2026.10.27 見えない知らない人と話す

某新聞に外国人がどのように日本語を学んだかという記事がありました。

 

スーダン出身1978年生まれの研究者。

新聞によると、12歳で視力を失い、19歳で来日。

盲学校で鍼灸を学んだあと、東京外語大に進学、研究者に。

今はS製薬に在籍。

 

特記すべきは、その人が視覚障害者だったこと。

そしてS製薬は、眼科と親しい会社。

 

読み進めていくうちにモハメド・アブディンさんに会ってみたい!話したい!という思いがふつふつと。

いつもの好奇心。

S製薬にその旨を連絡してみました。

早速WEBで対談出来ることに。

 

WEBの向こうは、新聞に載っていた通りの優しい顔。

流ちょうな日本語で『初めまして、お会い出来て光栄です』

『アブディン モハメドさん、初めまして。何とお呼びしたらよいでしょう?苗字のモハメドさんでよろしいでしょうか?』

『苗字はないんです。アブディンが名前で、モハメドはお祖父さんの名前です』

初っ端から豆知識、なるほど。

 

院長のインタビュー形式で話が始まりました。

ちなみにスーダンはエジプトの下。

日本では、内戦くらいしか聞きませんが、一応下調べを。

 

元々夜良く見えず、視野も狭かったそう。

小学校時代も、黒板は眼鏡をかけても見えなかった。

両親がお金を貯めて当時有名なバロセロナ(スペイン)の病院を受診したが、12歳には見えなくなった。

聞いて覚える学習方法、試験は口頭で大学に入学。法学を専攻。

19歳時、国際視覚援護協会により鍼灸師を目指して来日。

初めて点字を知ったそう。

(実際にはアラビア語の点字・英語点字もあり、日本語点字と大きく変わらないらしい)

その後、東京外語大で国際関係を学び博士号を取得。

今はS製薬に在籍(S製薬は創薬製薬だけでなく、ビジョンケア全般に大きく関わっていました)。

 

才能もあり努力もあり、本当に素晴らしい人です。

 

外国語とりわけ日本語学習においては、まずは必要に迫られその環境にどっぷりつかること。

分からなければ周りに聞く。周辺の言葉もついでに覚える。

点字の本やオーディオ、ラジオなどから聞いて覚える。

ここでネットよりラジオがいいのは、自分の選んだ情報だけに偏らず語彙も世界も広がる。

(これは、新聞にも当てはまることと院長も同意)

漢字の勉強も、ある音にはどんな意味があるか、音読み訓読みを覚えた。

だから長谷川先生は、『長い谷の三本川の川ですね』と言えたりする(びっくり!)

 

中国語の上達はなかなかだし…

英語もパッとしないな…何て言っている場合ではありません。

 

3年前からスーダンは激しい内戦に陥り、1200万人の難民・国内避難民が流出している状況だそうです。

アブディンさんは、スーダンの視覚障碍者の教育をライフワークにされています。

日本と比較すれば、かなり医療事情も良くありません。

日本のようにいつでもどこでも誰でも医療にアクセス出来るのは夢のようで、最低限の医療サービスの実現が望まれています。

 

パソコン音声で院長のHP/ブログの感想も送ってくださったアブディンさん。

 

非常に有意義な対談でした。

そしてスーダンは大いに関心を持つ国のひとつとなりました。

世界は広い。

知らないことをまた一つ知った。

アブディンさんとの出会いに感謝です。

 

S製薬より:ちなみにアブディンさんにアクセスした眼科医は初めてとのこと。

スーダンはエジプトの下(南)に位置します。

こちらもご覧ください

→2023.5.16 チームドクターは広報でもある

→2020.3.17 全盲デュオの演奏会

→2015.12.8 盲目の人々・最後に見たもの・海を見る

→2015.6.2 目の見えない人は…

 

*11月3日公センセの部屋はお休みです。

 

 

 

 

カテゴリー:クリニックに関すること 健康 眼に関すること

2021.10.26 恋です!変です?

「恋です!」

10月から始まったラブコメディードラマ。

新聞番組欄の案内に惹かれ、見ることに。

 

弱視で盲学校に通う主人公ユキコと純粋(かつ短思考)なヤンキー少年・森生が出合い、それぞれを理解しあい、惹かれあっていくというストーリー。

 

白杖を持ち、点字ブロックを歩いているユキコ。

ある日、ユキコの進行先の点字ブロック上に座って、他のヤンキー達とたむろしていた森生。

ユキコの白杖が森生に当たったことが出会い。

恋の始まりです。

 

あり得ない設定ではありますが、若い二人のラブコメディは、『視覚障害』というハンディも、重くならず。

 

弱視と言っても、盲学校に通うレベルになると、視覚障害者認定を受けているはずです。

私たち眼科医(障害者認定資格要)は、認定のための申請用の診断書を書きます。

数年後に変化する病気(回復もしくは悪化)なら、〇年後に再申請が必要になります。

全盲の場合は、等級が変わることはありません。

 

名古屋市では、小学校により弱視学級が設けられており、院長の受け持ちの小学校の一つでは、数年前まで開級されていました。

盲学校まで行くほどでもないけれど、教科によっては、特別な配慮が必要な場合です。

年一回、生徒の現状について、教育委員会・盲学校・弱視学級併設学校関係者(教師・眼科医)で会議が開かれます。

弱視学級は、該当者がいなければ閉級になります。

 

さて、ユキコは、白杖を使い颯爽と点字ブロックを歩いていきます。

白杖は、自分の先に障害物がないかを確認するので、障害物や物の位置を把握するのに有用です。

 

携帯電話や時計は音声で。

映画も音声ガイド付きのを利用します。

目が見にくい人にとって音は大変重要です。

そのため、雑音が多いところは、聞きたい情報を取り出すのに苦労します。

 

おかずとのコントラストがはっきりする食器の色、指を切らないようガードを付けたり材料とのコントラストがはっきりしたまな板。

その他、いろいろ日常の工夫が出てきます。

 

そのような視覚障がい者あるある話は、案内人として、当事者でもあるお笑い芸人の濱田祐太郎さんが解説(ドラマにしては珍しい)してくれるのも興味深いです。

 

森生に『ユキコさんは普通ですよね。俺に比べて…』と言われ『私が普通?』と聞き返します。

森生にとっては、弱視であろうが、社会(学校)生活をきちんと送っているユキコは、まさしく普通。

二人の身長差が大きく、声が届きにくい解決策として、自分(森生)の身長を縮める方法が見つからず、ハイヒールをプレゼントしてしまう森生。

考えなしではありますが、その一途さが見ていて微笑ましいです。

 

白杖を持つことは普通じゃなくなる。

中途失明の方はそう思う人が多いです。

自分は普通じゃなくなるんだ。

でも、良くも悪くも普通って何?

 

かなり視覚障害が進んでいても、白杖を希望されない方もいます。

白杖は、進行先の障害物を予測するものでもあり、周囲に配慮を促し、自身の安全を守るものでもあります。

ドラマで使用されているものや、折りたたみもあり、状況に応じて使用することも可能です。

白杖を持つことは、視覚障がい者として自分を認めること。

白杖を持つ=障害を受容。

 

重くなりがちなテーマを、明るくコミカルな恋愛ストーリーで描いたところがすごい!

まずは、楽しみながら、興味を持ってもらえれば。

オバサン(院長)、このドラマは見逃せません。

変です?

 

こちらもご覧ください

→2018.3.13  R-1グランプリ

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2018.3.13  R-1グランプリ

一人芸(ピン芸人)で誰が一番面白いかを決める大会『R-1グランプリ』

タイトルのRは本来『落語』を意味しているそうですが、今は落語に限らず『とにかく面白い一人芸』ならOKのようです。

 

新喜劇は好きですが、漫談には疎い方。

しかし、『盲目のR-1王者』『ほぼ盲目のR-1勝者』『弱視の芸人R-1日本一』などというニュースの見出しに、職業柄、気になってしまった院長です。

 

王者の濱田祐太郎さんとは、誰?

 

吉本興業所属の28歳の芸人さんです。

視覚特別支援学校を卒業。

吉本総合芸能学院(NSC)35期。

同期は、ゆりやんレトリィバァ。

 

両眼では全く見えないわけではない(左全盲、右明暗のみ判別のよう)ので、眼科的には、盲目ではなく『弱視』になります。

しかし、生活するには、不十分な視力であり、本人も白杖を使って生活、舞台へも立たれています。

 

視力障害の原因は『先天性緑内障』とのこと。

高い眼圧によって眼球が拡大し、流涙や羞明、眼瞼けいれん、角膜(黒目)の濁り、牛眼(黒目が大きくなる)などの症状が現れます。

手術が第1選択です。

適切な治療をしても、視力障害を伴うことが多く、生涯にわたって検査・治療が必要です。

 

患者さんはほとんど赤ちゃんなので、検査・手術は、催眠剤や全身麻酔下で行います。

第1子を産んで、大学病院復帰したときには、そういう小さな患者さんに我が子を重ねて、胸が痛みました。

 

さて、グランプリの漫談動画を見ると…

例えば、冷たいコーヒーが欲しかったのに、自販機で押して出てきたのは、熱いおしるこだった!

この暑いのに~。

でも、意外といけた。

 

駅の階段の数まで教えてくれた親切なおばちゃんが、言われた段数上がったところで『間違えた。あと5段あったわ』

(視覚障碍者の)自分にとって、その誤差は大きいけれど、おばちゃんは『サプライズや』

 

などなど、自分の視覚障害体験を基にした自虐ネタがほとんどです。

 

笑いに引き込まれつつ、眼科医としては『そうよね~』と共感と学びでした。

一般のお客さんからしたら、笑いつつも『(障害を)笑っていいの?』という思いがよぎったり、視覚障害の現実を『そうなんだ』と認識したり、と少々複雑かもしれません。

 

しかし、漫談は間違いなく面白い!

濱田さんが、笑いのバリアフリーを実現してくれることを期待しています。

 

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