2020.12.1 女医なんですけど…

糖尿病の3大合併症は、『神経』『眼』『腎臓』の障害です。

眼科医は、糖尿病の患者さんに眼合併症が出ていないか、出たらどうするかを考えながら診療をしています。

『HbA1C(ヘモグロビンAワンC)はいくつでした?』(糖尿病のコントロールの指標になる値です)

毎回、尋ねます。

即答する人、血液検査の結果や糖尿病手帳を提示する人、『まあまあだね~』『いいんじゃない』『忘れた』『最近採血していない』など色々です。

眼の合併症では、一番は、網膜出血です。

点状の小さな出血が数個から多数に。

白い点状の斑点が数個から多数に、ベターっとしたものに。

悪い血管が生えてきて、破れて出血を繰り返したり、前方にも出血したり…

軽症の場合は、糖尿病のコントロールをしながら、経過観察です。

進行すると、レーザーで網膜を焼いたり、目の中に注射をしたり、大掛かりな手術をすることになります。

重症化すると、悪い血管が茶目にも生えてくるので、眼圧が上がって、緑内障を引き起こします。

また、白内障も進行しやすいです。

 

数年前から通院中の糖尿病のAさん(70代男性)。

院長:『HbA1Cいかがですか?』

Aさん:『○○(値)上がってしまって、薬が追加になりました』

院長:『あれま~!おやつとか結構食べてます?』

Aさん:『おやつは食べないです。ご飯も1日2食だし…』

院長:『アルコールはいかがです?』

Aさん:『まあ、それは毎晩ですね~焼酎をね。内科の先生には、やめろって言われるけど、これが楽しみで生きているからね~』

院長:『そうですか…1日のお楽しみですもんね~どのくらい飲まれますか?』

Aさん:『いつも3杯かな。水割りかお湯割りだけどね』

院長:『いつもより少し薄目に割るとか、たまに1杯減らすとか…は出来そうですかね?』

Aさん:『そうだね~…』

眼の合併症もなく、視力良好なことも確認。

 

Aさん:『ちょっと聞きたいことがあるんですけど…』

院長:『何でしょう?』

Aさんが話し始めたのは、下半身のお話。

ふむふむ。はい、はい。

Aさん:『糖尿病と関係ありますか?』

院長:『糖尿病による神経障害の影響が大だと思いますよ。加えて、加齢も。糖尿病のコントロールをしっかりして。それから泌尿器科かな…。Aさん、こういう話は内科の担当の先生に話したほうがいいですよ。眼科医より』

Aさん:『そうだけど…(病院の)担当医は女医さんなんで、こういう話は…』

院長:『(目が点!)Aさん、私も女医なんですけど…知ってました?顔、見えてますよね?』

Aさん:『…そうなんだよね~こう先生も女医さんなんだけど…違うんだわ。とりあえず、糖尿病治療頑張るわ。聞いてよかった』

Aさん、すっきりした顔で診察室を退出されました。

 

『女医なんだけど…』の後は?

オバサン(内科担当医は若き女医?)だから?

ちゃきちゃき・サバサバしているから?

医師として、かかりつけ医としての経験と信頼がそうさせたなら大変うれしいことです。

 

名前では男性に間違われますが、見た目で間違われたことはありません。

オバサン院長は、性差を超えて頼りにされる、チャーミングな医師を目指しています。

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2020.11.17  今更!?今から⁉

『アイシャドウ、変えました?』とスタッフ。

マスクをしていても、院長の顔色だけでなく、お化粧具合にもよく気が付くスタッフです。

『わかる?色は変えてないんだけどね~メイク方法を変えてみたの』

 

眼を診る仕事上、患者さんの目の周りの化粧も当然目に入ってきます。

アイシャドウの入れ方、アイラインの描き方、マスカラのつき具合、まつエクの接着具合など…

きれいなアイメイク(顕微鏡下です)を見ると、心の中で『すごい~』

 

最近では、大学生ならず、高校生でもメイクをしている子が多くなりました。

かくいう院長は、大学時代もほぼすっぴん。

学部自体が、おしゃれを極める感じでなかった気がします。

美容雑誌は読まなかったし、大学生・OL向きの雑誌のモデルも遠い都会の人だと思っていました。

医師になって、身だしなみ程度で始めた化粧です。

習うこともなく、見よう見真似の自己流。

デパートのコスメコーナーで、商品を買う時は、部分的にメイクしてもらうのですが、家で再現ならず…

勧められて買ったのに、面倒で使わなくなった(使いこなせなかった)商品も多々あります。

 

ところが、最近になって『お化粧できれいになりたい!』

 

今まで、デパートのコスメコーナーでパーツごとに買っていたけれど、うまくいかなかったのは、基本を知らないからだ!

基礎からのメイク法を学びたい!

 

何を今更?

モテたい!彼氏見つけたい!ちやほやされたい⁉

20代にメイクに目覚めていたら、そう思ったかも。

しかし、モテ期もないまま現在に至るオバサンです。

今から習ってまで、お化粧上手になる意味ある?

自分の中で、この葛藤がしばらく続いた院長です。

 

『きれいになりたい!』

自分のために。

お化粧を始めてからの期間を上回るであろう今後の年月。

今、習わないでいつやる?

ついに美に目覚めたのに!

 

今どきの人ならYouTubeでなんでも学べるのでしょうが、院長は一昔前の人間。

直接、その道のプロに学ぶに限る!の信条。

メイクレッスンを受けることにしました。

 

まずは、化粧水と乳液を付けるところから。

間隔は1分は空けるように言われ、点眼薬の5分間ルール(2種類以上の点眼をする場合は、5分以上空けて)が浮かぶ院長。

ベース・ファンデーション・おしろいなど、一つ一つの行為が新鮮。

それぞれのメイクに対して、理由があるのも納得。

いかに自己流だったかも反省。

メモ、メモ。

自分でやってみて、不明点を聞いたり、お手本を確認しながら、反復練習。

毎回、少しずつステップアップです。

眉の描き方、アイシャドウの塗り方なども『なるほど、なるほど』

『眉マスカラを塗ると抜け感が出ますので、ぜひ付けてくださいね』

抜け感…なんて、お洒落さんの言葉だと思っていた…

 

『モデルさんみたいにきれいになれますかね~?』(愚問)

『モデルさんは、顔が商品ですから、素もいいし、日頃のお手入れもすごいですよ。撮影の時は、プロがメイクしますし』

『そっか~商品ね~』(それなら私は顔でなくて、眼科医としての腕が売りだわ)

『頬紅は、こうやってブラシでふわっと。口紅は唇のここを強調して…』

やってもらうと、少し違う自分になっていくようで嬉しい。

『美魔女みたいには?』(またまた愚問)

『どんな風にもお化粧できるようになりますが、まずは、基本です。教わったベースメイクをしっかりマスターしてくださいね』

『はい…』(何事も基本から)

 

そういうわけで、マスクで誰にも顔を見せないにも関わらず、毎朝フルメイクをしている院長です。

あと30年くらい毎日やっていれば、メイク上手になれるでしょう。

 

診察室の暗室で、見えない努力をしている院長です。

カテゴリー:公センセの日常の出来事

2020.10.27  しゃがんでます?

『今日は、違うスクワットもやってみましょう』

パーソナルトレーニング継続中の院長です。

ルーティンでやっているのは、ブルガリアンスクワット。

片足で立って、もう片方の足先を後ろのベンチにかけます。

片方の足でスクワット(上体を下げ、太ももを水平まで落とす。またもとの位置に戻す。繰り返し)。

初めて指導を受けたときは、自重でも、翌日の筋肉痛は半端ないものでした。

ですが、今では、両手にかなりの重量のダンベルを持ち、スクワット。

毎回限界まで追い込まれます。

 

さて、今回の『ゴブレットスクワット』は、胸あたりでダンベルを両手ですくうように持ち、下半身を下ろしていきます。

太ももと床が平行になるまでしゃがみます。

何回もしゃがんでは立ち…15回3セット。

『そういえば、最近しゃがむことがないですね。トイレも洋式だし…学校のトイレも洋式化しているし…』しばし、雑談。

『僕たちの頃は、まだ、和式トイレだったんですけどね』とトレーナー(30代)。

『しゃがまないと、特に下肢の運動機能が落ちてしまいますね。日本の和式トイレは、知らないうちにトレーニングになっていたんですよ~』もう一度お手本を見せるトレーナー。

 

そんな折、しゃがみ込み動作が運動指導で獲得できるという整形外科学会での報告が、スポーツ医(院長です)の目に留まりました。

しゃがみ込み(和式トイレ姿勢を想像)が困難な健常成人に1か月間運動指導をすると、しゃがみ込み可能になった報告の続報のようです。

閉脚しゃがみ込みが出来なかった小中学生に、医療機関で運動指導を行なった結果、最終継続率24%、成功率50%だったそうです。

運動は、前屈や片足立ちなどから、股関節可動域訓練、タオルギャザーやスクワットなど全然難しいことではありません。

しゃがみ込み動作は、上肢外傷歴(転倒によるもの多い)と関与が大きいので、転倒リスクにも大きく関与しています。

しゃがみ込めるということは、多彩な運動機能が良好であるということです。

 

就学児健診が始まりました。

今どきの5~6歳児は、和式トイレを見たこともない子もかなりいることでしょう。

しゃがみ込みトイレの最初で最後は『アヒルのおまる』?

しゃがみ込み動作の運動指導が必要な時代に??

昭和生まれの院長は、ため息です。

昔、店先でしゃがんでいた不良?たちも、知らず知らずのうちに筋トレになっていたのね~(最近見ませんね)

 

便利な世の中になって、無意識に筋トレになっている動作・作業も少なくなりました。

意識して、豊かな老後のためには、筋トレを。

転倒予防に『貯筋』(なかなか貯まりにくい…)に励む院長です。

 

公衆トイレに和式があったら、健常者は率先して使いましょう。

ちょっぴりですが、筋トレです。

カテゴリー:公センセの日常の出来事

2020.10.13  10.8の記憶

1994年の、プロ野球優勝争いの中日対巨人。

10月8日、同率首位で迎えた最終戦。

盛り上がる中、勝ったのは巨人。

中日ファンにとっては、忘れられない試合になっているようです。

 

今年は、中日の高木守道監督の追悼試合として、中日対巨人戦が行われました。

ドームでファンへのインタビュー『あなたの10.8の記憶は何ですか?』

試合に絡んだ当時の思い出がそれぞれの人の出来事と重ねて語られていました。

 

院長にとっても、1994年の10.8は忘れることの出来ない日です。

当日、今は無き(ミヤコ地下街だけが今も名を留めています…)都ホテルで結婚式・披露宴でした。

式の準備に、部屋から夫と二人でエレベーターに乗ると、途中で乗り込んできた大柄の男性がいました。

降りて二人になってから『今の、巨人の桑田選手だったよね!?』

『そう?』(結婚式に緊張して他が見えていない院長)

『間違いない。特徴的な顔とほくろだった。今日、先発で出るのかな?』

 

院長は、憧れすべてを実現すべく、各種結婚本を読みつくし、結婚式会場を吟味し、衣装や食事・引き出物・演出など要望を実現すべく東奔西走(ネットがない時代です)。

やっとこの日が来たという緊張感で最高潮。

生まれて初めて、メイクさんにばっちりお化粧をしてもらい、着物やドレスのお色直しをし、出席者に披露。

一生に一度のスターになったのでした。

ケーキ入刀写真は、後日、結婚雑誌にも掲載され、やり切った感!?の結婚式・披露宴となりました。

(その後、どんな結婚式にも、衣装にも興味がなくなってしまった院長です。1回限りで良かった!)

 

その晩は、やたらホテルが賑わしく、お祝いムード。

ホテルは巨人の宿舎で、中日戦での勝利・優勝の興奮が渦巻いていました。

片や優勝の興奮で寝られず、片や結婚式の興奮で寝られず(院長です)…

 

追悼戦は、残念ながら1対7で中日は白星を取れなかったようです。

息子も友達と試合を見に行きました。

しかし、10.8を知らない息子たちにとっては、いつもの試合と変わらなかったことでしょう。

 

伝説の10.8と結婚記念日は同じ。

毎年、10.8の報道がされる度、あの日のエピソードが思い出されます。

同業夫婦はうまくいかない例も多々あります。

お互いの譲歩・妥協・尊敬の元、26年を迎えられたことに感謝です。

 

同年10.8は、当時画期的な緑内障点眼薬の発売記念講演会。

主賓の教授初め医局の眼科医は、白ネクタイを外して結婚式終了後、講演会に出席。

忘れられない緑内障点眼薬です。

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 公センセの日常の出来事

2020.9.29 色・明るさと交通事故

少し前まで、診療終了直後も『まだ明るいね~』と話していたのに、すっかり日が暮れるのが早くなりました。

 

眼科の患者さんは、視力低下の方や高齢者も多いので、『気を付けて帰ってくださいね~』と願いながら、診療終了です。

 

眼科専門誌の『眼科と自動車運転』の特集から…

 

運転には、様々な要素が絡み合いますが、視力(見え方)というのは、大変重要な要素です。

運転者からは、『歩行者や自転車・標識を見落とさないこと、ナビなどの情報を素早く視認できる』ことが大事です。

歩行者や自転車運転者からは、『自動車運転者から見られるようにする工夫、事故につながりそうな予測のできる視覚情報を素早く得ること』が大事です。

 

まずは、明るさです。

どんな色でも、明るい条件下では視認しやすくなります。

昼間ははっきり見えている標識も、夕方にはかなり見にくくなるのは自明です。

ただ、物理的明るさと、心理的な明るさとは単純に比例しません。

感覚の強さは刺激強度の対数に比例して増大するという法則があります。

例えば、真っ暗な部屋で、灯りをつけたら、すごく明るいという感覚がありますが、その明るさをどんどん上げても「明るくなった!」という感じはだんだん緩やかになるということです。

 

さらに、明るさの感覚は、脳で補正されてしまうこともあります。

例えば、薄暮で周りがかなり暗くなっていても、自分が暗いと感じない(思わない)ことがあります(個人差あり)。

この場合、運転者は「はっきり見えている」と思い込み、歩行者や自転車を見落とす危険が高まります。

 

交通事故は、夕方4時から6時が多く、月別では9月から12月が多くなります。

『人(自転車)は思ったより見えていないし、見られていない』

 

では、工夫できることは?

実験解析結果では、早期ライト点灯・明るい服装で注意が高まることがわかっています。

また、別の画像分析結果では、早期ライト点灯や反射材が有効でした。

目立つ服の色としては、蛍光オレンジや蛍光イエローが見やすく、白と黄色のストライプ、白と赤のストライプとなりました。

洋服の色を蛍光色にするのは、なかなか難しいですが、反射板を利用したり、夕方以降外に出る場合は、白や黄色など明るめの服を着たほうがより安全です。

 

『あと1秒早く視認できれば9割の交通事故を減らすことができる』

 

色やコントラスト(対比)以外には、焦点の合いづらさも関係しています。

度の合ったメガネやコンタクトレンズ装用での運転は、もちろん必須です。

(更新のためだけに眼鏡処方希望の人が、時に来院されます!?裸眼や度の弱い眼鏡で見えていると思い込んで運転しているのは、本人だけです!)

また、白内障やドライアイがあっても、光の散乱などが強くなります。

 

誰でも、夕方~夜間視力は低下するので、出来るだけ、夕方・夜の運転は避けることが賢明です。

眼科医としては、患者さんが交通事故に巻き込んだり巻き込まれないよう啓発・注意もしていきます。

 

高齢者・ロービジョン(低視力・狭視野)患者さんの運転も、今後の大きな課題です。

 

かくいう院長も、夜ランニング中に交通事故に遭った経験あり。

信号のない横断歩道を走って横断中、対向右折車に跳ねられました(運転は高齢者)。

額に小さなLEDライト(ちょうちんアンコウみたいな)を点けていたのに~

跳ねられたのに、『搬送先の病院に知り合いがいたら恥ずかしい…』などと、どうでもいいことを考え『大丈夫です!大丈夫です!』を繰り返した院長です。

幸い下半身の打撲で済みましたが、夜ランニングは、以後きっぱりやめました。

 

『人(自転車)は思ったより見えていないし、見られていない』

気を付けましょう。

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2020.9.15  経年劣化

自分では、カレーをもう10年ほど作っていない院長です。

フルで働く母であっても、子供達には栄養のあるものを手作りしたい!のモットーで、あれこれ毎日料理をしていたのですが…

ある日『よく、こんなに美味しくないカレー作れるね』と長男。

材料は、一通りのものですが、野菜不足にならないようにたっぷりの野菜(時には変わり種も)、早く煮えるように薄切り肉。

すごく美味しいわけではないが、まずくもない…程度。

三男には、最後まで持て余すカレーではありましたが…

 

『超忙しい中、母さん頑張っているんだからね!そんなこと言うなら〇〇(長男)が自分で作ったらどう?』

 

『僕が作ろうか』と夫。

材料を自分で調達して、圧力鍋で作ってくれました。

『美味しい~何、これ!?』

『お店のみたい』

『どうやって作ったの?』

牛ブロック肉、玉ねぎ、にんじん、マッシュルーム。

圧力鍋で30分。

調味料・隠し味は秘密!?

『父さんが作ったほうがいいわ~』子供たち絶賛。

 

以後、カレー担当の家人は、カレー作りに情熱を注いでいます。

家庭料理を超えた材料と時間のかけ方。

調理中は『話しかけないで~』と集中!

家族と話しながら、わいわい料理するのも好きな女性(院長)とは対照的。

 

ある時『圧力鍋欲しいな~』

『2個もあるよ』

『でも、取っ手が…。共用だし…』

長年愛用の圧力鍋は、院長のうっかりが重なり、度々コンロの真ん中に置くので、取っ手がガス火で溶けて変形しています(機能に問題なし)。

『自分用のがあるといいよね~買おう』(カレーのためだけに!?と思いつつ)

圧力鍋を色々探したようですが、結局、今ある鍋と同じメーカーのものを注文。

同じ圧力鍋が3個になりました。

 

ピカピカの鍋で、早速カレー作り。

『新品の鍋だから、スペシャルにする!』

お任せします。

お皿に盛りつけられたカレーを、一口食べると、いつも以上に美味しい!

 

『鼻紋付の牛なんだよ!名前も付いていた』

『…』(びっくり)

『隠し味に、ちょっといい赤ワイン入れてみた。深みが出てるでしょ』

『…』(再びびっくり)

食前、とっておきのワインがなくなっていたので、もしや息子が飲んだ?と疑っていたら、答えはここに。

原価どんだけ~?

『最高!』

でない、はずがない。

家人のカレー作りは、趣味。

試食はお披露目会。

そう認識した妻(院長)でした。

 

それでも、家人にお任せの仕事(専任)を作ってしまうと、働く妻は楽になります。

趣味の料理(カレー)以外にも、家にある材料での料理も任せると、一週間に何回かは食事作りから解放されます(一任がポイント)。

 

『新しい鍋で作ったら、水分が今までより減らなかったんだ』

『へー。なんで?』

『前の2つの鍋は、パッキンが緩んでいて、水蒸気が漏れているんだと思う』

院長は、毎日古い圧力鍋を使っていますが、加圧が数分なので、気になったことがありませんでした。

『鍋も人も、古くなると漏れるんだね』

加齢により、男性は前立腺肥大、女性は骨盤底筋の緩みで尿漏れが起こりやすくなります。

『男性も女性も尿漏れの認知度が高まってきたから、患者さんが相談しやすくなったね』

『いろいろケア用品が出てるしね』

そこからは、食事中ながら、夫婦でパッキンと尿漏れの話。

絶品カレーを食べながら、同業者だから許される『あるある』。

 

それ以来、圧力鍋の『しゅんしゅん』おもりの回る音を聞くと、『漏れ』が気になる院長です。

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 公センセの日常の出来事

2020.9.1 これが大根おろし!?

注文した品が3か月半してやっと届きました。

平たい箱を開けると…

『お~!』

銅製のおろし金が鎮座。

刃は規則正しく鋭く立っています。

ずっしりした重量感。

『その辺のおろし金じゃありませんよ!切れ者ですぜ!』という迫力。

 

我が家の大根おろしは、一般的な汎用品です。

プラスチック製で丸い穴が開いていて、その周りに小さなプラスチック製の刃が並んでいるもの。

受ける容器がセットとなり、底には滑り止めがついている優れもの。

このおろし器に出会うまでに、アルミやステンレス製のものを色々試しましたが、必ずやめる(処分する)きっかけとなったのが、指先のケガ。

貧乏性なのか、最後まですりおろそうとして『あ、痛っ!』

指先を刃に引っ掛けてしまい、そこから血が滲みます。

白い大根おろしに滲む赤…

サスペンスドラマの一場面のよう…

医師と言えども、自分の血には弱い院長。

ヘナヘナ…

この恐怖の体験を繰り返し、現在のプラスチック製に落ち着いたわけです。

 

ある日、テレビで、伝統工芸士の作るおろし金が放送されていました。

現在、東京で銅製おろし金を作る職人さんは唯一人とのこと。

鏨(たがね)から成型して、生地板を作り、一つ一つ目立てをしていき…

たかがおろし金と言うなかれ。

この道何十年とかかって一人前になれるのだそう。

『いいな~』

家人が『いいな~』と言う時は、よっぽど欲しい時です。

長年の付き合いで、『いいね~買ったら!?買おうよ!』と相槌を打つのが、うまくいくコツ。

少量の大根おろしは、自分でおろすのですが、量を必要とするときは、家人担当となっている我が家。

大根おろしを極めたくなった?

『金属製は怖いから、私は使わない。これからは、大根おろし専従でお願いします』

『オッケー』

 

価格は…

たかがおろし金、と考えればびっくり!

されど、伝統工芸士の作る一生ものと考えれば納得!

 

おろし金が届いたので、早速大根を買ってきました。

おろす方向に対して、刃が、細かく前後向かい合うように、目立てられています。

注文したおろし金は、男性に丁度良い大きさ(サイズは色々)。

下に受ける小鉢を置き、おろし開始。

シャリ、シャリ、静かな時間。

細かいみぞれのような大根おろしがどんどん出来ていきます。

『すごくスムーズ。おろし感がいいね~やってみる?』

『やらない(怖い)』

 

茹でたてのおそばに、大根おろしを添えます。

大根おろしって、こんなにふわふわ?なめらか?

そして『辛い!』

いつもと同じ部位なのに??

プラスチック製のおろし器で大根おろしを作ってみると、歴然の差。

いつものは、辛みは少ないけれど、ザラザラ感がはっきりします。

 

大根は、おろすと辛みの成分であるイソチオシアネートが出てきます。

大根の繊維がたくさん壊れるほど辛み成分は増大します。

銅製のおろし金は、細かくおろせる分、辛みが強くなるのです。

『辛い!辛い!』

 

これが本物の?大根おろしなのね~

 

郡上八幡で勤務していた時、郡上踊りのプロモーションで福井に遠征(院長、郡上踊り保存会からお免状をいただいています)。

そこで食べた越前おろしそば、大根おろしが強烈に辛かったことを思い出しました。

 

おろし金の裏面は、しょうが・山芋・にんにく用。

『大根おろしお願いしま~す』

『は~い』

『山芋お願いしま~す』

『は~い』

楽しそうにおろす家人。

高いおもちゃみたいな感じもありますが、『おろす』調理から完全に開放された妻(院長)となりました。

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 公センセの日常の出来事

2020.8.18 目にしみる夏の日

屋外なら安心と、お出かけ先はゴルフ場が多くなった院長です。

 

コロナ感染予防に、マスクにメガネ(と、ちょっぴりのお化粧)で診療していますが、ゴルフ時はコンタクトレンズにフルメイクをします。

照りつける太陽のもと、紫外線対策は万全にしないといけません。

サングラスは必須。

 

普段の化粧品の中にも、UVカット成分は入っているものの、屋外では、日焼け止めはマストです。

クリーム状のもの、スプレータイプなど形状は様々。

目に直接入らないように塗るのは当然ですが、しばらくすると目がしみてくることがあります。

 

日焼け止めの成分で目に染みる原因としては

1.紫外線吸収剤

2.アルコール成分

3.界面活性剤

が考えられます。

気になる人は、成分を確認して購入されるとよいです。

アイホールから目の際くらいはファンデーションで補ったり、サングラスでカバーするのも手です。

 

 

化粧品や日焼け止めだけでなく、汗だけでもしみることがあります。

夏になると汗が目に入り痛い、ショボショボすると訴えられる患者さんが多くなります。

 

ドライアイは原因の一つです。

夏場、エアコンなどの使用、最近は加えてパソコン・スマホの使用が多くなり、目(角膜)の表面の涙液の安定が悪くなります。

極端に言えば、目の表面が滑らかでなく、所々、涙が乗っていない部分や薄い部分が出てきます。

さらに、紫外線により、眼表面のダメージが強くなります(雪目という言葉・病気があるほどです)。

そういう部分は、知覚が敏感なので、汗(皮脂や汚れなどを含んだ)に対して『しみる』症状を起こします。

 

加えて加齢です。

若く活動的な人(特に子供)は、さらさらとした汗が多いのですが、加齢・状況とともに成分比が変わり、べたつきが多くなりPH値が変わってきます(個人差あり)。

『ショボショボする』『しみる』の訴えが、高齢者で圧倒的に多いのは、そのためだと思われます。

 

また、入っただけではなく、『こする』という動作を加えてしまっているのも原因です。

何かが目に入ると、こすりたくなるのは山々ですが、こすることで、目(角膜・結膜)に傷を作り、症状を悪化させてしまいます。

こすらず、人口涙液をさすと良いです。

 

 

コンタクトレンズをしていれば、当然、コンタクトレンズも汚れます。

日焼け止めや化粧品の多くは油分が含まれているので、通常のコンタクトレンズ洗浄剤では落ちません。

汚れたコンタクトレンズは、形状劣化や、視力不良を起こします。

ソフトレンズ(1日タイプ・2週間タイプ・1か月タイプ・通年)とハードレンズ(通年性・交換タイプあり)がありますが、夏の屋外活動では、1日タイプのソフトレンズをお勧めします。

 

お盆明けは、パンダ顔のお子さんが多くなります。

メガネ部分だけ紫外線カットされて焼けていません。

その分、メガネが目を保護しているということです。

度が軽い人は、度入りサングラスもお勧めです。

 

腕の日焼け対策として、長袖のアンダーシャツは、後半、肌が息苦しいように感じ、いつも買ってみては失敗しています(院長には合わない)。

ポロシャツ・アームカバーでプレイしたら、隙間部分に日焼けの輪が出現。

その次は、ノースリーブで日焼け止めを塗ったのに、肩後ろ部分がノースリーブ跡とわかる日焼けに。

結局、上のウエアは隠れてしまうものの、UVパーカーに落ち着きました。

筋トレ時タンクトップを着るたびに恨めしい日焼け跡となっています。

これもひと夏の経験。

トホホ…

カテゴリー:公センセの日常の出来事

2020.8.4 地下鉄線上の旅

ぶらっと一人旅も皆無のまま半年。

一人で家で過ごすのも好きですが、出かけるのも好き。

 

自転車でどこか行ってみよう!

院長の自転車は、もちろんママチャリです。

8年前買い替えるとき『どうせなら、電動自転車を買うべき!』と、自転車屋さんに強く勧められ、値段は格段に違ったものの、自転車の耐久年数を考えれば安いかも!?と購入。

使い慣れると本当に楽で、学校医の仕事や近場の買い物などに重宝しています。

用事もないけれど何処かへ行ってみる。

内田百閒の『阿呆列車』に比べれば、電動自転車で何処か行ってみる…は、ずいぶんちっぽけなことですが、人間の器の差も同様なのでまあいいとして。

 

あてもなく…は格好いいですが、バッテリー切れになっては困ります。

最悪、自力で漕げばいいのですが、大変重く労力がいります。

今回は、自分の体力は電動自転車を漕ぐのみに使います。

安全で楽しそうなのは…と思案した結果『地下鉄桜通線』上の旅です。

桜通線上の道路は広く整備されているし、馴染みのある道筋です。

バッテリーをフル充電し、メモリが10から6になった時点で引き返すことに。

 

残0になる所まで行って、地下鉄に乗せて帰りたいのは山々ですが、名古屋市地下鉄は収納袋に入れた物しか不可。

そのまま乗せられるローカル鉄道も各地にありますが、地下鉄は乗客も多いからね…残念。

 

桜通線上の道路はかつてマラソンに没頭していた頃、よく走ったコースです。

診療日の昼休みは、新瑞橋でUターン。

休みの日は、名古屋駅まで走り、某焼き肉屋のランチを食べて、地下鉄で帰途へ。

久しぶりのコースに懐かしさがこみ上げます。

給水塔の坂も電動自転車だと楽々。

以前は、坂道トレーニングだと言い聞かせて、よく走っていたよね~

 

道々には、当時目についたお店がそのままあるかと思えば、閉店や別のお店になっていたり、年月の移り変わりを感じます。

 

いつもは車でしか行ったことのないレストランへ。

ここでランチタイム。

名物の桃のスープを飲んで、夏を味わいます。

何回か切り返して車を停めなくても、自転車だとお店のすぐ前に駐輪。

ここでバッテリーは7。

 

元気が出たところで、さらに北上します。

『吹上』駅を過ぎたところで残り6に。

『今池』駅まで行けそうですが、ここは無理をせず、帰路につきます。

行きに気になったお店をチェックしてあるので、ゆっくり走ります。

八百屋さんの店先で、『ブドウおいしそう…』(自転車だとつぶれるので不可)

『人参が安い』(人参なら振動に耐えられるので買おう)

ケーキ屋さんの店先で、『ケーキは無理だわ~』

パン屋さんも何件かあるので、その都度1~2個買えば、全店網羅できます。

最後は、和菓子屋さんへ。

このお店は、マラソン時代、気になっていたお店のひとつ。

気づかないくらい、とても小さな古そうなお店です。

どんなお菓子があるのか?どら焼きかお饅頭くらい?と、店のガラス越しに横目で見て走っていたあの頃でした。

今回行かずしていつ行く?

中へ入ると、飛び込んできたのは、数々の生菓子。

花火や金魚など夏の風物詩が、それぞれ違う材料で作られていました。

『何年かの謎が解けた!』だけでなく、『想定外のお店』を発見した嬉しさ。

自転車旅こその収穫でした。

 

今回往復26キロ。

院長の電動自転車のバッテリーを調べたところ、約30キロ走行可能でした。

 

いつか欲しいのは、名古屋駅まで往復できるバッテリー容量の自転車。

名駅や栄を自転車で…なんて、都心の住人みたい。

 

電動自転車で楽しめることを発見。

用事だけに使うなんてもったいない!

カテゴリー:公センセの日常の出来事

2020.7.28 世界が窮屈って?

「朝、目覚めると、世界が窮屈になっていた。」

 

休日の朝、スマホで朗読小説。

出だしのフレーズです。

え?どういうこと?

BGMくらいのつもりで聴き始めたのに、急に頭がしゃきっとしてしまった院長です。

 

 

主人公の女性は、朝目覚めて、部屋を見渡すと、「テレビ画面がやけに小さい」

「テレビを含む視界全体がぎゅっと圧縮されてしまったような感じだ」

何の病気?

小説のストーリーもですが、主人公の病気の描写が気になり、朗読の声を聞き逃さないように集中します。

 

 

「階段を降りようとした。その瞬間。がくっと音がして、あっというまに踊り場まで背中でずり落ちてしまった」

下方視野が相当欠損しているのね。

 

主人公は、NYのメトロポリタン美術館の学芸員です。

「なんだろう。朝からもう何度も壁にぶつかりそうになっている。階段を踏み外したり、壁にぶつかりそうになったり」

階段踏み外しは、下方視野欠損(しかも両眼、重度の)だけど、壁にぶつかるというのは、急激な両眼の視力低下も起こったのだろうか?

 

「自分の周囲のものが、いっせいにじぶんにむかって縮こまってくるような」

これは、求心性視野狭窄(わずか中心だけが見えている)のこと?

 

「視野が欠けている、っていうか。ちゃんと見えていない感じで」

「今朝起きたときから、なんだかおかしくて」

急性発症と考えていいよね。

 

急性発症・視野狭窄(特に下方視野欠損と求心性視野狭窄)

何?朝のくつろぎの時間のはずが、眼科医モードに切り替わっています。

 

診断名は「glaucoma」(グラウコーマ)

 

えー!?グラ(眼科医は略して呼びます)だったの?

緑内障のことです。

約30年眼科医として、特に緑内障には力を入れて診療していますが、小説のような症状が一度に急に出ることはありません。

世界(視野)が窮屈になったという表現も初耳。

 

現代では、緑内障は早期に発見(人間ドッグや他のことで眼科受診の際)されることが多くなり、多くは初期の段階です。

慢性で徐々に進行していく病気ですが、主人公のようにある日まで自覚症状がなく、末期になるまで受診しないことは、まずあり得ません。

初期はもちろん、それ以降のステージでも点眼治療をすれば、進行を抑えることはできます。

点眼治療がうまくいかない場合は、手術をすることもありますが、術式も色々開発され、その成績もかなり良くなっています。

 

 

「ほとんど手がつけられないほど進行してしまっていること。進行を遅らせるための緊急手術を受け、うまくいけばしばらくはしのげる。けれど、完治することはない。いずれにしても、近い将来、視力を失うだろう」と、主人公は眼科医から告げられます。

これも、小説ならではの、眼科医の説明だろうと思います。

 

主人公は、眼科で知り合った弱視の少女を抱き上げて、「ギャラリーの中央へ歩んでいった」

これほど、末期で、階段も転げるような主人公が、子供を抱っこして歩けるのか?

今までの主人公の病状からは考えにくい行動です。

 

揚げ足を取るわけではないけれども、眼科医からすると、「緑内障」に関しては少々残念な描写でした。

 

 

でも、ひとつ新しい絵に出会えました。

『盲人の食事』

ピカソの青の時代。

1903年、22歳の作品です。

目の不自由な一人の男の横顔。

右手で水差しを探り当てた様子。

「どんな障害があろうと、かすかな光を求めて生きようとする、人間の力」

 

その日のうちに、本で購入し読み直しました。

群青 原田マハ

「」は小説より抜粋です。

 

 

 

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること
  • カテゴリー

  • 最近のエントリー

  • カレンダー

    2025年8月
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031
  • アーカイブ

  • タグ

先頭に戻る