2025.10.21 ストレスと緑内障

緑内障の患者さんにとって眼圧は気になります。

眼科医はもっと気になります。

当院では緑内障患者さんには毎回院長が測定した数値を伝えています。

 

眼科雑誌にあった外国の論文の紹介。

『心理ストレスが緑内障患者の眼圧に与える影響』

 

ストレス負荷をかけた群とストレス負荷をかけないコントロール群を設定し、眼圧変化を比較検討した研究。

緑内障(原発開放隅角緑内障)患者39例。

21例にトリア社会的ストレステスト(TTST)という強いストレス反応を誘発するテストを仕掛けます。

例えば、病院での採用面接用スピーチの準備を10分以内でするよう指示。

白衣を着た面接官の前で採用面接用スピーチを5分間行うよう指示。

1022引く13の数を順に口頭で回答し5分以内に終了するよう指示。

計算を間違えたら最初からやり直し。

これらのテスト終了40分後にこの試練は研究のためと明かされます(ドッキリみたい)。

 

テスト前後で不安スコア、眼圧、血圧、心拍数、唾液検査。

コントロール群はストレス負荷群が与えられた指示に取り組んでいる間休憩。

 

この結果、ストレステスト実施直後の眼圧は、ストレス負荷群では右4mmHg左4.2mmHg上昇した。

コントロール群は右0.9mmHg左0.8mmHgk上昇した。

ストレスを掛けられた群は有意に眼圧上昇があった。

ストレス負荷群の6割が眼圧4mmhg以上上昇というのがこの研究の注目すべき点。

(4mmHg上昇というのは緑内障診療においては大きな意義あり)

 

40分の休憩後、ベースラインと同様の値に低下した。

 

一過性とはいえ、心理的ストレスは優位な眼圧上昇をもたらすことを初めて前向きにした貴重なスタディと評価されています。

 

血圧と同じように、眼圧も日内変動や日日変動や季節変動があります。

一喜一憂するのは良くありません。

しかし、緑内障は眼圧の変動幅が大きいほど進行しやすいと言われています。

診察での眼圧はもちろん重要ですが、眼圧が落ち着いていても進行する場合、日内変動が大きい場合もあります。

 

また眼球運動により緑内障が進行しやすいという報告もあります。

内転(眼球を内向きに動かす)すると他方向の動きより視神経の変形(画像レベル)が起こった。

また外転(眼球を外向きに動かす)すると他方向の動きより眼圧上昇が大きかった。

では眼球運動を制限すれば緑内障は進行しないのか?

実際眼球運動を制限する手術は報告されています(現実的ではないですが)。

 

緑内障を進行させないためには、日々ストレスを回避すればいい?目をあまり動かさない方がいい?などと短絡的に考える必要、実行する必要はありません。

これらはまだある研究の報告の段階にすぎません。

 

大事なことは、自分の病気・病期を知り、きちんと処方された点眼薬を遵守、定期的に診察を受けること。

心配なこと、気になることは目の前の主治医に尋ねること。

眼科医と緑内障患者さんの目標は、一生見え方に困らないQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を維持することです。

変わらないのは良いこと。

変化があれば経過次第で対応します。

何十年もお付き合いの患者さん。

頼っていただき有難いことです。

応えるためにまだまだ勉強しないといけない院長です。

熊は回避。白熊↑は歓迎。

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2025.8.5    すみませ~ん!いいよ~

よしもとの祇園花月劇場も8月で閉場となります。

よしもと新喜劇ファンとしては、終了前に行かなくては。

なんば花月は本場ですが、いつも満員御礼。

以前、院内旅行でなんばグランド花月に行ったときには、奇跡的に最前列!

すち子の投げた飴もキャッチして天にも昇る思い。

それ以外は、いつも後ろの方の席しか取れません。

対して祇園花月では最前列も取れるし、当日でも5~8列くらいには座れます。

思い立ったら祇園花月!というほど、京都で一番好きな場所でした。

 

閉場まで数か月前のある日。

異様に多い人。

初めて『し』の列。(あ行から)

閉場が発表されてからどっと観客が増えたそうです。

 

若手の漫才から始まります。

トリの頃には安定の笑い。

それから新喜劇が始まります。

新喜劇のストーリーはいつも同じで分かっているのに、ついつい笑ってしまいます。

ワクワクドキドキのない安定安心の笑い。

頭をフル回転させなくても、劇に合わせていつも同じ流れで笑える安心感というのか…

 

祇園花月の壇上でズッコケる練習をしたことも思い出されます。

誰でもできそうに見えることが、本当は難しい。

誰かを貶めたりけなさず、純粋に笑わせることって本当に難しい。

それらを極めるのってすごい。

若い頃には思いもしなかったことです。

 

座長のひとり、アキさんが流行らせたシーンに

相手『すみませ~ん』

アキ『いいよ~』

突っ込み『いいんですか?』

アキ『いいよ~謝ればいい~』

実際、特に社会では謝れば済む問題ばかりではないけれど、やはり非があれば『すみません』と謝ることは大事だと思います。

解決はしなくても、少し場は収められる。

そこから話し合いをしていけると思っています。

院長になってからの方が、『すみません』を発することは圧倒的に多いです。

でも相手の言い分を聞き、当方の方針や改善や提案などをお話しすると分かっていただけることがほとんどです。

最近は若い人で『すみません』が言えない人が増えてきたように思います。

自身の主張を言う前に、ミスがあったり出来ないことがあったりしたら『すみません』

状況を少し緩めるクッション言葉(担当学校医の小学校でよく使います)となります。

 

先日鹿児島中央駅でバスを待っていると、ロータリーに『えッ!』と声を上げそうな表示を付けたバスが入ってきました。

『すみません回送中です』

名古屋市バスは『回送』のみの表示。

日本の南・九州の下の方で、こんなクスっと笑えるバスに出会うとは。

『すみません回送中です』と掲げられると、目の前をスーッと通り過ぎても『いいよ~』と言いたくなります。

鹿児島市バスのユニークな取り組み。

ロータリーでしばらく立っていましたが、残念ながらその1台のみしか遭遇せず。

(なので写真はとっさの1枚です)

回送バスは、今後鹿児島での回想シーンに出てくること必至。

 

まだまだ日々『すみませ~ん』の院長(お客様相談係兼務)ですが、患者さんの温かい『いいよ~』で、お陰様で開業28周年を迎えることが出来ました。

経験と新しい知識を還元できるよう精進します。

今後ともよろしくお願いいたします。

 

すみません回送中です。
out of service

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2025.7.29   ペイハラ研修

あちこちでハラスメントという言葉が飛び交っています。

お客さんからのカスハラ。

患者さんからのペイハラまで話題に上がるようになりました。

 

医師会でも医療従事者のためのハラスメント実技研修が行われ参加してきました。

医療従事者は、患者さんに対して善意の元で診療にあたっています。

しかし、近年言われるペイシェエントハラスメントとは…

要求の内容の妥当性に照らして、その実現手段や態度が社会通念上不当であり、そのために医療機関職員の就業環境が悪化しているもの

だそう。

 

①暴言や威圧的な言動

大声で怒鳴る・侮辱的な言葉・医師や職員の人格否定など

②過剰な要求やクレーム

医学的に不要な検査や処方を強要する

時間外の対応を強く求める

院内に長時間居座るなど

③暴力や器物破損

④セクハラ

⑤ストーキングやプライバシー侵害

 

医療機関と言えども、長時間待たされたり、自分の思っていた病気や治療と違っていたり、期待や予想を下回ることは起こります。

不満は口に出してもいいですが、医療側の説明に納得していただければ、ピンチはチャンス!今後も患者さんと良い関係が築けると信じています。

患者さんがどんな背景があってそこまで不満を持ってしまうのか、今クリニックでの不満はほんの引っ掛かりのことではないのか…

 

当院は小さいクリニックでもあり、院長が、相談窓口係や予約係を兼務しています。

院長が説明時にはお詫びすることでご理解いただけ、また良い関係が続くことを願っています。

もちろん、人と人なので、相性もあると思います。

名医と合う人も合わない人も。

迷医と合う人も合わない人も。

最新の病院や若い医師と合う人も合わない人も。

年季のある病院や医師と合う人も合わない人も。

性格もそれぞれだし。

ただ、少なくとも院長は全ての当院受診の患者さんが好き!良い人!(性善説)との前提で診療に取り組んでいます。

性格の相性は別として。

 

起こり得る確率は少ないのですが、警察官によるさす又や盾を使う実習もしました。

さす又はそこそこの重さがあります。

女性だとぐらついてしまう人も。

性善説で仕事をしている医療従事者にとっては、初体験。

相手との距離を取ることが大事なんだそうです。

ナイフを持っているかもしれない。

その他の凶器も。

相手との距離を取ろうとしてかわされてしまうことも度々(実習では、警察官が犯人役になります)。

これは知っておいて損はないでしょうが、実践するときが来るのだろうか?

あまり

の下手さ加減(実習する私たち)に、『まずは逃げてください!』

まあ、そうでしょうね~

逃げられたらいいけど、足がすくんでしまったらどうしよう…

 

併せて簡単な護身術も。

相手に腕をつかまれたら、えいや~と腕を回して交わす(曖昧です)。

この実習で、院長は自分の握力がかなりあることを知りました。

日頃の筋トレのお陰、何歳からでも握力も増加します。

小中の体力テストの握力は最下位だったのに。

 

警察官は日頃訓練も受けているし、そういう人たちを相手にしているので、動きも迅速で美しい。

でも命張る仕事。

同世代の医師と『こんな実習をすることになるとは思いもしなかったですね~』

 

生活の多様化で、受診の仕方も多様化していました。

医療従事者が健康でなければ、安全な医療は提供できません。

働き方改革とともに患者さんの受診意識も大事です。

 

お互い理解し信頼ある関係を作りたいと、今日も相談窓口係は診察室で開いています。

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2025.7.15 エビデンスある近視予防

大阪駅で迷ってばかりではなく、ちゃんと近視学会で勉強してきた院長です。

 

近視に関する最新研究として

子どもの近視に伴う脈絡膜(眼球の奥の茶色い膜)の厚みの変化。

網膜信号を用いた近視抑制目的のコンタクトレンズの開発研究などなど。

へ~っと思うようなことばかり。

近視の治療の確立はまだまだ先ですが、新しい研究や試みも知っておくのに越したことはありません。

 

昔の常識が今では非常識なことは医学でもあります。

近視進行に効くと言われていた点眼薬や望遠訓練(当院でも昔は実施)は今では非常識です。

現在自費治療ですが、効果があるのがオルソケラトロジー(夜コンタクトを装用して寝る)や低濃度アトロピン点眼です(当院でも実施)。←今の常識

 

新しい事実をインプットして患者さんにアウトプットすることが、現役医師としての使命と思い勉強している院長です。

 

地域の眼科医・学校医として…

1.まず学校検診でB以下の用紙をもらったら、眼科を受診しましょう。

学校検診の資料検査だけでは目の状態を正確に把握できません。

視力低下が近視のためなのか、他の病気によるものか眼科で詳しい検査を受けましょう。

強い近視や遠視・乱視による弱視の場合、8歳以降だと改善が難しくなります。

よく子供に『見えてる?』 と尋ねる親さんを見ますが、子供は自分の見えにくさに気づいていないことが少なくありません。

お母さんの顔が見えていれば『見える』、鮮明に見えていなくても『見える』(広義の見えると言う意味では正しいのですが)。

テレビや本を見る距離が近くない?

遠くを見るとき目を細めてない?

 

近視の進行ピークは8歳から12歳で、身長の伸びと同様に眼球も伸びます。

視力1.0だから大丈夫…→近視は小学生で進みやすいので油断は禁物です。

近視を治す方法はあるの?→現在近視を治す治療はありません。近視進行を抑制する治療はあります。

遺伝はあるの?→遺伝はあります。しかし環境も影響します。環境により遺伝の影響を減らすことは出来ます。

眼鏡が欲しい時は眼鏡屋へ行けばいいの?→眼科で適切な検査の上、正しい処方箋を出してもらいましょう。

近視を放置するとどうなるの?→近視になる年齢が早いほど、強い近視になりやすいです。強い近視は緑内障や網膜剥離発生のリスクとなります。放置は強い近視になり日常生活に不便は生じる可能性もあります。

 

まずは家庭で出来る3つ!

1.30分に1回は目を休ませましょう!

近くのものを見る時間が長いほど、ピントを調節する筋肉の緊張が高まり近視を誘発します。

30分近くを見たら30秒遠くを見ましょう。眼科医会では20/20/20ルールも勧めています(20分近くを見たら20秒20フィート先を見る)。

2.30センチ未満の距離で物を見続けると近視が進行します。距離に気を付けましょう。

3.外遊びを積極的にしましょう。近視を予防するには太陽光が有効です。1日2時間以上外遊びをしましょう。

 

近視リスクを高めるNG行動3つ!

1.寝転んでスマホを長時間見続ける

画面と目の距離が近くなり、ピントを合わせる筋緊張が高まります。

2.休みの日、家の中でゲームや動画三昧

屋外に出て太陽光を浴びましょう

3.悪い姿勢で、休憩なしの勉強。

机に目を近づけて読んだり書いたりは、ピントを合わせる筋緊張が高まります。

 

駅で久々に迷った院長。

経験は迷いを減らす、そう信じて経験を明日の糧にする迷医です。

屋外活動中

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2025.7.1  緑のお世話

クリニックの花壇は自信をもってアピール出来るもののひとつです。

当初は、手入れをあまり要しないツツジやサツキ・低木の庭木で構成されていました。

しかし約20年前に患者さんも通行人も見て楽しい・嬉しくなるような花壇にしたいと思い、花の手入れをしてくれる造園屋さんに依頼。

以来、季節の花々が咲き、クリスマスシーズンにはイルミネーションも加わり、非常に楽しんでいただける花壇となりました。

残念なことに造園屋さんは廃業。

次を探すのに院長東奔西走。

庭師業が得意な造園屋さんだと、選定は上手いのですが花の選別がちょっと…

お花は植えるけれどメンテナンスはちょっと…

自分が造園屋に弟子入りか専門学校入学するかとまで考えたほど。

なかなか決まらない中、ついに素敵なお花屋さんに出会いました。

 

色とりどりの可愛いお花たちです。

前任の造園屋さんとはまた違うテイスト。

メルヘンの世界です。

 

さて、これらのお花のメンテナンスはプロに任せるにしても、日々の水やりは必要です。

昨年までは、スタッフもしくは院長が時々…みたいなやり方でした。

今年は例年以上にすでに猛暑。

お花を植え終わった後に、お花屋さんから水やりの依頼と注意が来ました。

 

1.朝9時までと日没後にたっぷりと水やりをする。

2.ホースの水の勢いは強いと植えたての苗は痛むので弱く。

3.根元に向かって3秒くらい。

 

2と3については初めて知った事項。

なるほど~

ガッテン!承知しました!

今期より院長、水やり係となります!

 

といわけで、毎日任務を遂行しています。

毎日毎日水やりをしていると、面倒よりも、私がお世話しなきゃ!という愛情が湧いてきます。

息子たちの食事の必要がなくなった代わりに、植物たちの食事(水)を与えています。

毎日見ていると、日々の変化も気が付きます。

花が咲いた、散った。

虫が喰った?などなど。

一部開院当初の木は残してあるのですが、その一つに『長男の木』があります。

地方病院にいたころに生まれた長男は記念植樹をいただき、わずか30センチに満たなかった木は3M近くに育っています。

冬になると枯れかけて冷や冷やするのですが、春になると緑の新芽を出します。

長男は滅多に帰ってきませんが、何も文句も言わずすくすく育つ長男の木に水をやりながら1日に2回長男のことを想います。

 

緑は目に良いと言われます。

緑色は可視光線の中間波長なので、目への刺激が少ないからではないかと考えられています。

木や森など緑色のものは、大抵は遠くのものなので、毛様体筋(ピント調節をする筋肉)の緊張が取れリラックスす効果もあります。

色彩心理学でも緑色はリラックス効果があると言われています。

 

実家には日本庭や畑があります。

子供の頃、夏の夕方になると父に水撒きをするように言われるのが嫌でした。

渋々やっていたお手伝い。

何でやるのか?意味も分からず、知ろうともせず、植物に愛着もないままの水撒きでした。

 

人生折り返しをとっくに過ぎ、この変化は何?

植物であれ、毎日手間をかけることでその愛情は更に深くなっていくことにやっと気づいたオバサン(院長)です。

 

出張の日も早起きして水やり、遅く帰っても水やり。

雨の日はたくさん降ってくれるよう願います。

 

通りがかりの人と朝の挨拶。

『頑張ってるね~』

『気持ちいいね~』

目出し帽のような黒色パーカーの怪しげな水やりオバサン。

見破られている?!

 

 

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2025.6.17 運転外来体験する

視野画像学会でのもう一つの体験。

 

東京に続いて、神戸・新潟・名古屋でも眼科における『運転外来』が開設されています。

名古屋では、名古屋市立大学医学部付属東部医療センターで開設(紹介状予約必須)。

この『運転外来』は、緑内障や網膜色素変性症、脳血管障害により視野異常のある人の運転リスクを適切に評価し、自身の運転リスクを把握してもらうことが目的。

市街地や住宅地の運転を疑似体験できるドライビングシュミレーター(DS)という装置を使います。

運転外来で使用するDSには、視線計測機能がついており運転中の目線を追跡・解析できます。

 

数年前もDSを体験した院長。

運転外来が名古屋に開設されたこともあり、患者さんを紹介する前に再度体験することに。

 

前回は、健常者としてのDSの体験。

今回は…

『どんな視野・病気の体験をしましょうか?』と担当の人(学会なのでDSの会社の人が対応)。

1.上方視野障害」(緑内障後期)

2.下方視野障害(緑内障初期だが実際に事故を起こした事例)

3.軽度の上方障害(緑内障初期)

4.左半盲(脳梗塞)

5.高度の求心性視野狭窄(中心だけがみえている・網膜色素変性症の進行例)

院長は2を選択。

視野を見て、眼科医としての闘志が。

『絶対に事故らない!』

 

DSの運転は直進のみ。

アクセルとブレーキのみの操作です。

歩行者やバイク・自動車などが飛び出してきたり、思わぬ方向から接近してきたり。

状況に注意して運転しないと。

 

スタート!

最初から覚悟はしていましたが、下方のもやもやが気になります。

黒っぽい、薄く透けたような雲。

これが視野障害です。

下方が見えにくいので、つい下方に注意が集中。

とはいえ、上方の信号も見落とせません。

 

慎重になりすぎて、飛び出してくるかも?と思うと、早めにブレーキを踏み、ずいぶん手前で停止することも度々。

バイクがスッと通り抜けるときもヒヤリ。

片道1車線の狭い道路では、対向車の左折も突然のように感じられ怖い思いも。

 

終了!

緊張続きで汗びっしょり。

疲れた~。

幸い事故は起きませんでしたが、終了後に視線の追跡結果を見てびっくり。

下方が見えにくいため視線が下前方にばかり集中しており、左右への目線の動きが非常に少なくなっていました。

 

安全な運転には、目線を上下左右(特に左右)動かすことがとても大切です。

警察官の視線追跡をすると、目の動き(視線の広がり)が大きいことが分かっています。

高齢になると、視野の中心にしか目線が行かなくなり、目の動きが小さくなる傾向があります。

 

院長も体験して、意識してもっと目線を動かすようにすれば、安全に運転できるのだとわかりました。

 

視野障害があっても運転したい患者さんには、日頃当院でもお話をしています。

運転外来でDSを体験することも運転リスクを正しく知ることも安全に運転するために意義のあることです。

 

さて、今回の学会は大宮で開催。

せっかくなので、新幹線でひと駅先の小山(栃木県)で下車。

目の神様『妙建寺』へ。

目的地が近づいてきた頃、『眼科』と書かれた看板が目に飛び込んできました。

え~?目の神様の隣に眼科?

『なかなか治らないから、隣でも願掛けしてください』って患者さんに言われたりして…

と妄想しながら近づいてみると…

『○○』…全然違う!

目の錯覚にしても脳の誤認識ひどすぎ~!

勘違いも甚だしい…

 

 

しっかりお参り。

いつもながらの願掛け。

 

帰りは両毛線で大宮へ。

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2025.5.27  紫外線は目にも…

学校検診・視力検査も始まり、受診のお勧め用紙を手に来院される患者さんも多くなっています。

視力の他に保護者からの質問が色々。

年の功?性格?質問には即答の院長です。

直球で答えることが多いのですが、人によっては変化球で返すことも。

 

薫風の季節、爽やかどころか急に暑くなり、紫外線に関連する質問もいくつか。

 

紫外線被ばくによる眼障害は急性と慢性があります。

急性とは急に起こるもので、屋外活動後の結膜充血や角膜炎です。

有名なのは雪山での『雪目』、ゴーグルなしでスキーをしていると紫外線による角膜炎が起こります。

その夜から翌日、角膜炎による激痛が起こり眼科受診することになります。

南方のビーチなどでもサングラスなしだと数時間で角膜炎が起こることがあります。

 

少年野球やサッカーなどで一日屋外活動をすると充血するのは、目の日焼けです。

翌日には治癒軽減していることが多いので、目が日焼けをしている自覚はないかもしれません。

しかし、この繰り返しで慢性障害である瞼裂斑(けんれつはん)を発症しやすくなります。

瞼裂斑は、角膜(茶目)の水平方向の結膜(白目)が盛り上がり充血したものです。

同年齢の児童を対象に、沖縄県と石川県で瞼裂班の発症率を調べたところ、沖縄県での発症率が高かったという報告もあります。

 

さらに、紫外線は白内障のリスクを高めます。

加齢により紫外線を浴びる量は当然多くなりますが、紫外線被ばくにより特徴的な白内障のタイプもあります。

高温環境もリスク有とされており、高温下での屋外作業やスポーツ下でのサングラス着用はぜひ。

 

眼の紫外線対策として

*紫外線カット機能付きコンタクトレンズ

まぶしさを自覚しなくても、太陽が高い時間帯では

*帽子(UVカット率約50%)

*眼鏡(同70~90%)

*眼鏡と帽子との併用(95%程度)

*サングラス(90~95%)

の併用もお勧めです。

 

紫外線はお肌に悪い…なんてことも知らずに、沖縄のビーチで日焼けオイル(ココナッツの香り)を塗りたくって小麦色に焼いていた大学生の頃。

化粧品のキャンペーンガールも憧れの小麦色の肌(昭和)。

 

眼科医になり、暗室での診療のため日中紫外線を浴びることが激減。

紫外線による眼障害の患者さんには多く遭遇。

お肌のみならず目の紫外線障害について、患者さんにお話ししています。

 

今年のA小学校での検診。

新任の養護教諭と挨拶。

あれ?どこかで見たことがあるような…

『先生、お久しぶりです。B小学校に居た…○○(旧姓)です』

『え~○○先生!?お久しぶり~!何年振り?』

『B小学校に赴任した時から17年になります』

『え~!』(の連続)

目の前のC先生が一気に17年前の○○先生に。

新卒のC先生は、当時マンモス校のB小学校養護教諭No2(2人体制)として赴任。

一生懸命仕事を覚えている姿、それに伴う成長を検診や学校保健委員会の時に嬉しく眺めていたものです。

まだお姉さんのようだった可愛いC先生もベテランの域。

今では3児の母だそう。

B小学校でお世話になっていた我が息子たちのことも覚えてくださっていました。

息子たちがもう社会人。

C先生も3児の母。

月日の速さを感じます。

『育休明けの赴任先の学校医が公センセで安心しました』

『私も嬉し~』

長く学校医をしていると、先生たちとの出会い・別れそして再会も。

 

『先生、変わらないですね~』

お気遣いに感謝。

また誰かに言ってもらえるよう紫外線対策に励みます。

 

敦煌特産の水晶石眼鏡

 

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2025.4.15  運転外来

緑内障が専門(博士論文は緑内障)なので、地域のかかりつけ医でありながら、緑内障の患者さんは経年的に増加していきます。

長い人は、大学病院時代から30年以上。

開業して以来ずっと経過を診ている患者さんも多く、一生のお付き合いそのものです。

 

緑内障は、目の神経が主に眼圧によって傷つき、その結果視野欠損や視力障害が生じる病気です。

日本人の40歳以上では約20人に1人が緑内障という疫学調査の結果を見れば、40歳になれば一度緑内障の検査を受けたほうが良いです。

特に強度近視や家族歴ありの場合はリスクファクターです。

機器の進歩により、ごく早期の緑内障や緑内障グレーの状態も発見診断することが出来るようになりました。

 

中期・後期で診断、もしくは中期・後期になってくると、視野検査でも自覚するような視野欠損が出てきます。

視野検査では見えない部分は黒くなりますが、実際には、視野欠損はその部分が黒く見えるのではなく、なんとなくぼやけたように見えるのです。

しかも、片眼で見えない部分があっても、もう片眼で見えると、脳が処理して両眼では視野欠損がないように見えてしまいます。

このため、片眼が悪くても気が付かないことが多いのです。

 

中期・後期でも視力は保たれていることが多いので、自動車の運転をされる人がほとんどです。

眼科医としては、視野も重視し、運転時の注意すべき箇所をお話ししたり、時には返納を勧めます。

見えていると思っているけれど、意外と車を擦ったり、ひやりとした経験をしたりすることは多いようです。

 

緑内障で上方視野欠損があると、信号の見落とし特に近い距離で交差点が連続してある場合、向こう側の信号を見ていて手前を見落とすなどの危険があります。

また外側に欠損が及ぶと、飛び出しに対応できない場合もあります。

下方視野障害は、手元のメーターなどがすぐに見えない場合があります。

 

網膜色素変性症という病気は暗いところで見にくくなる病気ですが、徐々に周辺から視野が狭くなっていきます。

視力が良い場合、周辺の視野の狭まりに気づかないことが多く、脇からの飛び出しや変化に対応できなくなります。

 

脳梗塞など脳の病気、脳腫瘍などの病気でも視野に影響を及ぼすことがあります。

 

運転免許は視力だけで更新できるので、視野は不問にされています(特別な場合を除く)。

 

普段の診療では、視野欠損が運転に支障を及ぼす可能性のある患者さんには随時お話をしています。

 

そして…ついに名古屋市立大学付属東部医療センター眼科でも運転外来が始まりました。

全国4番目、東海地方初です。

緑内障などで視野に異常がある人の運転能力をドライビングシュミレーター(模擬運転装置)を使用。して判断できるようになりました。

 

車を発進すると、交差点や信号があったり、車や人が横から出てきたりなどいろんな場面に出くわします。

運転中どこに視線が向いているかを追跡記録されます。

その結果から医師が運転時に気を付けるべき具体的なアドバイスをします。

 

疑似体験はすでに昨年の学会で院長も体験。

今年の学会でも再体験を申し込みました。

視力視野が正常でも加齢による変化はあるはず。

体力知力気力に自信があるつもりの院長でも、あくまで同年代に比べて…と戒めも必要。

運転能力も然り、病気があればなおさら。

自分の視野と運転能力の関係を理解するために運転外来は有用と考えます。

 

運転外来は主治医の紹介状が必要です。

 

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2024.6.11  運転止める?続ける?

砂嵐の運転

 

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2025.4.1  頑張ったら …

先日Aさんの結膜炎の治療が終了。

『今回はこれでおしまいです。また、何かあったら来てください』治療終了の際のいつもの台詞。

『あの…私、どうしても先生に言おうと思っていたことがあるんです…』

え?!何々、この改まった雰囲気?!

『息子のT、覚えてみえますか?』

Tくん、もちろん!

中学受験して進学したところまでは覚えています(それ以降は受診なし)。

『何かありましたか?』

『実は…』

T君は、学校の色覚検査で受診勧告され、当院で再検査して確定した。

その際、色覚特性の話や、進路就職の選択可能性の話などAさん(母)とT君に話をしました。

『あの時の言葉に支えられて、進路を考えました。楽器を弾くのが好きだったので、そちらの方向に進み、今では音楽家になりました。

きちんと説明してくださって感謝しています。いつかお礼を言わないとと思っていました』

今回の結膜炎での来院がお礼のチャンスと思われたそう。

『Tももう30超えたんですよ』

年月が流れるのは早い。

『検索してみてください』の言葉に、立派な音楽家のT君が現れました。

 

T君の話を聞きつつ、院長脳内検索エンジンがかかっています。

『T君、妹さんいらっしゃいましたよね?』

『はい』

『Mちゃん?!』

『そうです、先生すごい!』

Mちゃんは、心因性視力障害でみていました。

心因性視力障害とは、目に異常がなくても、視力が低下したり変動が起こります。

また、特有の視野障害を起こすこともあります。

病名の通り、心因性で、家庭内(兄弟姉妹との関係など)、習い事、友人関係などが原因の場合と、眼鏡に憧れる眼鏡願望の場合があります。

気のせい…にしてしまわず、しっかりと子供の声を聴くことが大事です。

院長自身、偉そうに言いながら、子供にちゃんと向き合えなかった母親だった自戒を込めて、小さな患者さんに接しています。

Mちゃんは、小学校には馴染めなかったけれど、新しい目標に向かって中学受験に臨みました。

いつの間にか、視力も回復。

自身も心因性視力障害の勉強をさせてもらった患者さんです。

『Mちゃん、今は?』

『SEとしてIT企業で働いています』

T君、Mちゃん、二人とも立派な社会人になって院長感涙ものです。

 

その日一番のプレゼントでした。

 

最近は記憶する必要性がどんどん減っています。

カルテも名前や番号で検索すれば、すぐに病名も内容も見ることが出来ます。

しかし、検索してもわからないことがあります。

それが、患者さんとのエピソードです。

簡単なエピソードはカルテに記載しますが、もっと深い話や診療とは関係ないここだけ(診察室)のエピソードは、院長の脳内のみです。

それでも、何か関連ワードから脳内検索すると、不思議に出てきます。

さらに、その家族までが…芋づる式に出てきます。

脳内検索処理能力、捨てたもんじゃなさそう。

 

こういうことを言うと、息子たちから『デジタル処理能力は低いことも自覚しないと!』と厳しい言葉。

先日も新幹線をネットで購入したら、ICカードに紐づけすることを知らなかった院長。

『そのまま行っても、改札でひっかかってた』息子があきれながらも紐付けしてくれました。

ご時世的には、デジタル処理脳能力向上しないと!

 

とはいうものの、無機質なデジタル検索能力より、脳内検索のほうが、名前からモノクロ画像・思い出、まつわる暖かみと広がりをもたらしてくれます。

院長脳内の患者さんデータは門外不出であり、宝物です。

頑張ったら飛べなくても翔べる!

 

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『色覚検査希望』で来院した大学生のX君。

現在は、小学校中学校で任意の色覚検査のお知らせを出しています。

院長子供時代は小学4年生で全員色覚検査を受けました。

今では、任意、希望者のみです。

 

まず、診察室で色覚検査を希望する理由を聞きます。

X君は某鉄道会社の説明会にて、簡易検査で異常ありと指摘されたそうです。

 

眼には赤・緑・青を感じる視神経細胞があります。

この三色の見分け方が弱い場合、色覚異常とされます。

赤と緑が同色に見える場合は非常に少ないです。

(昔、院長の愛読少女漫画では、色覚異常はこのように描写されていました)

例えば暗めの赤と暗めの緑など、同じ色でも色自体の明度や周辺の明るさによって見分けが困難になることがあります。

つまり似たような色の仲間に見えてしまいます。

学校や眼科で行う色覚検査は、まず異常の有無です(疑い含む)。

更に色相配列検査をし、タイプを分けます。

ここまでで、色覚異常の診断と説明は出来ますが、程度を判定する(希望なら)には、特別な機器がある病院を紹介します。

 

色覚異常が分かったところで治療法はありません。

まずは、今まで日常生活に支障を感じたことがないか。

あるならどんな状況で?

自分の色の特性を理解し、気を付けるべきこと(迷ったら明るいところで見る。この色とこの色の組み合わせは注意。触ったり周囲の状況もみて色間違いを防ぐなど)を話します。

一般に日常生活に大きな支障がある人は稀です。

自動車運転免許も取得可能です。

 

職業の選択は以前よりもかなり門戸が広がりました。

これは、院長よりももっと先輩眼科医たちの働きかけの賜物です。

しかし、鉄道運転士やデザイン・色に関わる仕事はまだまだ門戸が閉ざされています。

 

X君は運転士希望でした。

『頑張ってもなれないんですね…』

色覚異常について説明しましたが、励ましも届かないくらい落胆していました。

運転士にはなれなくても、きっとX君に合う仕事があるはず。

そう願わずにいられません。

 

色覚異常は男子の約20人に1人、女子の約500人に1人です。

色覚異常の生徒の約半数は、検査を受けるまで自覚がありません(日本眼科医会調査)。

異常のタイプや程度により、一部の仕事に支障を来たすことがあります。

進路を決める前に、自身の色覚特性を知っておいた方がいいでしょう。

 

学校で受け忘れても眼科でいつでも受けることが出来ます。

先天性の場合、一生変わらないので、検査は一度診断も一度です。

 

この年になると、頑張ってもできないことがいかに多いか知っています。

頑張る前に身体特性(色覚も含む)や知的能力で不可能なこともたくさんあります。

努力で補える範囲の自分の強みで生きていくしかない、と思います。

もっと違う可能性もあるのでは?などと自分探しをした若い頃。

それでも一つのこと(眼科医)を休まず(三男出産前日まで診療、出産1週間後から再開今に至る)続けてキャリアを積み上げてきました。

地域医療のかかりつけ医として少しは貢献できていることを願います。

 

どんな仕事も社会に貢献しています。

X君ももがいて悩んで、きっと自分に合った職業が見つかることを期待しています。

 

色覚検査は随時行っています。

自分の特性を知り、その上で頑張れば掴めるもの(仕事・職業)は必ずあります!

先入観に囚われない

 

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