2021.1.26  サンギョーイ

産業医1年生の院長です。

出務日が近づくと、産業医関連の本を読み返し、前回の振り返りをして、当日のシュミレーション。

ハンドブックを持参するあたり、研修医1年目の初めての外勤(アルバイト)のよう。

外勤先で一人診療のとき『何かあったらどうしよう?』と心配が大きかったのですが、産業医1年目の今、『何かあっても、何とかなる(出来る)でしょう』の心持ちなのは、医師としての長い実務経験・知識から体得したものだと思います。

 

いつも少し早めに到着する院長。

職場のスーパーをひととおり、お客として巡回します。

広くてきれいな店内です。

お値打ち品も多々。

インフォメーションコーナーで取り次ぐように言われています。

『あの~本日〇時に〇店長さんとお約束した産業医の長谷川ですが…』

担当のオバサン(院長と同年代)は、声をかけてきたオバサン(院長)を見て『少々お待ちください』

早速、内線電話をかけ始めました。

『サンギョーイのハセガワさんが店長に面会です』おそらく事務所とのやり取り。

しばし、傍で直立不動の院長。

『え~!?センセイなの?わかりました』

きちんとした身だしなみの正体不明なオバサン(院長)は、『サンギョーイ』という意味不明な会社?の営業ではなくて『産業医』だったのね~

やっと漢字変換できた!って顔で『今、事務の者が来ます』

 

安全衛生委員会の議事についての質疑や、健康診断結果の精密検査のフィードバック、従業員の健康管理など色々チェックします。

店長さんだけでなく、事務やそのほかの業種からの相談も受け付けます。

 

職場巡視も毎回。

惣菜コーナーでは、揚げ物を調理するので、床が油で滑りやすくなります。

滑り防止のついた長靴を履いての作業です。

掃除はしていても、床は滑りやすいので、マットが敷いてあるとのこと。

薄くてテロテロなので、もう少し厚めのほうがいいかも…

新品をみせてもらうと、結構しっかりしています。

使い捨てなので毎日替えるルールを徹底してから、マットの種類を変更するか考えることに。

 

大量の揚げ物をするので、油が飛びます。

『コロッケはまだいいけれど、唐揚げは皮や脂身からずいぶん油跳ねがくるんですよ~』とパートのオバサン(アラカン)。

コロッケの時は、指が油面に触るくらいまで近づけて落とすと油跳ねが少ないという秘訣も。

主婦でもあるオバサン(院長)としては、その技に驚嘆!

しかし、オバサン(パートさん)の肘から下は腕まくり状態。

『肌に油跳ねしませんか?』

『そうなのよ~』と、見せてくれたのは、小さないくつかのシミ。

勲章?の火傷跡。

『袖おろしたほうがいいのでは…』

『そんなことしていたら、他の事しにくいし、面倒だし…だもんで、揚げるのは若い子にはさせられへんわ~私らみたいな年ならいいけどね~』

『よくない!よくないですよ!』とオバサン(院長)。

実は、使い捨てアームカバーは常備されていました。

ナイロン製なので、毎回使用してみて、油温に耐えないようなら、材質を検討することにしました。

 

眼科診療をしていると、鉄の研磨で鉄片が目に入ったとか、溶接焼けで目が痛くなった患者さんが来られます。

職場で、防護眼鏡やシールドを義務付けれているにも関わらず、面倒でつい装用していなかった…とうパターンがほとんどです。

 

今回も、職場のルールはありましたが、現場で徹底されていなかったようです。

 

帰宅後、職場巡視報告書を書き上げます。

良好な点も改善すべき点も指摘。

今回の業務も何とか無事終了です。

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事 産業医

2021.1.19  ぬくもりは伝わる

とても寒くて雪が降りそうな午後、往診に向かいました。

本日は70代後半Aさん(男性)宅。

半身まひで通院困難になったため、緑内障継続治療の依頼です。

Aさんとは、1年ほどのお付き合い?があるのですが、寡黙な方なので、ほとんど私生活は謎です。

部屋の調度品や、机の本から、以前は会社の経営者だったよう(推測)。

『こんにちは』と声をかけて、スタッフと二人で部屋に入ります。

 

『あれ?先月より少し痩せられた?』と思いつつ、いつも通りの手順で診察。

『目、お変わりないですよ。眼圧も落ち着いていますよ』

『そう。良かった。今日は、先生の指、冷たかったね~』

『え!?あっ!?すみません、失礼しました!』

 

学生時代の病院実習の時、教わったこと。

患者さんを診察(触診)するときは、手を温めておくように。

この一言は、医師になってからもずっと守っていることです。

眼科医なので、患者さんの体(お腹や胸・背中など)に触れることはないですが、眼(まぶた)は毎回。

診察の前には、手指の曲げ伸ばしやこすり合わせをして、指先の体温を上げておくのは習慣になっています。

その日も、指先をこすり合わせていたはずなのですが…

 

『今日は、本当に寒いんだね。先生の指から感じたよ』とAさん。

それから、癌で数年前に亡くなった奥様のこと、静かだったお正月、1週間前に吐血してずっと絶食だったこと…など、ぽつりぽつりと話してくださいました。

患者さんの病気に関連することは、尋ねますが、プライベートのことや世間話的なことは、患者さんからお話しされれば聞きます。

 

Aさんとの距離がぐっと近づいたように思いました。

 

医師としての手指は、診療のためだけでなく、患者さんと心を通じさせる大事なツールであることを再認識。

ぬくもりは伝わります。

通じます。

 

『おねえちゃん、診察代は、そこの机にあるから』

院長と同年代の同行Bスタッフのことを、いつも『おねえちゃん』と呼ぶA さん。

Bスタッフも手慣れた様子で『はい、確認しますね~』

 

外はますます冷え込んできました。

『なんか今日、良かったですね~』とBスタッフ。

心にはぬくもりをもらい、帰途につきました。

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2021.1.12 煮詰める・煮詰まる

当院の鏡開きは、今年も院長自作のぜんざいで。

スタッフみんなで楽しみました。

手前味噌ですが、じっくりと煮えた小豆そのものの味が生きている!が売りのぜんざいです。

お餅との相性は抜群!

開業以来、他人様に唯一お披露目できる一品になっています。

 

『いつも手間暇ありがとうございます』『美味しかったです!』『ごちそうさまでした!』などなどの声が院長へのお年玉。

 

昨年はYouTubeを見る機会が多く、ぜんざいも炊飯器や圧力鍋で作れるレシピを知りました。

『放ったらかし』がキーワード。

確かに手間は格段に少ないのです。

 

従来(院長)のやり方だと…

十勝小豆のより分け(形が不ぞろいなのは取り除く)

浸水(一晩以上)し、浮いた小豆は取り除く

1回目に、豆のしみ込みがよくなり皮も破れにくくなるように、びっくり水(冷水)を入れて温度を下げ、再び沸騰してから弱火で煮る

ざるにあげ、流水で洗い、あく抜きをする

再び、新しい水を入れ30分くらい煮る

小豆の柔らかさを確認、砂糖を入れる

甘味が小豆になじむよう、人肌まで冷ます

豆が柔らかくなるまで煮る

仕上げに塩ひとつまみ

 

書き出すと結構な手間だと思いますが、結局、今年も従来の方法で作りました。

 

普段の院長の生活は、常に、時間との勝負で過ごしてきました。

今もそう。

育児がなくなり、家事も減り…それでも、分単位で計算して行動する癖は抜けません。

自分の優先しなければいけないこと、したいことを上位にしたら、あとはいかに時短・手抜きをするか。

なのに…ぜんざいです。

どうして小豆は煮るのか…小豆缶で代用しないのか…

スタッフの期待もありますが、小豆を煮る行為が好きと言うことが大きい。

小豆を煮る一連の行為は、自分にとってのカタルシスになっているのではないかと思います。

小豆のことだけを考えて、無心に、作業をする。

柔らかな炎のぬくもりと、静けさの中の小さなぐつぐつ音。

優しい甘さのぜんざいの出来上がりとともに、自身の心も落ち着いていきます。

ぜんざいセラピーと名付けてもいいような…

 

この法則?を見つけ、先日『タルトタタン』にも挑戦してみました。

『タルトタタン』とは、フランスのタタン姉妹のアクシデントから生まれたお菓子です。

リンゴのパイを作るのに、間違えてタルト生地を敷かずにオーブンへ。

焦げるような匂いに気づき、慌ててタルト生地をかぶせて焼いたところ、美味しいタルトになっていたという逸話があります。

この話を知ったのは、高校生の頃読んだ洋菓子の由来の本から。

想像は膨らみましたが、岐阜はおろか、名古屋でも食べられるお店はありませんでした。

5年ほど前、ピカソやヘミングウエイが集ったパリのカフェ『ドゥ マゴ』の伝統を受け継ぐカフェが渋谷にあり、創業当時からの『タルトタタン』が名物であることを知りました。

思い立ったら…の院長。

プロが作る本物の味に30年以上の時を経て出会いました。

 

砂糖と無塩バターでキャラメルを作ります。

8等分にし砂糖をまぶしたリンゴを投入して、キャラメルと和えます。

あとは、ぐつぐつ煮ます。

汁気がなくなったら、冷まして、パイシートをかぶせてオーブンへ。

見た目はいまいちですが、やや焦げたキャラメルがマゴで食べた味に近いように思いました。

 

火にかけて煮詰めることで、自身の頭も煮詰まる(まとまる・終局に向かう)ことがこの年になってやっとわかってきました。

一年に何回か、自分に必要な時間です。

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2021.1.5   当たり!当たる!?

『長谷川さん、お待ちしていました!』

年末、ジムの受付で検温してもらう際、スタッフのお兄さんの言葉。

『ん?何かありました?』

『当たりましたよ!クリスマスプレゼント!』

12月に入り、ジムではクリスマス抽選会と称し、①~⑥までの景品の中から、希望の品を書いて応募箱に入れることができました。

マッサージボールとか腹筋ローラーとかプロテインとか…筋トレ関連用品です。

当たるわけないけど…と思いつつも応募する院長(私)。

景品番号①のバランスボール。

何と当選。

『おめでとうございまーす』(もう一人のスタッフと一緒に拍手あり)

その場で開けてみると『あれ?思ったより小さい』

景品の名前は、①ミニバランスボールでした。

ミニだったのね~ミニを見落としていた。

でも、『当たった』のはすごい!

小学生の時に、懸賞でミロ(麦芽飲料)のピクニックシートが『当たった』以来の快挙です。

 

 

嬉しいクリスマスプレゼントに、2020年他に『当たった』ことを思い返してみると…

当たっていました!

自動車に。

昨年のお出かけは、自転車で近場散策程度。

ある日、車の進行と逆方向に歩道を自転車で走っていたら…

向かって右側の細い道から車が左折しようと出てきました。

私のこと見えてるよね?と思い、進むと、車も出てきて、自転車ごと左側に転倒寸前に。

幸い自転車を支えた足は少々痛かったものの、体に異常はなく、その足で自転車の修理に向かったのでした。

前輪・ペダル取り換えと、思った以上に愛車(自転車)はダメージを受けていましたが。

この『当たり』で学んだことは、車は自分(自転車・歩行者)を見ていないものと思うこと。

弱者を優先というものの、事故に遭わないに越したことはないので、相手(自動車)に期待しないで自分が細心の注意を払うこと。

人間関係にも当てはまるような…

 

 

他に当たりがあったか…と考えているうちに、『当たる』ひとには結構当たっているという事実。

眼に何かが当たったひと(患者さん)が来院されます。

学生で多いのは、体育や部活でのボールが当たった・授業や休憩時間にひとの手や足・文房具などが当たった。

最近はめっきり減りましたが、若者(時におじさん)のけんか、夫の手が当たった(というより殴られた)。

寝ながらスマホを上にあげて見ていたら、手が滑って目に当たった患者さんは、増えてきています(寝たばこならぬ寝スマホ注意)。

どんなもの(大きさや形状)がどのくらいの距離でどんな風に当たったか、を聞き診察することは眼科医にとってとても重要です。

患者さんの話と、見た目、細隙灯顕微鏡や眼底検査での所見とが一致していれば問題なく、診断・治療を開始しますが、そうでない場合も時にあります。

 

アラサー女性は、最初、『物が当たった』との訴え。

白目は出血しており、角膜には爪の先と思われる形が。

どんなふうに当たったのか尋ねると『飛んできたんです』

この所見で、何が飛んできた?と再度聞くと、しばし沈黙。

所見を話し、物にしては説明がつかない旨・本当のことを言ってほしい旨を伝えます。

『冗談だと思うんですけど…目の前でデコピンされました。彼氏に』

眼を開けているときに、指で目を弾いたのなら、所見と見事一致します。

幸い、視力に影響なく完治しました。

『正直に話してくれてありがとう。幸い、問題なく治ったけれど、冗談でする行為ではないと思う。二人の関係を見直してもいいかも』

おせっかいオバサン院長は、診療とは関係ない余計な一言まで…

 

ミニバランスボールと言えども、バランスを取るのは難しい。

人生もバランスボールの上に乗っている…

ゆらゆら揺れながら、思いを巡らす新年です。

 

今年もよろしくお願いいたします。

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