2024.5.14  校医のトリセツ

今年も眼科学校医担当4校の学校検診が始まりました。

 

名古屋市では8年前から任意で色覚検査が復活しました。

院長が小学生の頃は全員が受けたはず。

色覚検査が任意になってから数年は、各学年で希望者がありましたが、最近はほとんど1年生です。

50代院長~40代スタッフ小学生時代は4年生で実施されたのですが。

 

早期発見早期治療の波…?

(ちなみに色覚異常においては、治療はありません。後天性を除き結果は一生変わりません)

 

学校検診では、石原表を使って検査をします。

本に書かれた数字を読んだり、輪の切れ目を探す検査です。

あるかないかを調べます。

 

ただし…

1年生のせいか、こちらの言うことが理解できないことがある(2桁の数字の場合1桁のみ言うなど)

数字をまだしっかり読めない子がいる。

などでエラーが出てしまう可能性もあります。

もちろん、はきはきと答える子も多くいます。

誤答であれば、眼科受診のお勧め用紙を渡すことになります。

 

眼科での再検査にて、色覚異常と診断された場合、

 

一般的に多いのは『先天赤緑色覚異常』です。

日本人男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合です。

女性は、発症していなくても色覚異常の遺伝子を持っている保因者もいます。

割合で言うと、緑内障も40歳以上で約20人に1人なので、ありふれていると言えなくもないです。

 

このタイプの見え方の特徴としては…

例えば、赤と緑がどちらも茶色っぽい同系色に見えます。

 

治療法はありませんが、眼科医として、生活しやすさの助言をすることは出来ます。

色の区別がしにくい組み合わせを自覚すること(眼科で苦手な組み合わせの色パターンを確認)。

視覚だけでなく、他の感覚も使って確認すること。

職業制限(警察官、消防官、自衛官、パイロットなど、交通・運輸関係の列車・飛行機・船の操縦士など)はあること。

デザイナーや染色業など色の繊細さが必要とされる職業は難しいかもしれないこと。

などなど。

 

色覚異常とは、最近では色の特性(色の見え方の個性)とも言います。

そのため、自分の見え方の特性と必要な配慮・まだある制限を知っておけば大きな問題は生じないことを、当事者や保護者にお話しします。

 

担当学校は全てマンモス校。

校医としては、スムーズに検診を行いたいものです。

 

円滑な検診のためには、養護教諭の協力が必須。

そのために学校によっては『校医・公センセのトリセツ』があるらしい…

検診の仕方で気になることや改善点、学校保健委員会での提言などを受け止めての『公センセのトリセツ』(マル秘)。

 

名前を呼ばれたら返事をする(今どき返事をしない子もいます…)→検診する側からは相手を確認することは前提条件。

起立で臨む(ふにゃふにゃ立ちや、ポケットに手を突っ込んだままの子も)→眼位はまっすぐで見るのが前提。しっかり立たないと、目を触っているときに転倒の恐れもあります。

眼鏡は外す(このアナウンスを聞いていない)→瞼を下げて目の病気を見るので、スムーズな検診をするために必要。

などなど、公センセの要望が生徒全員に周知されるよう、学校全体で取り組んでくださっています。

 

養護の先生オリジナルの『公センセのトリセツ』のお陰で、円滑に検診が出来ます。

『トリセツ』の存在を知って尚、養護の先生に感謝です。

 

こちらもご覧ください

2020.11.24 加齢と色覚

2019. 7.30 見えるのに見えない

2017. 5.30 2017学校検診

2016. 3.22 学校検診変更

2015. 7.21 色覚検査見直し

2012.11.27 色も変化する

カテゴリー:健康 眼に関すること

2023.6.13  近視進まないで~

オルソケラトロジーの近視抑制効果が証明されてきた近年。

医学は進歩し、医師の頭も上書き保存の連続。

親が近視なら、子も近視になるのは仕方がない。

親と同程度の近視になるのは仕方がない。

眼科医(院長)でもそう思っていました。

成人になった息子たちには申し訳ないが、当時はわかってなかったんだもん!

 

当院もオルソケラトロジーを導入しました。

今回は、よく尋ねられるQ&Aを。

 

Q1:近視抑制治療は何歳から始めて何歳までくらい続けますか?

A1:近視になった時が一番のタイミングと考えられます(学校検診で初めて用紙をもらった時など)。

ただし、自覚がないことが多いので、ためらうことも多いと思います。

次は、視力が低下(近視進行)して、眼鏡を処方しようかどうかの段階。

眼鏡をかけて経過を見たいか、オルソケラトロジーを始めるかを考えましょう。

治療を早く始めるほど、最終的な近視度数を抑えられると考えられています。

眼軸長(眼の奥行)の伸びと身長の伸びはある程度相関すると言われています。

一般には、眼軸長の伸びが落ち着く15歳(中学卒業)くらいが目安です。

もちろん、高校生以降も続けることに問題はありません。

 

Q2:30センチ以上離して、正しい姿勢で読んだり見たりすると目に良いのは本当ですか?

A2: 文部科学省の『児童生徒の環境に留意してICTを活用するためのガイドブック』から。

視距離は30センチ以上

背中を伸ばす

目線は画面に直行する角度に近づける  など。

シドニーの研究では、30センチより短い距離で読書すると、近視化を促進すると報告されています。

また、スマホなどの20センチの近業は、両眼で融像(左右の目でひとつに見る)できるギリギリの距離なので、視覚負荷が大きいことが分かっています。

ですので、近用時最低30センチは必要な距離です。

 

Q3:明るい部屋で読書をすると目に良いのは本当ですか?

A3:紙媒体の本を読むときは、室内光が明るい方が、読書速度の低下や眼精疲労の惹起を軽減します。

また、スマホやパソコンの場合、外の輝度と画面の輝度に違いがありすぎると、視線を移動したときに、順応の切り替えが必要になり、眼精疲労を起こしやすくなります。

ですので、室内照度は画面の輝度と同程度にすると疲れにくいと考えられます。

 

Q4:30分ごとに休憩すると目に良いのは本当ですか?

A4:労働衛生学的には、デジタルデバイスを用いた近業時に、眼精疲労を軽減するために、20-20-20ルール(20分近業作業→20秒作業中断→20フィート(6M)より遠方視)が推奨されています。

さらに、子供は1日2時間の屋外活動も推奨されています。

オーストラリアの研究では、30分程度の近業後休息を入れることで、近視抑制効果があることが示唆されています。

 

Q5:スマホ、テレビ、ゲームは目に悪いのは本当ですか?

A5:最近では、単なる近業時間の長さではなく、一定以下の視距離で行われる近業時間の長さが、近視発症の原因として重要視されています。

スマホや携帯型ゲーム機では十分な視距離を取ることが難しいのです。

中国のスタディでは、両親の近視の有無に関連なく、すべての生後1歳以内の乳児はスクリーンタイムを避ける必要があると結論づけられています(遺伝だけでなく環境も重要)。

生後8か月までは眼軸長は劇的に伸長するため、3歳まで屈折値の変動が非常に大きいので、視機能に大きな影響を与えます。

 

これから成長する小さな患者さんのために近視進行抑制のお手伝いします。

学校健診の紙をもらったら早めの受診を。

 

過去の記事もぜひご覧ください

寝押しのイメージ

2023日本眼科学会総会

 

カテゴリー:健康 公センセの家族・恩師・友人など 眼に関すること

2022.5.24  3つのお約束

今年度の学校医の仕事が始まりました。

春の眼科検診・秋の就学時健診・学校保健委員会が3大活動です。

そのほか、学校医として随時求められれば相談や助言をしたり、全国学校医会に参加したり…などなど。

院長は、小中学校併せて4校(一時は5校)受け持っています。

 

学校医の良いことは、生徒たちの成長(若い息吹)を感じられることです。

20年以上同じ学校3校を受け持っていますので、小学1年生に上がる前(就学時健診)から中学3年生までに検診に携わる生徒たちもいます。

また、親子2代にわたり、検診をするという機会も出てきました。

嬉しいことであり、有り難いことです。

 

さて、眼科検診では、3つのお約束があります。

1.(養護教諭に)名前を呼ばれたら、『はい』と返事をする。

2.整列のテープに沿ってきちんと並ぶ。

3.眼鏡をはめている生徒は、外して検診を受ける。

この3つを、検診を始める前に、養護教諭・担任・学校医(院長)が連呼します。

生徒の数は以前より少なくなりましたが、700名くらいの規模(ピーク時は1000人超)の学校ばかりなので、スムーズに行うためにはお約束(ルール)が欠かせません。

たった3つのお約束のはずですが…

これがなかなか…です。

 

『はい』と普通に答える子。

『ハイ!』元気よく大きな声の子(とても気持ちいい返事です。すかさず、先生が褒めます)。

『はい』耳をそばだてないと聞こえない小さな声の子。

何も言わずに立っている子(○○さんだったら返事しようね、と先生)

呼ばれる前に返事をする子。

なかには、呼ばれた子を差し置いて、学校医の前に立つ子も。

『自分の名前を呼ばれて返事をするのは、その人かどうかの確認をするために大事なことです。違う人を診たら大変だからね』と、学校医、連呼です。

 

整列のラインもジグザグになりがちです。

検診をどうやってやっているのか興味津々で、順番を超えて見に来たり、記入している養護教諭の机にウエイブのように流れて行ったり…

我が家の長男も小学1年生の時、学校検診で母(院長)を見つけ、『うちの母さんだー!』と大興奮。

並んでいる最中に、飛び跳ねて、机に頭を打ち付け、騒然となった一件があります。

入学式の日も通常診療をし、式に出席しなかった母。

公務で初めて来校したのは、長男にとってはすごく嬉しかったのだと思います(母の胸キュンの思い出)。

低学年の生徒は、学校検診でさえイベントになってしまい、興奮してしまうのかもしれません。

 

眼鏡を外しておくのも然り。

連呼の声を聞いていないのか、他の人の動作を見ていないのか、眼鏡をはめたまま立つ生徒も多々。

 

これらはさすがに高学年になると少なくなります(ここでも成長を感じます)。

ただ、個人差は否めません。

円滑に物事を運ぶには、ルールを守ること。

もちろん、検診の場合、特性を考慮して、全員に3つのお約束をさせるわけではありませんが。

 

検診後には、受診のお勧め用紙が出されます。

受取った保護者は、速やかに、医療機関を受診してください。

大したことがなければラッキーだし、何か病気が見つかってもラッキー(早期発見早期治療)です。

学校医を拝命したばかりの頃、ベテラン小児科医に『お勧め用紙をもらって、親が受診させないのは、子供の健全な成長を阻む一種の虐待ともいえる』と聞きました。

学校医は生徒の成長を見守っています。

それが楽しみで学校医を務めています。

 

願わくば定年まで(学校医も定年あり)!の気合の院長です。

 

 

 

 

 

 

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