視力低下)、グレアやハロー(かすみやぼやけ)、ドライアイが生じてきた患者さんも多く見ています。

角膜が薄い分、眼圧が見かけ上低く出るのも、眼科医としては留意しないといけません。

 

どちらの方法も近年では、老眼対応もあり、どんどん進化してきています。

 

『今コンタクトで困っていますか?』

『う~ん、すごく困ってはいないんですけど、みんながどんどんICLを受けてるから…

裸眼ですっきり見えたらいいな~っと思って』

院長も強度近視なので、その気持ちよくわかります。

特に、若い時は何度そう思ったか。

 

中等度以上の近視だと、生涯近くのものは裸眼で見ることが可能です(距離は様々です)。

50代(院長)だと、日常は弱めの眼鏡(診察用)を使用しています。

運転や学会などでしっかり見たいときは、遠方重視の眼鏡やコンタクトレンズを使用します。

いつも遠くはっきり見える生活では、中年以降は眼精疲労が起こり易くなるからです。

 

以上の話をざーっとした後…

『そういえば、眼科の先生って(近視矯正手術受けず)眼鏡が多いですよね~』

確かに。

院長、近視矯正についてはニュートラルな立場です。

 

ほとんどの眼科医が近視矯正手術を受けないのは、リスクとベネフィットを天秤に掛けた結果。

物事は、どんなことでもそう。

『よく考えて、自分にとって最良の選択を自分自身で決定してくださいね』で〆。

 

みんなが○○、周りが○○…言わなくなって久しいオバサン(院長)です。

 

 

 

 

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2023.3.14   今日にかぎって~

気分転換にデパ地下巡りをするのが好きな院長です。

デパ地下と言えども、街に行くには違い無し(緑区も名古屋市ですが)。

気合が入ります。

THE お出かけ、です。

 

さて、職業柄指輪をする習慣がありません。

微生物学の授業や、オペ室での手洗い指導で、いかに指輪(と指の間)に雑菌が多いかを繰り返し叩き込まれた医学生は、仕事中は決して指輪をしません。

結婚指輪でさえ。

指輪の習慣がないので、せっかくのお出かけでも指輪無しで行くことがほとんど。

若い時は、人並みに、指輪を買うのももらうのも嬉しかったし、もちろん婚約指輪と結婚指輪は特別です。

しかし、結婚生活30年弱でそれらは何回日の目を見たのやら…

ということで、最近になって物は使ってこそ!(先を考えるとジュエリーに申し訳ない)と思うようになりました。

 

ある日のデパ地下巡りに。

少し前に買ったワンピースにイヤリングとネックレス、指輪も。

ふだん選ばない指輪を今日は選んでみました。

誰かと会うわけではないのですが、街に行く気合です。

 

その日のデパ地下の催しコーナーは大人気のお菓子。

通常並ぶことは極力避けるタイプですが、長蛇の列の最後尾に並びます。

始めは商品さえ見ることが出来ないのですが、少しずつですが前進。

ショーケースが見え始め、具体的に何を買うかを決定。

あと4~5人先が自分の番です。

何気なく指輪の石を触りながら、じっと待ちます。

少し前に進んだ時、左手の薬指を見ると、空洞の指輪が!

一体何が!?

ついさっきまでは、緑のオパールが埋め込んでありました。

この指輪は、新婚旅行先のオーストラリアで家人が買ってくれたもの。

誕生石の可愛いファッションリングでした。

すぐ下の床を見てみるも、それらしきものは見つからず。

その場でしゃがんで探してみる…

とか

『すみませーん!指輪落としたので、ちょっと動かないでください!』(昔、ハードコンタクトレンズを落とした人は、このように叫んでいました)

とかは、もうオバサン(院長)勇気がありません。

上の空で品物を買った後も、しばらく下ばかり注視。

おむすびころりんみたいにどこへ行ったの?

おい、お~い。

 

終了後の清掃できっと見つかるはず、と信じて、デパートの遺失物係へ。

今も連絡がないということは、もう拾われたか捨てられたかは不明です。

小さいので、ごみの中で見分けがつかなかったのでしょうか?

 

多くのものの中からひとつを見つけるのが困難なことは、大人でもあります。

 

子どもの場合には顕著で、視力検査時の『読み分け困難』と言います。

通常、視力検査は、視力表を用い『どちらの方向に開いていますか?』と、どんどん尋ねていき視力を決定します。

しかし、視力が未発達な子供は、多くのものの中から一つのもの(指標)を選び出すことが困難なので、通常の視力検査がうまく出来ません。

そのため、ひとつだけCの指標(ランドルト環指標)を見せていくと、すらすらと答えてくれます。

 

オパールの石を落とした瞬間から

『どうしてなの~今日にかぎって~♫』(DESTINY 松任谷由実)のフレーズがリフレイン。

 

思い出の中には存在する!(と、前向きに)

空洞の指輪の先に未来を見ましょう(と、前向きに)

それでもまだまだ『どうしてなの~今日にかぎって~♪』と流れています。

 

*来週21日(祝)はお休みします

 

 

 

 

 

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