2023.3.7 残りを活かす
ロービジョンケアの講演会を聴講しました。
フロアーバレーボールチームの見学をし、(一応)チームドクターになって以来、ロービジョンへの興味は、より実体験を伴うものになりつつあります。
視覚障がいで多いのは、全く見えない(全盲)よりも、ロービジョン(弱視)の人たちです。
生まれつき全盲でも、途中で失明もしくは弱視になっても、生活するための手段や技術を取得しないと生活できません。
特に中途失明・弱視者のために、視覚リハビリテーションがあります。
名古屋市では、地下鉄駅名でもある『総合リハビリセンター』が、主に担っています。
生活するのに重要な事項は
1.移動
2.読み書き
3.家事・日常動作
4.社会行動
1.移動にしても、初めての所に行きたい・階段を利用したい・交通機関を利用したい・夜間の移動したいなど人によって様々
2.読み書きも、新聞・雑誌?WEB?通帳?テレビ?などなど。
3.家事・日常動作も、料理・掃除?化粧?薬の管理?などなど。
4.社会行動では、お金の管理?時間の把握?買い物?趣味?スポーツ?就労?などなど。
近年は、緑内障の失明率が高くなってきました(だから、早期発見・早期治療が大切!)。
また、糖尿病網膜症による失明率も高いです(だから、まず内科治療を!)。
必然的に、中高年になってからの中途失明・弱視が多くなっています。
良く見えていた頃の記憶があるので、上記4項目の色々が出来なくなってくると、非常に落ち込んでつらくなります。
しかし、残された機能でいかに生活できるようにするかが、その後の生活の質に関わってきます。
眼科医としての治療の限界はありますが、リハビリでは自分の限界を越えて生活の質を上げることを目的としています。
上記1~4が健常者と同様に…は不可としても、日常生活が普通にできるようにはなります。
歩行訓練士による歩行訓練があります。
また、PCやスマホ、拡大読書器による読み書き(入力)や、点字訓練(まず読めること、書くことは後とのこと)、日常動作の訓練もできます。
フロアーバレーボールのメンバーたちは、何処にでも自分で行くし、スマホも駆使しています。
白杖を持ちながらスマホを触って…『本当に見えないのか?』と思われる(言われる)ことも度々あると聞きます。
今や、スマホは、ロービジョンのツール(関連リンクは最下部からご覧ください)としてとても優れています。
遠くの写真を撮って画面で拡大したり、音声ツールを使用しているかもしれません。
人や障害物にぶつかる、階段で落ちそうになる、信号が見にくいなどを感じたら、白杖を考えてよい時期です。
そして、使用には、訓練が必要です(リハビリセンターなどを紹介します)。
もちろん、持っているだけでも、人に注意を喚起するのには有効です。
眼科医として、医療で終わらず福祉につなげること。
そのためには、福祉の知識ももっと必要と感じました。
『人間は不幸には敏感で、どんな些細なことでも見逃すことはない。
だが、不幸にばかりに目が行けば、生きることはいつしか苦しみに満ちていく。
日々の生活の中に、幸せはいくらでも見つかる。
それを忘れてはいけない』
某新聞で見つけた翻訳家の言葉。
心に残る言葉との出会いも小さな幸せです。
ロービジョンに関する過去の記事もぜひご覧ください