2022.12.13 リアルDr.コトー   その2

与那国島へは、プロペラ機で入島します。  →前回の記事はこちら

蒸しっとした暑さと、ひどい強風と雨(突然降って突然止む)。

南の島~のイメージは到着後、すぐ打消し。

 

島は周囲約27キロ。

人口は1700人弱(ちなみに当院がある名古屋市緑区は約25万人)。

与那国診療所は、島に3つある集落の最も中心の集落にあります。

町立ですが、地域医療振興協会(JADECOM)の管理となっています。

所長(といっても医師一人)こそ、リアルDr.コトーのS先生です。

S先生は、JADECOMの理事ですが、先月で医師不在になり、急遽那覇から与那国に移住し、診療されています。

無医島にするわけにはいきません。

沖縄県には離島が多くあり、JADECOM、県立病院からの派遣、その他経路で医師が診療に従事しています。

みんなリアルDr.コトーです。

 

この日は、割と一般的な病気ばかりだったので、救急搬送をしないといけないケースはありませんでした。

電子カルテが導入されており、CTも設置。

地元の患者さんはそれほど多くないのですが、観光客の増加に伴い多忙になる時も。

一応何でも見ないといけないので、総合診療の現場でもあります。

そのため、初期研修医の地域医療実習機関にもなっており、1年目の医師が1か月研修に来ていました。

いい年をしたオバサン医師(院長)が突然何しに?と、当初、不審そうな目。

そうですよね~(ちゃんと、自分の経歴を説明)。

 

島の医療体制で限界と思ったら、すぐ石垣島や本島(沖縄)に紹介するのが、離島医療の約束。

一人で抱え込まないのは、何処の医療でも同じ。

ヘリや飛行機・船で島外の医療機関に受診して、軽症なら何より。

手遅れにならないように見極めることは、島医療で大事なことです。

Dr.コトーは一人で大手術もしてしまいますが、それはドラマならでは。

 

眼科・皮膚科・耳鼻科・整形外科・産婦人科は月に一回2~3時間外部からの医師による診療があります。

数時間の診療なのは、医師が日帰りのため。

 

カバーが掛かった眼科の機械は、割と新しい。

外来開設に合わせて導入したとのこと。

しかし、最低限のものしかなく、特に眼科は精密光学機器の発展が著しいので、初期の診療にとどまらざるを得ない歯がゆさを感じました。

緑内障のフォローは難しい…

 

先日、鉄粉が入った患者さんが来院。

取れず、石垣島の眼科へ紹介したとのこと。

『どうすれば?』と聞かれ、『眼科医なら顕微鏡下で鉄粉を削り取ります(お手の物)』と答えるも、眼科医でも顕微鏡がない場合は無力だ…と気付く院長でした。

 

産婦人科も月に1回。

妊婦は予定日1か月前になると、島から出て、石垣島や本島・里帰り出産の準備をします。

それ以前に破水でもすれば、ヘリで搬送です。

 

島に暮らす人は、島医療の限界を知っているから、島外に行くことにはそれほどハードルが高くないようです。

石垣島へは、飛行機で25分、フェリーで4時間ですが、生活用品や診療など結構日常的に出かけることが多いようです。

 

民宿の食堂で3人で夕飯を。

ひどく疲れていた院長。

お疲れさま!の一杯が欲しいところ。

S先生は飲まない(飲めない)のだとか。

常にオンコール。

携帯の119が鳴ったら出勤です。

離島では、飲めない体質の方がいいようです。

土日は休みですが、島外からは出られません。

かといって、島内で何をするかというと…?

好きな趣味やすることがあればいいのでしょうが。

院長も若い頃、岐阜の地方の病院に赴任、仕事後は手持ち無沙汰になった記憶が。

結局、地元のオジサンオバサン(と当時は思っていましたが、50~70代)の文化人サークルと称する飲み会に入れてもらいました(一応紹介承認制)。

代診の派遣でまとまった休暇がとれるような制度はあるそう。

医師も人間、解放される時間は必要。

 

島医療の熱い話を聞きながら、医師の生き方あれこれ、自分の来た道あれこれ交錯。

布団に入ってもなかなか寝付けませんでした。

 

*次回に続きます*

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2022.8.23 跡がついてます

3年前買った、お気に入りのポロシャツ。

サイズは変わらないのに、腕に袖口の跡が付くようになりました。

腕、太くなった?

オバサンにしては、良い意味で太くなってきています。

そうです!

筋トレの賜物、貯筋(ちょきん)の結果です。

嬉しい反面、ノースリーブの服が増える傾向にあります。

華奢な腕はたくましい腕に。

箸しか持てなかった腕?は、ちょっとした男性並みの重量を持てるように。

見た目より実利。

 

跡がつくのは、その部分が押されているから。

腕だけでなく、身体のどこにでも、締め付けや圧がかかれば、跡が付きます。

開放されれば、跡は消えますが。

 

眼科の診療でも、跡がついている患者さんを診ることがあります。

ハードレンズ(HCL)ユーザーに見られます。

 

HCLは、硬いプラスチック素材の角膜(茶目)より小さいコンタクトレンズ(CL)です。

患者さんの角膜カーブに合わせて処方します。

瞬きすることで涙液交換が起こり、酸素が目に取り込まれます。

涙が減少し、レンズが動きにくくなると、角膜に傷がつきます。

特に、HCLのエッジによるリング状の圧痕がある場合は、レンズがほとんど動かず(貼り付き)、涙の交換が出来ていない状態です。

一過性の貼り付きは、瞬目や人口涙液で改善されます。

しかし、貼り付き状態が長い(固着)と、リング状に圧痕がつき、角膜に変形が起きている可能性もあります。

 

多くは、長年のユーザーで、同じレンズを長期使用。

ドライアイあり。

瞬きが浅い。

長時間のネット環境(瞬き減少)、などなど。

レンズを中止して1~2週間後、角膜のカーブを再検。

処方レンズの見直しも検討します。

 

昭和時代、日本での第一選択はHCLでした。

院長の初CLも、もちろんHCL 。

使い捨てや頻回交換型SCLが日本に導入され約30年。

今では、CLユーザーのほとんどがSCLです。

それでも、HCLのほうがお勧めの場合もあります。

強度近視や乱視などは、HCLのほうが、よりシャープに視力が出ます。

当院で実感する限り、HCLユーザーは院長年代以上の患者さんがほとんど。

最高年齢は強度近視の80歳。

強度近視になると、眼鏡よりHCLのほうが矯正視力が上がるので、高齢でも使用されています(定期検査もしっかり)。

 

今は、ネットでもコンタクトレンズが購入できますが、角膜に傷や跡がついているかどうかなんて、自分で見てもわかりません。

また、HCLユーザーは、強度近視の傾向にあるので、緑内障発症の頻度も高まります。

最近は、強い近視でもSCLユーザーが多いので、啓蒙活動や早期発見を心がけています。

 

ジャストフィットする服が好きな院長です。

洋服は好みですが、コンタクトレンズは高度医療機器なのでジャストフィットでなくてはいけません。

 

目の前の眼科医は、あなたの角膜にジャストフィットするコンタクトを選び、トラブルシューティングにも対応します。

ネットの世界に行かないでくださいね~

 

 

 

 

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2022.7.12  桃のスープ

桃が店頭に並ぶようになりました。

桃はそのまま食べるのがとても美味しいのですが、院長の好きな一品に『桃のスープ』があります。

 

30年ほど前に家人が連れて行ってくれたレストラン。

そこで初めて桃のスープなるものを食べました。

桃は生に限る!もしくは桃の缶詰しか知らない地方(岐阜)出身者にとっては驚きの味!うっとりするような味でした。

 

以来、桃の出回る季節には必ず足が向きます。

 

『桃のスープ出てますか?』の確認をして、今年も出かけました。

『お待ちかねの桃のスープです』とサーブ。

この季節のお楽しみを口にすると、幸福度アップの院長です。

今年も、この味に出会えて満足。

しかも、この何年かは、家人は自分のスープを院長にくれるつもりで桃のスープを注文してくれます。

本人曰く、『それほど桃のスープに固執していないから、そんなに好きならもう一皿どうぞ』

長いお付き合いの賜物?です。

相手が好きなものは、譲るとか少し多めに分けるとか…

息子たちは、母(院長)に対しては、配慮するより配慮してもらう方。

将来のパートナーとは、譲り合いしないとね~

と言うわけで、二皿も楽しみ、大満足。

 

桃のスープで検索すれば、色々なレシピが出てきますが、自分では作る気にはなりません。

院長にとって、桃のスープは、そのレストランでしか食べられない特別なスープです。

こういう特別感が、日々の生活の活力になっているのかもしれません。

 

さて、新型コロナの流行が始まり、外出もままならない頃。

一人でこのレストランに出かけました。

サイクリング気分で、感染予防?のため自転車で。

カジュアルだけどレストランにはOKくらいの格好で。

閉塞感の毎日の中、あの日の桃のスープも美味しかったです。

その帰り。

信号のない、三叉路。

左折しようと停車の車に対して、左方向から自転車の院長。

右方向を確認して、左方向(院長方向)も見ているよね~と思いながら進行。

すると、車が左折しようと直進し、自転車の前輪と衝突。

相手のスピードも遅く、院長の踏ん張りも効いて、転倒はしませんでしたが、前輪のゆがみ。

幸い、自身の身体は大したことがなく、自転車の前輪のみ交換で済みました。

下肢の踏ん張りは筋トレの賜物?

踏ん張れなかったら転倒して大変なことになっていたかも。

桃のスープとリンクする痛い思い出です。

 

恐らく、視力・視野は問題ない運転者だったと思いたいですが、何回も曲がる方向の両方向を確認する重要性を改めて認識。

院長も日々診療で、視野欠損の患者さんの運転・生活指導(助言)をしています。

片眼が見えない場合、その目の外側はよほど首を大きく回すなどしないと、見落としにつながります。

上方が見えない場合は、信号機や標識を見落とすことがあり、注意です。

下方が見えない場合は、足元やカーナビ操作に注意です。

両眼の視野が周囲から狭まって、狭い中心しか見えない場合は、その周辺の変化がわからないので注意です。

周囲は見えるけれど、見たい中心が見えない病気もあります。

意外に、自覚せず、運転しておられます。

自分の特性(視力・視野)を知っていたほうが、より安全・安心に運転できます。

 

そして、事故防止には、運転者も、自転車・歩行者もそれぞれが注意を払うことが大事です(自戒を込めて)。

 

 

 

 

 

 

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2022.3.8  世界緑内障週間2022

緑内障診療ガイドライン第5版が届きました。

診療ガイドラインとは、エビデンス(科学的根拠)に基づいて最適と思われる治療法を指示する文書のことです。

2003年に初版が出版されて以来、5回目の改定。

 

医学全般、日々進歩しています。

眼科学もそう。

その中の緑内障診療についてもそう。

 

院長が初めて参加した全国的な学会は、緑内障学会。

私たち研修医は、一般講演の内容もほとんど理解できず???

大御所の先生たちの特別講演の内容も???

『なんか、難しい話ばかりだったね~』

『どうやって聞いた講演をまとめよう?』などなど。

メーカーの担当者さんが『大丈夫ですって。すぐに発表する側になりますよ』と、ご飯を食べながら励ましてくれました。

あんな難しいこと、わかるようになるの?出来るようになるの?と、見えない未来の中、先輩たちの指導を仰ぎながら日々緑内障診療。

いつの間にか、学会の内容も理解できるようになっていたのでした。

 

緑内障治療の原則は眼圧下降です。

まずは点眼、そしてレーザー、手術があります。

院長が研修医の頃、教授が好んで使用されていた点眼薬も、今ではほぼ消失。

代わって、様々な機序の新薬は開発されていますし、配合剤(2種類が1ボトルに入っている)も主流になってきました。

レーザー治療も、以前からありましたが、古い術式から新しい術式に変化しています。

また、手術も、大枠は変わっていませんが、派生して色々な術式が発表されています。

 

緑内障に対する考え方も変わってきました。

院長が眼科医になる以前は、緑内障は眼圧が高いことがスタンダードでした。

しかし、研修医の頃から、眼圧が正常な(基準値より低い)緑内障もある…と言うことが分かっていました。

今では『正常眼圧緑内障』ですが、当時は『低眼圧緑内障』と呼ばれていました。

日本人の多くは正常眼圧緑内障というのも、2000~2001年の多治見市疫学調査で分かったことです。

眼圧だけで判断できない。

視神経の変化、視野の変化、正確な眼圧測定が大事。

研修医の頃に叩き込まれました。

 

元々、眼科は、検査機械の多い科ですが、診断機器も著しく進化しています。

人間の眼ではわからない、眼の奥(網膜や神経)の様子をあらゆる方向から観察することが出来ます。

視野変化が起こる前の緑内障(前視野緑内障)という新しい病名も出来ました。

 

画像を用いての診断や説明は、今では緑内障診療に欠かせません。

もちろん、機器だけに頼るのではなく、あくまで眼科医としてのスキルあってのことです(自戒)。

 

今年の世界緑内障週間・ライトアップinグリーン運動のスローガンです

 

『早期発見・治療の継続・希望

あなたの目がずっと見えていますように

40歳を過ぎたら眼の定期検診を!』

 

日本の視覚障害の原因の第1位は緑内障(28.6%)です。

しかし、自覚の少ない初期・中期に発見され、治療すれば、不自由なく一生を過ごすことが出来ます。

40歳以上の約20人に1人は緑内障になっていると報告されています。

眼科検診で異常なければ安心。

もし緑内障と診断されても、眼科医と二人三脚で進行を抑えられるよう頑張りましょう!

 

当院も運動に参加しています。

3月6日から12日まで、花壇にグリーンライトが点灯します。

世界緑内障週間

 

 

 

 

 

 

 

 

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2022.2.15 ドーナツと緑内障

先日、ショッピングセンターで小腹が空いた院長。

Mドーナツ店の前を通ると…

某ショコラティエとのコラボドーナツが。

 

せっかくだからドーナツで一休みすることにします。

何年ぶり?

期間限定の…チョコレートをまとったハート形やガナッシュをサンドしてあるドーナツ数種。

キュートだわ~♡

どれにしようか…

しかし、結局選んだのは、定番のドーナツ2種。

斬新さより懐かしさが優先しました。

 

ドーナツにはコーヒーが一番合うとは思いますが、筋トレを始めてから常に頭の片隅に『タンパク質摂取』という言葉が。

炭水化物と油脂が主だから、ホットミルクをオーダーします。

 

丸いドーナツにクリームが入っているもの。

ドーナツは穴が開いているものと信じていた昔、初めて見て食べたときはびっくりしました。

軽い触感でチョコがかかっているドーナツも。

 

小学生のころ、街に勤めている母が買ってきてくれたのが、これらMドーナツとの初めての出会い。

田舎では、まだ誰(同級生)もそんなドーナツを食べたことがありませんでした。

 

母はフルタイムで働いていたので、よく街のドーナツを買ってきてくれました。

それはそれで嬉しかったのですが、母の手作りドーナツにも憧れていました。

それを察してか、ある日、父がドーナツを作ってくれました。

膨らし粉でつくった穴の開いたドーナツ。

白砂糖がまぶしてあります。

嬉しくて切ない、小さい頃の思い出です。

 

その後、自分で街へ行くようになり、ドーナツも自分で買えるようになりました。

高校のクラスメイトのお姉さんのバイト先はMドーナツ。

残ったドーナツをおすそ分けされ、お昼休みに何個も頬張ったことも。

若さゆえ、一度に3個食べるのは当たり前。

体重も人生最大値を示した頃です。

 

そんなに大好きだったドーナツ。

今、久しぶりに、ドーナツを目にすると、走馬灯のようにドーナツをめぐる物語がよみがえります。

一口食べてみると、懐かしい。

そうだ、そうだ、こんな味・触感だった。

若いころのように、バクバクあっと言う間に平らげることもありません。

一口食べてホットミルクを一口。

ドーナツひとつで十分でした。

 

さて、院長は、1日1回は『ドーナツ』という単語を口にします。

日々、健康診断で『視神経乳頭陥凹(かんおう)拡大』を指摘され、精査目的で来院されます。

目の奥の網膜(もうまく)には、光を感じる細胞(視細胞)があります。

視細胞で感知した情報は視神経線維を通って、脳へ送られます。

視神経線維は、眼球の奥(視神経乳頭)でまとまって束となり、眼球の外(脳)へ向かって出ていきます。

 

この視神経乳頭の陥凹は誰にでも認められます。

しかし、その陥凹(=へこみ)が標準より大きい場合、健康診断で『視神経乳頭陥凹拡大』と指摘されます。

 

乳頭陥凹拡大を指摘されたということは、緑内障の検査をしてね、ということです。

緑内障で、視神経の数が少なくなると、視神経線維層の厚みが薄くなり、視神経乳頭陥凹拡大が大きくなります。

院長は、ドーナツの話をします。

穴が小さく食べるところが多いドーナツ(正常陥凹)と穴が大きくなって食べるところが少ないドーナツ(視神経乳頭陥凹拡大)。

ドーナツのように、視神経陥凹は穴ではないのですが、イメージです。

視神経乳頭陥凹拡大だからすべて緑内障というわけではありません。

緑内障の早期発見・早期治療のためにも、指摘されたら眼科を受診してくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2022.12.7  押したり引いたり

担当の職場(スーパー)に近づくと、頭の中でテーマソングが流れるようになった産業医(院長)です。

 

1年に一度は健康診断結果の判定をします。

該当職場で労働は可能か、否か。

制限付き(時間・配置転換など)で労働は可能か、否か。

あとは、健診結果から、『要受診』対象者をピックアップします。

昨年、『要受診』と指摘した人が、今は『治療中』になっていると、ほっとします。

高血圧・糖尿病は特に自覚ないまま見過ごされやすいので、早期発見早期治療が大事です。

眼科健診項目は、視力・眼圧までがほとんどで、眼底検査まで健診で受けている人は少ないです。

眼科医としては、40歳過ぎたら、自覚症状がなくても眼科受診を!と言いたいところ(実際啓発しています)。

 

 

労災事故は、発生防止に努めていますが、担当する店舗でも一件発生しました。

50代女性スタッフが、飲料を積んだ台車を引いている際、誤って台車の車輪に足の小指を巻き込み骨折。

普段、台車(スーパーやホームセンターのカートではない)を使用したことのない院長は、早速、職場巡視で確認。

バックヤードに台車は多数。

荷物が載っているのも、空のも。

『これで小指骨折するんですか?』

カートを前後に動かしながら店長さんに尋ねます。

別のカートの場所に連れて行ってくれます。

2リットルペットボトル6本1箱が12箱。

上下2段に乗っています。

合計144キロ。

該当女性に近い院長(体系は不明)。

かなり重いながらも、車輪がついているので、押す方向にも引く方向にも動きます。

 

『引いていた時の事故でしたよね?』

普段、台車やカートは押すイメージの院長。

スーパーでは、品物の量(かさ)も重量も多くなります。

押して動かすと、前方不注意や、重量で走行の制御が効かず、お客様に被害を及ぼす恐れもあるそうです。

だから、自分のほうへ引きながら商品を運ぶのだそう。

しかし、重量のある台車だと、引いた時の重さで、すぐに静止しない場合があり、今回もこれに該当(かつ、バックヤード通路がやや暗かった)したとのこと。

自分も144キロ荷重の台車をやや勢いをつけて引いてみます。

結構なパワーの台車を受け止めないといけません。

小指が下敷きになったら折れるかも!?

その後、念のため、安全シューズの支給もすることになりました。

 

台車を引きながら浮かんだのは、視覚障害者を誘導する体勢。

クリニックでは、眼の悪い患者さんが多く来院されます(眼科なので当たり前)。

中でも、視力や視野がひどく悪く、院内を歩くにも、介助が必要な方がいます。

もちろん付き添いの方がおられますが、誘導の仕方は色々。

目が見えないから…と、患者さんの手を引っ張って進行方向に後ずさりしていく介助者が多々。

これは、介助者も進行方向が見えないので危険ですが、患者さんにとっても引っ張られる行為は不安です。

見えていないのに、どんどん前に行く不安。

視覚障害の方を介助するには、原則、横に立つことです。

肩もしくは腰に手を添えて、声をかけてゆっくり進む。

白杖で介助者付きの場合は、介助者の肩に手をかけて後ろを歩くことが多いです。

その際も、介助者は、歩行のペースや障害物などを知らせる必要があります。

 

明日から、スーパーで台車を見かけたら、運搬方法と荷重を見てみようと思います。

今回も、新しいことを知った産業医業務でした。

 

 

 

 

 

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2021.9.7 赤毛のアンと緑内障

ステイホームが続くようになって、院長の読書熱も復活。

新刊も読みますが、児童文学や古典も気になるように。

 

さて、先日書店で見つけた『赤毛のアン』

何十年かぶりに、同じ訳者(改定あり)の文庫シリーズが目に留まりました。

 

もう一度読みたい!

いつか読もうと思っても、老眼・ドライアイに加え、集中力の欠如が起こりうる現実。

読むなら、今!

 

赤毛のアンシリーズは、『赤毛のアン』から始まって『アンの思い出の日々(上・下)』まで全12巻。

今では大人買いです。

 

『赤毛のアン』

孤児院のアンは、グリン・ゲイブルス(物語の場所)の独身のマシューとマリラ(兄妹)に引き取られます。

アンは11歳、マシュー60歳、マリラは50代。

美しい自然の中で、多くの人と関わりながら成長していくアンの物語です。

アンの年齢に近かった少女(院長)は、アンを中心に物語に夢中になっていましたが、いまやマシュー・マリラと同世代。

冷静になって様々な立場で読む自分がいます。

 

 

さて、このお話の中で、マリラは、度々頭痛を起こします(以下原文抜粋)。

 

『~頭痛のせいなんだよ。

近ごろ、しょっちゅう痛むのさ、眼の奥のあたりがね。

スペンサー先生は眼鏡のことばかりやかましく言いなさるけど、いくら眼鏡を変えてもちっともよくならないんだよ。

6月の末に島へ有名な眼科医が来るから、ぜひ見てもらいなさいと先生が言いなさるんだが、私もそうしなくてはなるまいと思うのさ。

読むのも縫うのも不自由でね。~』

 

『~あの眼科医が、明日、町にみえなさるから診てもらって来いと言いなすったんだよ。~

私の目に合ったメガネをつくってもらえばありがたいことだよ。~』

 

マリラは眼科医に診てもらいます。

『~もう読書も裁縫も、眼に負担がかかることは一切やめなさいって。

泣くのもよくないんだとさ。

それで先生のおっしゃる通りの眼鏡をかければ、これ以上悪くなるのは食い止められるし、頭痛も治まるだろうって。

そうしなければ、半年のうちに目が全く見えなくなるっていうんだよ。~』

 

少女(当時の院長)は気にも留めず読み進めたのに、眼科医(院長)の今、その部分で停止、考察。

マリラは、緑内障を患っていたのではないか…

 

緑内障には隅角が広い開放隅角緑内障と狭い閉塞隅角緑内障があります。

閉塞隅角の患者さんは、何かのはずみに、隅角がより狭くなると、眼圧が上がります。

遠視の人が多いです。

うつむいて作業をすることで(特に暗いところで)、隅角がより狭くなり、眼圧が上がります。

そこそこ上がると、眼が押されるような疲れ・痛みや眼精疲労、頭痛が起こります。

ただし、姿勢によって、改善されるので、眼から由来するとはなかなか気が付きません。

また、加齢により白内障になることで、隅角が狭くなりがちです。

何かの拍子で、隅角が閉塞してしまうと、急激な眼圧上昇と激しい眼痛・頭痛を起こします。

頭の病気かも?と思っていたら、眼の病気だったという『緑内障発作』です。

 

マリラは、中等度以上の遠視で、慢性閉塞隅角緑内障だったのではないか…というのが、院長の見立てです。

頭痛・眼精疲労など、小さな眼圧上昇を繰り返した結果だったのでは。

すでに、視野欠損(自覚の有無は別として)もあったのではないでしょうか。

 

現代だったら、マリラに手術を勧めます。

 

100年以上前、作者のモンゴメリは、どんな病気を想定して描写したのでしょうか?

赤毛のアンで、眼の病気に出会うとは…

 

1巻目にして、足踏みをしてしまった院長。

全巻制覇まで、ゆっくり読み進めていこうと思います。

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2021.5.11 アイフレイル自己チェック

4月の大きな眼科学会は、ハイブリッド(現地と後日WEB配信)で行われました。

大阪なら日帰りも十分可能なので、久々に現地で聴講しようという予定でした。

通常は、新幹線を使うのですが、今回は1日だけでも話題?の近鉄特急『ひのとり』に乗りたい!

デビュー当時は、大人気で予約も取れない状況だっただけに、早めにネット予約。

時間は新幹線の倍以上かかるので、会場到着時間から逆算して乗車時刻を。

しかし、大阪を中心に新型コロナ患者の急増。

学会臨場感と『ひのとり』より、ステイホームでGW間のWEB配信を選びました。

 

と言うわけで、GWは、PC前で視聴、視聴。

予定もないGWとはいえ、気になる演目を多岐にわたり集中して聞くと、けっこう頭は疲れます。

 

今回も、人生100年時代を見据えた、眼科戦略は、それぞれの病気の分野で、研究発表されていました。

 

『アイフレイル』は、眼の不快感を単に年のせいにせず、視機能の重要性を認識し、問題の早期発見を促すことを目的とした概念です。

早期発見することで、適切な介入(治療)を可能とし、ある程度機能回復させる・進行を遅らせる・緩和させることが期待できます。

元に戻る(正常)ことは難しいけれども、悪化抑制は出来ます。

眼科医にとっては、眼科に受診してもらわないと、診断治療ができません。

 

そこで…『アイフレイル』自己チェック!です。

1.目が疲れやすくなった

2.夕方になると見えにくくなることがある

3.新聞や本を長時間見ることができなくなった

4.食事の時にテーブルを汚すことがある

5.眼鏡をかけていてもよく見えないと感じることが多くなった

6.まぶしく感じやすい

7.まばたきしないとはっきり見えないことがある

8.まっすぐの線が波打って見える

9.段差や階段で危ないと感じたことがある

10.信号や道路標識を見落としたことがある

 

眼科医であれば、上記のそれぞれに予想される病名は浮かびます。

最終的に、単純に加齢によるものの場合もありますが、それは他の病気を除外しての場合です。

どんな健康な目でも、加齢に伴う機能低下は起こります。

日常生活が制限されないよう、早期発見早期治療のお手伝いをするのが眼科医です。

眼からの情報は大きく、見えていた人が見えなくなると、自立機能の低下も引き起こします。

 

緑内障の患者さんには、定期的に視野検査もするので、受診年数が多いほど、回数が多いほど、視野進行速度が正確に出ます。

『この進行具合なら、100歳まで日常生活問題ないですよ』とお話しすると、

『そんなに生きないからいいわ~』と言いつつも、嬉しそうな顔をされる70~80代の患者さんです。

最近緑内障が見つかった90代の患者さんは、まだごく初期。

『この程度で、治療をしっかり続ければ、120歳でも大丈夫ですよ!』

『わし、そんなにまで生きるかな?』と患者さん。

『大丈夫です!120歳まで診せてくださいね』

 

慢性の病気は、元には戻りませんが、悪化しないように現状維持をすることが目標です。

治らないから治療しても仕方がない…では、ないのです。

ご心配なことはご相談を。

カテゴリー:眼に関すること

2021.3.9 眼科もポリファーマシー

患者さんのお薬手帳を確認すると、薬の多いことにびっくりすることがあります。

お薬は、高齢になるほど、増える傾向にあります。

病気の種類が増えるからです。

それぞれの病気に対して、複数の種類の内服薬が処方されます。

都内の75歳以上の通院高齢者を対象に調査したところ、5種類以上の薬を処方された人は64%でした(東京都健康長寿医療センター研究所)。

眼科の患者さんでも、掌にいっぱいになるほどの量を毎回飲んでおられる方がいます。

『薬だけでお腹いっぱいになるわ~』

確かに…

 

多くの薬を併用することで、同じような薬が重複していたり、薬物間の相互作用で副作用がでたりと、身体に悪影響が出ることを『ポリファーマシー』と言います。

高齢になると、認知機能の衰えで、薬をきちんと内服できなかったり、薬の代謝分解機能の低下から、最近は多剤併用の見直しが注目されています。

医師・薬剤師・患者さんの相互理解があって、減薬が実現するのですが、減薬しても老人ホーム入居者の認知機能は維持できたとの報告もあります。

 

眼科でもっぱら処方するのは点眼薬です。

眼科でも、時に、驚くような多剤点眼薬が処方されていることがあります。

 

以前、往診を頼まれた施設入居の認知症の患者さん。

出されていた点眼薬は、抗生剤、炎症を抑えるステロイド剤、炎症を抑える非ステロイド剤、ドライアイの点眼薬2種、眼精疲労の点眼薬2種。

患者さんは、白内障の手術をした後、施設を転々とされていたようで、施設前医からの申し送りのごとく何年も同じ点眼薬を処方されていました。

当の患者さんは、自分がいつ白内障の手術を受けたかも記憶にないくらい。

スタッフは、7種類の点眼薬を、忙しい介護の合間にさしていました。

一日に何種類も何回もさすので、眼瞼は荒れ、めやにも出ていました。

同じ抗生剤を何年も使用していたので、耐性菌(抗生剤に効かない細菌)の有無を確認。

検出された細菌にターゲットを当てた別の抗生剤の点眼薬を処方し、他の点眼薬は全て中止。

すっかり治癒しました。

その後、点眼薬は使用しなくても特に問題は起きていません。

餅は餅屋、目は眼科に!

 

点眼薬をしっかり効果的にさせるのは3剤まで、と考えられています。

点眼薬と点眼薬の間は5分以上空けるのが望ましいので、2剤でも、うっかりしていると忘れてしまうことがあります。

また、種類が多くなることで、薬剤によるアレルギーを起こしたり、まぶたの荒れを起こしやすくなります。

 

緑内障の点眼薬も、進行の程度によっては、多剤併用になっていきます。

しかも、長期にわたり、点眼するので、合併症も出やすくなります。

現役世代も多いので、点眼と点眼の間をしっかり空けると、けっこうな仕事になってしまいます。

そこで、近年では、次々と合剤(2成分が1本に混入)が主流になってきました。

現在では、緑内障点眼薬の主要5成分が3本でカバーできます。

 

多剤併用は、他の病気にも当てはまります。

気になることを一度にカバーしようとすると、何種類もの点眼薬が必要になります。

優先順位をつけて、点眼薬の種類を決めるべきだと考えています。

眼科医の処方する点眼薬は、頓服みたいな何か起こった時だけの指示のものは原則ありません。

1日何回を継続してこそ効果の出るものばかりです。

 

最小の薬で最大の効果を!

最低の眼鏡(コンタクト)度で最高の視力を!

最高のコンディションで最高のパフォーマンスを!

当院のモットーです。

カテゴリー:公センセの想い 眼に関すること

2021.3.2 グリーンにライトアップ

明日はひな祭り。

クリニックの受付には、院長と同い年ながら、年を取らない美しいお雛様とお内裏様が、患者さんをお迎えしています。

 

さて、来週3月7日から13日は、2021『世界緑内障週間』です。

日本緑内障学会では、緑内障の認知と啓発に向けて、2015年から各地のランドマークをグリーンにライトアップする「ライトアップ in グリーン運動」を、世界緑内障週間に合わせて展開してきました。

当初は、公共施設や大きな病院でしたが、今年は、一般の医療機関へも参加呼びかけがありました。

緑内障学会員の当院も参加表明。

3月7日から13日は、当院の花壇の木々がグリーンにライトアップされます。

当院の花壇のライトアップは、11月後半からクリスマスバージョンを、その後オーナメントを外して2月初旬まで実施しています。

花壇の花々は年中、季節に合わせてアレンジされています。

3月のイルミネーションは、特別な1週間です。

 

ライトアップ色のグリーンは、当然、緑内障の緑に起因します。

白内障は、かなり進行すると、瞳が白っぽく見えることから『白』がつくのだろうと想像できますが、緑内障の『緑』は?

なかなか、想像がつきません。

 

遡ること、紀元前4~5世紀頃に古代ギリシャのヒポクラテスがある目の病気を「地中海の海の色のように青くなり、やがて失明状態になる」と記述しています。

これは、急性緑内障発作の症状と考えられます。

隅角が狭い人が、突然、眼圧の急上昇をきたし、角膜が膨隆・浮腫を起こします。

その目を診察するときに、透明性を失った角膜を通して暗い眼底を見るので、目は青緑に見えたのではないかと考えられています。

西洋人の青い瞳がゆえの記述だと思われますが、描写はきれいだけれど、とっても怖い病気です。

 

急性緑内障発作は、現代でも発症します。

元々隅角(ぐうかく)が狭い人の隅角が閉塞することにより、急激に眼圧が上昇、眼痛・頭痛もひどく、失明することもあります。

遠視の強い人は、隅角が狭いことが多いので、要注意です。

眼科医による隅角検査で、発作が起こりやすいかどうかわかりますし、もし起こりやすい傾向があれば、対処法はあります。

隅角が狭かったり、閉塞していたりすると、禁忌となるお薬や検査があります。

 

さて、40歳以上の20人に1人が罹患しているとされる(多治見疫学調査)緑内障は、日本人の中途失明原因疾患の第1位となっています。

日本人の多くは、眼圧が正常範囲内で隅角が広い(前述の緑内障発作は起こさない)正常眼圧緑内障です。

40歳過ぎたら、緑内障の定期検診をお勧めします。

近視はリスクが高まるので、近視の強い人は40歳以下でも検査をお勧めします。

 

初期の自覚症状はほとんどないため、気付いた時の受診でかなり進行していた!という状態で見つかることもあります。

緑内障の診断技術や治療法の進歩により、早期(自覚症状がない時期)に発見し治療を継続すれば、失明に至る可能性は大幅に減ってきています。

治療はしつつも、視野・視力に自覚症状がないまま一生を送れるように!が、眼科医の目標です。

 

そんな思いの『ライトアップinグリーン運動』です。

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