2020.9.7 茶目のケガ

指先を紙でスーッと切ってしまったとき。

わずかに、『痛っ!』

すぐに、血も止まり、痛みも忘れ、それでも指先の一直線の傷が治るまで何度も見てしまう小心者(院長)。

角膜に同じことが起こったら、激痛!です。

 

日々、目の痛い患者さんが来院されます。

『目』が痛い原因も、部位も様々ですが、角膜(茶目)に病変を起こし場合が『痛い』原因、第1位です。

 

その中でも、急に痛みが起こるのは、外傷(ケガ)です。

 

学校医の関係上、授業中に来院する子供に多いのは

『紙の端が目に当たった』

『友達の指が、目に入った』

『定規が当たった』

『砂が入った』

ボールや肘や足も多い(この場合、奥も検査)。

 

大人では

『子供の指が入った』

『てんぷら油がはねて入った』

『木の枝が目に入った』

『猫の爪が入った』

『漂白剤が入った』

『研磨中に鉄粉が入った』など。

 

角膜(茶目)は厚さ約0.5ミリの透明な組織です。

虹彩(こうさい)の前面にあるので、一般には茶目で通しますが、茶色いのは虹彩です。

角膜は表面から5層構造をしており、『角膜上皮』『ボーマン膜』『角膜実質』『デスメ膜』『角膜内皮』からなっています。

角膜上皮には、たくさんの知覚神経が走っており、網目状の集まり(神経叢・しんけいそう)を作っています。

角膜にある知覚神経終末(末梢神経の先っぽ)は、皮膚の約300倍密集しているので、少しの刺激でも痛みをすごく感じるのです。

元々、眼球自体が他の臓器に比べてすごく小さいのに、その傷と言ったら…顕微鏡でしか確認できない程度のことがほとんどですが。

 

 

紙の縁に相当する一直線の傷。

爪の先の形にえぐれたと思われる丸い傷。

こすったせいで起こしたひっかき傷の固まり、などなど。

 

痛みがあっても、範囲が広くても、角膜上皮だけであれば、割と早く、点眼できれいに治ります。

きちんと治癒するまで、決められた用法を守ることが重要です。

鉄粉の場合は、刺さっている鉄粉を取り除きます。

数日経っていると錆も出ているので削り取ります。

 

外傷(ケガ)以外にも、感染性(細菌・真菌(カビ)・ウイルス)、コンタクトレンズによるものもあります。

長期のコンタクトレンズユーザーは、角膜知覚が低下しています。

(初めて、コンタクトレンズを入れる患者さんは違和感・異物感を感じます(特にハードレンズ)。角膜知覚神経叢が正常なら当たり前のことです)

診察時、角膜に傷があっても、少々の場合は、痛みや違和感を感じません。

だからこそ、定期検査で眼科医のチェックを受けてほしいのです。

 

角膜だけにとどまっているケガは、当院で対応しますが、それより奥は、手術のできる施設へ紹介します。

印象的だったのは、釘が刺さったと、来院された患者さん。

速いスピードで刺さったため、眼球形状は保たれていました(視力も出ていた)。

しかし、角膜より奥(水晶体)にも刺さっていたため、紹介。

無事、手術で回復されました。

 

小学校5年生の時に読んだ『春琴抄』(谷崎潤一郎)。

盲目のお琴に仕える丁稚の佐助。

お琴が賊から熱湯を浴びせられ、その顔を佐助に見られたくないと言ったので、お琴を愛する佐助は、両目を針で突き、失明します。

『わて、針で目を突きました』

想像するだけで、ぞっとし、怖くて怖くて仕方がありませんでした。

(今だと、眼科的考察を述べられますが)

 

今では、どんな眼外傷にも動じず、眼科医一筋の院長です。

カテゴリー:眼に関すること

2020.8.25 休校と子供

学会も勉強会もWEB。

出かけることは格段に少なくなった分、眼科以外の講演も気軽にWEBで視聴できます。

緑区医師会の病診連携勉強会もその一つ。

今回は、小児科のお話。

 

コロナの休校措置化で子供(小・中・高校生1417人対象)の生活で一番変わったのは、就寝・起床が遅くなったこと。

ついで、友達と会えなくなった。

外遊びができなくなった。

結果、家ですることが増えた時間は、睡眠(寝る)とゲーム。

 

当然生活リズムが乱れます。

睡眠が増えたというものの、睡眠・覚醒リズムの乱れが生じます。

そして学校が始まっても…

朝、起きられないし、起きれば(起こされると)機嫌が悪い。

朝食が食べられない(食欲なし)。

昼間の居眠り。

ドカ食いで肥満、もしくは不規則な食事で痩せてしまう。

ということが起こっています。

睡眠・覚醒リズムは『光刺激』(太陽の光を浴びる)や『行動刺激』(食事・運動・学校)で調節されています。

学校に行く生活って、子供にとって重要です。

 

パソコン・スマホ・タブレットなどから発せられるブルーライトが、睡眠・覚醒リズムを乱れさせるとして、以前から眼科でも話題になっています。

また、休校下で、スマホやゲームなど近距離で物を見ることが増えたため、近視の増悪も見られています。

 

休校下の生活は、多くの子供たちにとっては、あまり健全ではなかったかも!?

 

加えて、小児科で問題になっているのは、肥満による子供の生活習慣病です。

肥満度(%)は (実測体重(㎏)-標準体重(㎏)) /標準体重(㎏)×100

肥満度20%以上で体脂肪の増加があり、診断基準を満たした場合は、小児肥満症として加療の対象となります。

また、小児でもメタボリック症候群があり、腹囲は小学生で75センチ、中学生で80センチを超えると該当します。

その他、血液検査や血圧が判定項目に入ります。

 

染色体異常や内分泌異常・遺伝など防ぎようのない原因もありますが、生活習慣と食事習慣はとても大切です。

外遊びを1時間以上するかどうか、テレビを2時間以上見るかどうかで、肥満の増減に影響があるそうです。

 

1週間に20時間の外遊びは、近視の抑制効果があることは報告されていますが、外遊びは、目にとっても肥満にとっても推奨されることです。

 

肥満児の健康被害として、

血液検査が正常でも動脈硬化は始まっていること。

また、2型(ふつうは成人してからが多い糖尿病タイプ)糖尿病にも小児時から、なりやすくなります。

肥満児の気管支喘息は難治性ともいわれています。

 

さらに、肥満児は、運動能力も学力も低い傾向があるとのことです。

運動能力は何となく想像がつきますが、学力まで…(ごろごろすることが好きなので、何かに取り組む意欲が減退しているようです)。

 

子供の逆まつげは時々ありますが、多くは、年齢が上がり、顔がシュッとしてくると治ってきます。

しかし、肥満のお子さんだと、瞼や頬の肉付きがよくて、一向に改善しません。

 

地域の眼科である当クリニックでは、多くの小児の患者さんを診ます。

今週は、夏休み最終週。

『あ~夏休み終わってほしくない!』例年の子供たちの声。

今年は、短い夏休みに名残惜しそうな声を聞きませんでした。

 

6月1日から7月31日までに感染が報告された242名のうち、家庭内感染が57%、学校内感染は5%でした。

正しく感染対策をして、『学校生活』が再開・確立されることを願います。

 

こちらもご覧ください。

2020.5.26 ステイホームで見すぎちゃう

2019.7.2 スマホ内斜視

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2020.7.28 世界が窮屈って?

「朝、目覚めると、世界が窮屈になっていた。」

 

休日の朝、スマホで朗読小説。

出だしのフレーズです。

え?どういうこと?

BGMくらいのつもりで聴き始めたのに、急に頭がしゃきっとしてしまった院長です。

 

 

主人公の女性は、朝目覚めて、部屋を見渡すと、「テレビ画面がやけに小さい」

「テレビを含む視界全体がぎゅっと圧縮されてしまったような感じだ」

何の病気?

小説のストーリーもですが、主人公の病気の描写が気になり、朗読の声を聞き逃さないように集中します。

 

 

「階段を降りようとした。その瞬間。がくっと音がして、あっというまに踊り場まで背中でずり落ちてしまった」

下方視野が相当欠損しているのね。

 

主人公は、NYのメトロポリタン美術館の学芸員です。

「なんだろう。朝からもう何度も壁にぶつかりそうになっている。階段を踏み外したり、壁にぶつかりそうになったり」

階段踏み外しは、下方視野欠損(しかも両眼、重度の)だけど、壁にぶつかるというのは、急激な両眼の視力低下も起こったのだろうか?

 

「自分の周囲のものが、いっせいにじぶんにむかって縮こまってくるような」

これは、求心性視野狭窄(わずか中心だけが見えている)のこと?

 

「視野が欠けている、っていうか。ちゃんと見えていない感じで」

「今朝起きたときから、なんだかおかしくて」

急性発症と考えていいよね。

 

急性発症・視野狭窄(特に下方視野欠損と求心性視野狭窄)

何?朝のくつろぎの時間のはずが、眼科医モードに切り替わっています。

 

診断名は「glaucoma」(グラウコーマ)

 

えー!?グラ(眼科医は略して呼びます)だったの?

緑内障のことです。

約30年眼科医として、特に緑内障には力を入れて診療していますが、小説のような症状が一度に急に出ることはありません。

世界(視野)が窮屈になったという表現も初耳。

 

現代では、緑内障は早期に発見(人間ドッグや他のことで眼科受診の際)されることが多くなり、多くは初期の段階です。

慢性で徐々に進行していく病気ですが、主人公のようにある日まで自覚症状がなく、末期になるまで受診しないことは、まずあり得ません。

初期はもちろん、それ以降のステージでも点眼治療をすれば、進行を抑えることはできます。

点眼治療がうまくいかない場合は、手術をすることもありますが、術式も色々開発され、その成績もかなり良くなっています。

 

 

「ほとんど手がつけられないほど進行してしまっていること。進行を遅らせるための緊急手術を受け、うまくいけばしばらくはしのげる。けれど、完治することはない。いずれにしても、近い将来、視力を失うだろう」と、主人公は眼科医から告げられます。

これも、小説ならではの、眼科医の説明だろうと思います。

 

主人公は、眼科で知り合った弱視の少女を抱き上げて、「ギャラリーの中央へ歩んでいった」

これほど、末期で、階段も転げるような主人公が、子供を抱っこして歩けるのか?

今までの主人公の病状からは考えにくい行動です。

 

揚げ足を取るわけではないけれども、眼科医からすると、「緑内障」に関しては少々残念な描写でした。

 

 

でも、ひとつ新しい絵に出会えました。

『盲人の食事』

ピカソの青の時代。

1903年、22歳の作品です。

目の不自由な一人の男の横顔。

右手で水差しを探り当てた様子。

「どんな障害があろうと、かすかな光を求めて生きようとする、人間の力」

 

その日のうちに、本で購入し読み直しました。

群青 原田マハ

「」は小説より抜粋です。

 

 

 

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2020.7.14 薬飲んでいいの?

時々、患者さんや薬局から尋ねられます。

『緑内障でも、このお薬飲んで大丈夫ですか?』

 

『緑内障』は、眼圧により目の神経が圧迫され、視神経の束が薄くなったり細くなったりして、視野の狭窄や欠損が起こる病気です。

多治見市で実施された調査では、40歳以上の17人に1人が『緑内障』に罹患している結果となりました(2012)。

年数が経ち、ますます高齢化しているので、罹患者数はさらに増加しています。

『緑内障』は早期発見が大切で、しかも、強度近視や家族歴ありなどではリスクが高まるため、40歳以上では、眼科の検診をお勧めしています。

 

さて、他科の薬には、かなり多岐にわたり『緑内障禁忌(使用してはいけない)』の注意書きを見ます。

精神科系の薬

抗てんかん薬

抗パーキンソン薬

循環器系の薬

排尿障害治療の薬

風邪薬、咳止め、かゆみ止め、酔い止めなど市販の薬にも表記されています。

『緑内障』と診断もしくは疑いと聞くと、心配になって当然です。

 

緑内障禁忌とされている薬は、散瞳(黒目が大きくなる)を引き起こします。

散瞳により『隅角・ぐうかく』がより狭まり、眼圧の急上昇が起こるタイプは『緑内障発作』を起こします。

眼圧が高い状態が続くと、視神経が一気に弱り、急激な緑内障の進行となります。

内服薬だけでなく、注意が必要な点眼薬もあります。

 

どのタイプの『緑内障』で禁忌なのか?

鍵は、『隅角』が広いか狭いか。

目の中の水(房水・ぼうすい)は、毛様体という目の中間部で作られ、虹彩(茶目)の前面の端っこから排出されます。

前面の端っこのところは、角度がついており(『隅角』)、この角度が広いか狭いかでタイプ分けされます。

広ければ『開放隅角』

狭ければ『閉塞隅角』もしくは『狭隅角』

無治療の『閉塞隅角』『狭隅角』だと、緑内障禁忌の薬は使用出来ません。

 

眼科では、通常の診療でも、必ず『前房・ぜんぼう』(房水がたまっているお部屋)の深さを見ます。

狭そうであれば、隅角のチェックもします。

閉塞隅角や狭隅角の場合は、緑内障発作予防にレーザーをしたり、中高年以降では白内障手術をします。

そうすれば、緑内障禁忌の薬からも解放されます。

 

ひとくくりに『緑内障』といっても、大きく『開放隅角緑内障』と『閉塞隅角緑内障』に分かれます。

さらに、『開放隅角緑内障』には、日本人に一番多い『正常眼圧緑内障』が含まれます。

『緑内障』診断において『隅角検査』は非常に大切で、診断・治療開始において、必ず実施しています。

眼科にかかって、緑内障禁忌の薬についての説明を受けてなければ、恐らく大丈夫だと思います(個々に対応してください)。

元々視力の良い、遠視の高齢女性は、狭隅角・閉塞隅角のことがよくあります(眼科に縁がないので見つかりにくい)。

 

『前立腺肥大で、この薬飲んでもいいかね~?』

『いいですよ』

『うつ病で出されたこの薬、大丈夫ですか?』

『大丈夫ですよ』

一人、一人患者さんを診て答えます。

心配なことは、何でもお尋ねください。

 

半年前に緑内障(正常眼圧緑内障)診断し、点眼治療中の40代男性Aさん。

すごく体が大きくて、がっちりした体格です。

診療終了後『一つ、質問していいですか?』

『はい、どうぞ』

『緑内障ですが、これ飲んでもいいですか?』

見せられたのは、市販の酔い止め薬。

『全然問題ないですよ』と、開放隅角であることを再度説明。

『よかった~。これで、安心して長距離バス乗れます。小さい時から、これないとダメなんで…』

Aさんがくまのプーさんのように可愛らしく見えました。

カテゴリー:眼に関すること

2020.7.7 そろそろサングラス

梅雨前線が活発化していますが、梅雨が明ければ夏本番。

 

『サングラスかけたほうがいいですか?』

よく聞かれます。

『かけた方がいいですよ』

 

運転時に適したサングラスとしては、通常の(レンズに着色)サングラスと、偏光(レンズに反射光をカットする膜やコーティングあり)レンズがあります。

日本産業企画(JIS)では、視感透過率(=可視光線透過率)8%以下の色の濃いサングラスでの運転禁止、薄暮や夜間は75%未満のレンズ使用での運転禁止を定めています。

 

車のフロントガラスは、今や、UVカットガラスが標準とはいえ、まぶしくなると、目を細めてしまいます。

この目の細目具合が、ストレスの程度と相関するという報告もあります。

まぶしい→目を細め光量調節→目が疲れる→ストレス。

偏光レンズは、車内や対向車、路面などからくる様々な反射光をカットするので、視認性が高まりお勧めです。

ただし、カーナビや携帯電話の画面を見るときは、見えにくいこともあります(偏光膜の軸の重なり)。

 

目の病気でまぶしさ(羞明)を訴えられる方には、サングラスではなく遮光眼鏡を処方します。

目の病気・程度によって、まぶしさの軽減度や見やすくなる色が違うので、何色かを試し処方します。

黄色・黄緑・赤・赤茶系がよく選ばれます。

一般のサングラスも色が豊富になり、以前より、目の病気がある人が特別な色の眼鏡をはめているといった偏見がなくなったのは、良いことだと思います。

 

メガネ店でチェックすべきポイントは、『可視光線透過率(=視感透過率)』と『紫外線透過率』

通常のサングラスか、偏光レンズか。

運転だけでなく、スポーツ時にも活躍するサングラス。

スポーツ種別によっても、特性があります。

尋ねた時に、きちんと説明してくれるお店を選びましょう。

 

昨年購入した偏光サングラスは、主にゴルフ用。

かけて見ると、芝がやや赤っぽく落ち着いたように見えます。

目の保護はしてくれますが、スコアの保護はしてくれません…

『グリーンの芝目をしっかり見てから打たないと!パットも1打!サングラスより技術とセンス!』迷キャディー(息子)の厳しい一言。

 

また、サングラスよりはまぶしさに対しての効果は少ないですが、『調光レンズ』もあります。

調光レンズは屋内では無色、屋外に出ると紫外線の量に応じて色が変わります。

屋内外を一つの眼鏡で過ごすには便利です。

ただし、着色(紫外線増加)より退色(紫外線減少)にかかる時間が長いことは注意すべきポイントです。

 

中年になって(←院長です)自覚したのは、加齢に伴い、視認性が低下するということ。

運転時は、濃いレンズでまぶしさを軽減できても、視力低下も起こすので注意が必要です。

スポーツなどは、まぶしさ軽減重視でいいと思います(ゴルフボールがどこへ飛んでいくかは、誰かが見てくれているし)。

 

今年は控えめな夏になりそうですが、太陽光は容赦なし。

目もいたわりましょう。

 

※こちらもぜひ、ご覧ください

2018.7.3 サングラスどう?

 

 

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2020.6.16 学校健診始まる

学校保健安全法では、例年6月30日までに健康診断を実施することになっています。

しかし、今年は特別。

新型コロナ特例で、年度内の実施でよいことになりました。

院長が担当する小中学校は、6~7月に実施することに。

 

さて、今年初の健診。

習慣になっている検温をして、平熱(院長は大体35.5~36度)であることを確認。

(診療日には、スタッフ全員検温・記録をしています)

マスクをして学校へ向かいます。

保健室では、さらに、フェイスシールドを。

ビニール手袋をはめ、一人健診するごとに、アルコール消毒です。

 

レイアウトも例年と違います。

まず、健診する位置(机と椅子)が、廊下寄りになりました。

医師の前に健診を受ける生徒の立ち位置をマーク。

2メートル程離れた位置に、足形のマークがあり、次の生徒はそこに立ちます。

そこから2メートルほど離れると、保健室の入り口になり、3番目の生徒はそこで待つことになります。

健診が終わると一方通行で、もう一つの出口から出ます。

低学年でもわかりやすいよう工夫されていました(行動経済学のナッジ効果です)。

 

1年生は眼位(目の向き)も確認するので、目の高さが同じになるように頭をまっすぐにする必要があります。

首をまっすぐにしたまま気を付けの姿勢で立たない(立てない?)生徒も多いので、頭を固定してもらうよう助手をお願いしました。

 

かくして、今までにないほど、健診の順調なこと!

列をはみ出すこともなく、団子状になることもなく、ソーシャルディスタンスを遵守。

全員がマスク着用(鼻が出ている生徒もいましたが)。

 

院長は、変哲もない医療用の不織布マスクです。

今回の健診で、800人近い生徒のマスクのバリエーションも発見。

木綿、ガーゼの素材に、刺繍やアップリケなどのお手製(と思われる)のマスク。

市販の洗える黒やピンクのマスク。

不織布ですが、子供向けにキャラクター柄。

普通の白い不織布のマスク。

昔だったら(院長子育て時代)、手作り当然の流れで、母親(院長)も四苦八苦して作らざるを得なかったかも!?

今は、作る・買う・色柄自由と、マスクであれば何でもOKと寛容になりました。

10年近く前、初夏のランニングに、サングラスと顔下半分が隠れる黒いカバー(市販品)をして走っていたら、下校中の生徒(院長校医担当校の!)に『タリバン』と言われたことをふと思い出しました。

あの頃は、黒マスクなんて考えられませんでした。

今は、何色でも驚かず。

 

手洗いやマスクの徹底。

学校では『手洗い指導』も実施されたそうです。

これは学校生活だけでなく、今後の日常生活にも、感染を予防する衛生概念を定するためには、とても良いことだと思います。

 

担当する生徒たちの元気な声に、学校再開、健診開始をうれしく思います。

 

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「お茶はあちら…」

「宿題と肥満者率」

→「ステイホームで見すぎちゃう

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2020.6.2 高齢ドライバーの運転行動

某医療雑誌に『高齢ドライバーと医療』の特集。

 

ふだん、眼科医として、高齢患者さんと接することが多いのですが、必ず『運転していますか?』と尋ねるようにしています。

裸眼視力が悪くても、矯正視力(メガネ視力)が出るなら、眼鏡の使用を勧めたり…

矯正視力も出なければ、原因を見つけ、手術で回復できそうな病気なら手術を勧め…

手術で回復できそうにない病気であれば、運転をしない方が良いと告げ…

視力は良くても、視野の狭い・見にくい部分がある患者さんには、気を付けるポイントをアドバイスし…

 

加えて、名古屋市の『もの忘れ検診』(65歳以上対象)も実施しています。

 

高齢者事故には特徴があるそうです。

 

『運転行動に必要な情報の意味を読み取り、判断決定する情報処理に時間がかかる』ので

『複雑な状況下で、迅速な行動が要求されるとき』に問題が生じます。

結果、交差点での事故・右折事故が多いことに。

 

また、加齢による目の能力低下は、身体的には一番影響する要因です。

『動体視力の低下』(例・急な変化を捉えられない)

『暗順応の低下』(例・トンネルに入ったときに目が慣れない)

『幻惑の増大』(例・対向車のヘッドライトにくらむ)

 

さらに、過去の経験に固執し、自分の技能の衰えを受け入れず、若い時のままだと信じて運転する人もいます。

 

しかし、こういうマイナス面をカバーするために…

『自分には運転適性上の欠陥がある』と自覚した(これが大事!)高齢ドライバーば、それを回避しようと『補償的運転行動』をとるそうです。

 

具体的には…

70歳以上の80%以上の運転時間帯は昼間(9時から17時)。

→昼間より低下する夜間視力、ヘッドライトの眩しさや、暗所の見落としでの事故を回避。

 

同90%以上の運転エリアは、居住市町村と隣接市町村のみ。

→近場の慣れた道路なら、危険個所も熟知しており、事故を回避。

 

1週間の走行距離は、40歳代以下の半分以下。

→走行距離が短ければ、事故に遭遇する機会を回避。

 

高齢の患者さんの運転状況を聞いても、確かに、多くの人が上記のような運転行動をしています。

 

自分の能力低下を素直に受け入れられる高齢者は、柔軟性が高く安全に自動車を運転できる可能性が高いそうです。

 

そして院長も気づくと、少しずつ『補償的運転行動』が始まっていました。

脳機能も身体機能も運転特性も特別衰えているわけではありません。

それでも20代の頃よりずっと慎重に、落ち着いて運転するようになりました。

良い意味で、自分の運転技能を客観的に見られているのだと思います。

若い時、どうしてあんなに高速道路を飛ばしたんだろう?

追い越し車線ばかり走っていたんだろう?

渋滞だからって、なんでイライラしたんだろう?などなど。

お陰で?ゴールドカードが続いています。

 

自主返納の患者さんも増えてきました。

名古屋市は、公共交通機関も整備されています。

地下鉄やバスを使ってこそ、行きやすい場所もたくさんあります(当院もバス停横です)。

運転を辞めて、新しい発見や感動が見つかるチャンスが増えるかも!?と思うのもいいですね。

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2020.5.26 ステイホームで見すぎちゃう

院長のスマホは、週の始めに、先週のスマホ総視聴時間を知らせてくれます(元々そういう設定?)。

ステイホームになってから、スマホだけでなく、タブレットやPCを見る時間の増えたこと、増えたこと。

 

さて、しばらくぶりに来院される子供の患者さん。

『家でゲームしかすることなかった』『外で遊ぶの禁止だったから』『課題より、ゲームの方に行ってしまう』『ステイホームだと見すぎちゃう』

『そうよね~家の中じゃ、ゲームくらいだもんね~。でも、前回より少し近視進んでいますね』と院長。

『やっぱりそうですか。学校休校を良いことに、一日中ゲームでした』とお母さん。

 

生まれたての赤ちゃんは、ほとんど見えません。

しかし、1歳で約0.2に、2歳で約0.4に視力が発達します。

3歳になるまでに急速に視力は発達し、3歳時健診前後では約1.0になります(月齢個人差有り)。

就学前には約1.0~1.2に発達します。

視力だけでなく、眼球運動やピント合わせも急速に発達していきます。

何気なくしている『見たいものにきちんとピントを合わせる(調節)』『見たい方向に目を動かす』『見続ける(固視)』『細かい字を追って読む(追視)』も、目の発達過程で獲得するもの。

更に『たくさんの刺激の中から自分の見たいものを選択して見る(音もそうですね)』『微妙な、物の立体感がわかる』などもそうです。

身体を動かすことで、目との協調運動も高まります。

例えば、屋外で鬼ごっこをしたら、遠くの広い範囲を確認したり、鬼との距離を確認したりと、視覚と身体全体を使います。

 

ところが、スマホ・タブレット・PCなどを操作している時は、ほとんど身体を動かしません。

画面との距離も、一般の読書距離(30センチ)より短く、20~25センチ(もっと短い距離の人も)に固定されています。

ピント合わせも常に同じ距離のままです。

眼球運動も、小さな画面の範囲のみ。

 

近視の人は、多くが遺伝的要素によります。

しかし、最近では、近視人口が世界的に急増化していて、環境の関りも大きいとされています。

姿勢が悪く、対象物との距離が30センチ未満だと、近視が進行することが報告されています。

小さいうちから近くの物だけを見る習慣になると、姿勢も悪くなり、何でも近づけて作業をするようになってしまいます。

また、長時間の近くを見続けることは、近視進行を早めることも報告されています。

最近では、太陽に含まれるバイオレット光が近視進行を抑えることがわかってきました。

1日2時間以上、屋外で遊ぶと、親が近視でも近視発症率が抑制されたという報告もあります。

散歩でも、公園でのんびり(その間、スマホなどは禁です)でも、バイオレット光は十分に浴びられます。

 

早く学校が始まって、外で思い切り遊べるといいね!

 

今年度の学校健診はコロナの影響で、例年よりも実施時期がずれます。

担当の眼科健診は、学校再開後、出来るだけ早い時期に行う予定でいますが、もし、それまでにご心配なことがあれば、ぜひご相談ください。

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2020.5.19 ひょっとこ顔に!?

ある晩、右眼が『すーすー』

角膜に傷でも付いたかな?

最近は、飛沫感染予防にコンタクトでなく眼鏡にしているけど…

角膜保護剤の点眼をしておこう(眼科医ならでは自己診断治療)。

翌日も『すーすー』が続きます。

まぁ、若い人より回復力は遅いから…

 

と、その日の夕食時、唇の内側右寄りを2回噛んでしまいました。

『加齢で口の中の肉がたるんできた?』

 

翌朝、相変わらず右目は『すーすー』

洗面所でうがいをしようと、水を含んだら唇の右側から漏れます。

食後のコーヒーも気を付けて飲まないと漏れてしまいます。

唇の裏を確認し、腫れが原因?

 

診療後、長年連れ添うスタッフから『先生、右目、腫れてません?』

マスク姿なのに、よく気が付くわね~。

ものもらいや結膜炎はありません。

細隙灯顕微鏡で写真を撮ってもらうと、角膜に横方向の細かい傷が。

 

仕事終了後、鏡の前で自分の顔をしっかり観察。

このところ、マスク姿を良いことに、目元だけの簡単メイクだったので、顔をじっくり観察することも少なくなっていました。

もしや…と思い『あ・い・う・え・お』と大きく鏡の前で声に出して言ってみます。

やはり…

顔の動きが明らかに左右違います。

右の口角が上がらないので、『う・お』は顕著に左右差が。

右目は腫れているのではなく。右眉毛が上がらない(下がっている)ので相対的に右瞼も下がり腫れぼったく見えます。

両眼をつむってみると、右眼はしっかり閉じず隙間が出来ます。

この隙間に一致しての角膜の傷でした。

いずれの症状も、顔面神経支配の顔面の筋肉が上手く動かないからです。

 

『大変!顔面神経麻痺になっちゃた!』

『どれ、どれ~』と家人。

顔面神経麻痺の患者さんを診断するときのルーティンを妻(私)にもして、『確かに、顔面神経麻痺だね~』

『耳痛くない?』発疹はなし。

『ヘルペスは出ていないみたいだね。もう一度、あいうえお、やってみて』

『あ・い・う・え・お』

『ホントに、ひょっとこ顔だね~』

同業者ならではの言葉に、納得。

『ひょっとこ』は火吹き竹で火を吹く顔が、顔面神経麻痺のようだと言われています。

 

声を聞きつけて、息子が。

『すごい!実物、初めて見たわ!もう一回やって。すげぇ、すげぇ。もう一回!』

『あ・い・う・え・お』

赤ちゃんを喜ばすように、何回もやってみせる愚母(私)。

『一生忘れんわ』と、息子。

 

顔面神経は脳から発し、側頭骨の中の顔面神経管を通り、顔面に分布しています。

多いのは顔面神経管の炎症(ヘルペス感染のほか、疲労・ストレスなど)による、『ベル麻痺』と言われるものです。

他に、骨折などの外傷・脳腫瘍や耳下腺腫瘍が原因となることもあります。

 

幸い頭蓋内は異常なし。

ヘルペスの所見もなく、ステロイドと神経賦活剤の内服となりました。

『日本酒飲みますか?』と受診先の先生。

繊細な味を舌先で味わう日本酒を嗜む場合、舌先も顔面神経支配なので、違いに気づくそうです。

『3か月で8割は治癒しますから』

常識的なことを言われても、『ということは、2割は治らない?このままだったら、どうしよう?』と、急に患者サイドでまだ起こりえないことを考えてしまします。

顔面神経麻痺でしっかり閉瞼できず、角膜障害のひどい患者さんを多く見てきました。

『どうしよう?』

 

しっかり服薬。

激しい運動を休んで、ゆっくりとした生活を。

鏡の前で『あ・い・う・え・お』リピート。

1週間単位で徐々に改善。

 

マスクのお陰で人には気付かれず、約1か月で完治。

完治したからこそですが、良い体験でした。

今も毎日『あ・い・う・え・お』確認の院長です。

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2020.5.12 WEBで学会

3月初め、4月の日本眼科学会総会は会場開催中止、WEB開催に変更となりました。

その後、5月、6月、7月の他の学会も全てWEB開催となり、現地の会場へ足を運ぶ必要はなくなりました。

参加登録費は必要ですが。

 

さて、初めてのWEB学会。

日本眼科学会総会は、秋の臨床眼科学会と並ぶ2大眼科学会です。

今回は東京で開催予定でした。

 

厚みのあるプログラムはいつものように送られてきます。

その後、開催間近になると、ログインIDとパスワードが送られてきます。

 

当初の学会開催時期より約2週間遅れで配信開始となりました。

 

パソコンの前に座り、ログインして、視聴ページに到着します。

日付、会場、演目などで検索すると、該当するプログラムが出てくるので、そこをクリックすれば視聴できます。

スライドを次へ次へとめくっていくのですが、音声付きのもあります。

演者の顔は見えません。

質疑応答もありません。

しかし、自分のペースで、スライドを進めたり、戻すこともできます。

集中力が続かなくなると、一旦休止することもできます。

また、リアル学会では、同時刻に一つの会場でしか聞くことが出来ないのですが、WEBでは同時刻の他の演目も視聴することが出来ます。

視聴期間は2週間(先日もう1週間延期決定)。

特別講演、指名講演、シンポジウム、教育セミナー、日曜日特別講演、外国人招聘講演に加え、一般演題が513題。

GWは、自宅でWEB学会→集中力低下し休憩→WEB学会。

休憩の方が長くなってしまいがちでしたが、かなりの演目を視聴することが出来ました。

 

勉強できたのは良い、見返しも可能、時間とお金の節約(休診・代診・交通費・宿泊費など)。

 

でも…いつものような高揚感がありません。

 

大きな学会は、『行くぞ!』と気合の入るイベントです。

限られた時間の中で、いかに自分にとって聴きたい題目に集中し、多くの知識を得るか。

少しだけ合間にお楽しみを入れるのもコツです(今回はホテルで朝ごはん女子会の予定でした)。

大いに勉強し、興奮し、リフレッシュし帰名。

が、いつものパターン。

 

WEB学会で通常より多くの演題を視聴出来ました。

でも、自宅で…ということからか、緊張感ゼロ。

服も普段着以下だし…(学会へは気合を入れて装います)。

誰もいないので、飲食物持ち込み自由だし…(会場では禁止です)。

臨場感ゼロ…が一番の欠点。

 

今後どっちに向かうのかしら???

 

WEB学会とは別に、先日、病診連携先の病院の勉強会がZoomを通して開催されました。

ビデオ会議システムは初の院長(私)。

病院の会議室、東京の演者の部屋、別の演者の部屋と3会場からの中継でした。

参加者は、自分の映像を付けても切ってもOK。

開始は20時過ぎだったので、院長は普段着に。

敢えて?間違えて?自分の映像を映している参加者は、視聴者に映るので『〇先生ってああいうTシャツ好みなのね』とか『〇先生の居間なのかな~』なんて思ったり。

『あくびしてる』とか、『何かお疲れモードみたい』とか表情の観察をしたり。

それでも、質疑応答も出来、リアルタイムで、会場に行かずして講演を聞けたことは有意義でした。

1時間半くらいならZoom歓迎です(院長私見)。

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