2026.10.20 目の中に飼ってみる

『黒いものが飛ぶんです』

『蚊やゴミみたいなものが見えるんです』

『ミジンコみたいなのが見えるんです』

『墨を流したように見えるんです』

などなど。

 

『黒いものが飛ぶ』ことを総称して『飛蚊症(ひぶんしょう)』と言います。

蚊が飛んで見えると言う意味ですが、他のもの(上記)が見えることも多々あります。

数も1個から数個、かなり多数まで色々。

目を動かすと一緒についてくることも多いです。

 

飛蚊症は硝子体(しょうしたい)の濁りで起こります。

硝子体は目の中身を占めている透明でゼリーのようなものです。

多くは加齢により、一部が濁り、その影が目の奥(網膜)に写ることで飛蚊症を感じます。

加齢だけの場合は、目の中の濁りを取り除く必要もないのでそのまま経過を見ます。

 

注意しなければいけないのは、

網膜剥離・裂孔

ブドウ膜炎

硝子体出血など。

 

『放って置いていいですか?』

眼科医が単なる飛蚊症と診断したならば、経過観察で良いです。

自己判断は禁物。

 

その後

黒い点の数や範囲が急に増えた

暗い場所で突然稲妻のような光が見えた

急に視力が低下した

視野の一部が欠けた

などの症状が出たら、速やかに眼科へ。

単なる飛蚊症か治療しなければいけない病気かを見てもらってください。

 

『治らないですか?』

『治らないです。ただし、目の前に濁りがなければ気にならないこともあります』

『え~そんな~』

『上手く付き合って下さいね』

 

先日、心配のない飛蚊症を診断したAさんが来院。

『その後飛蚊症いかがですか?』

『私、濁りにスペクター君って名前付けたんです。ペットみたいに。あらら、またスペクター君出てきたよ、なんて…』

目からウロコ。

そんな楽しみ方があったのか!

 

以来、精密検査をして問題のない飛蚊症の患者さんには、ペットを飼うように勧めています。

 

そしたら…

先日の新聞の益田ミリさんのエッセイに飛蚊症のエッセイが。

新しいペット・突然の出会い・眼科に行って飛蚊症と言われサマーと名付けたという話。

’サマーは飽きることなくわたしに甘えてくる。

鳴きもせず静かだが、仕事中もまとわりつかれ、少しうっとおしく感じることもある。

わたしのサマーは今日も元気いっぱいで飛んでいる。

いつも一緒だ。

目を閉じても動いている(院長注:これは脳で感じているだけだと思いますが)。

サマーよ、これから一緒に美しいものを見て生きていこうな。’(抜粋)

 

院長も近視が強く飛蚊症を自覚しています。

眼科医ゆえ目の構造を知り過ぎているので、さすがに自分の硝子体の濁りに名前は付けませんが、捉え方次第で煩わしいモノから愛しいモノに変わります。

 

現実は変えられないけれど、捉え方は変えられる。

患者さんの性格も性質も色々ですが、少しでも前向きな気持ちで帰っていただけたらと、日々診療しています。

飛蚊症を自覚しやすい青空

こちらもご覧ください

→2024.7.2  虫が飛んでる?

→2019.10.1 Optosがやって来た!

→2019.8.20 虫が飛ぶ

→2016.2.23 右目も同じ年?

 

カテゴリー:クリニックに関すること 健康 眼に関すること

2024.7.2  虫が飛んでる?

『虫みたいなものが見えるけど、手で払っても消えないんです』

『空を見たら、糸くずみたいなものが動くのが見えるんです』

『白い壁に、点々が見えるんです』

このような訴えで来院される患者さんはかなり多いです。

『何か病気ではないか?』

『網膜剥離では?』

などと心配されて来院されます。

視力や眼圧と言った一通りの検査や問診の後、両眼の瞳を開いて、目の奥を観察します(散瞳検査)。

 

瞳が開いたら、患者さんに上下左右8方向を見てもらい、院長もダイナミックに動き周辺まで観察します。

これで、病気か否かが分かります。

 

飛蚊症による病気は

1.網膜裂孔・網膜剥離

網膜(眼の奥)に穴が開いたり、そこから網膜が剥がれている状態です。

程度に応じてレーザー治療や手術を勧めます。

2.硝子体出血

眼球の中身は、硝子体というゼリーのようなもので満たされています。

糖尿病や高血圧・外傷などで眼底に出血が起こり、その血液が硝子体にも流れることで起こります。

少量の場合は自然治癒もありますが、原因を調べ手術になることもあります。

3.ぶどう膜炎

ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)に炎症が起こり、血管から硝子体に、炎症が及ぶことがあります。

入院になることが多く、炎症を抑えるために、内服や点眼薬で治療します。

 

病気でないと判断すれば、患者さんに『安心してください。心配ないです。気にしないでくださいね』とまず一言。

それから、虫みたいなものが見える(飛蚊症 ひぶんしょう)原因をお話しします。

 

光が目の奥に入っていくと、網膜で光やモノを感じます。

硝子体は透明なゼリーのような物質ですが、何らかの原因で濁りが生じると、その濁りの影が網膜に写り、目の動きとともに浮遊物のように見えます。

これが飛蚊症です。

 

原因としては、生来と加齢によるものがあります。

胎児のときの硝子体の血管の名残が、生後も残存していると飛蚊症として感じることがあります。

(一般には、眼球完成時に胎児のときの硝子体血管は消失する)

これは、健康な目でも起こる飛蚊症なので気にする必要はありません。

 

多いのは加齢によるものです。

加齢により、硝子体はゼリー状から液状に変化し収縮して網膜から剥がれます(硝子体剝離)。

また、強度近視の場合は、硝子体剥離が早期に起こり易く、若くても飛蚊症を自覚することが多くなります。

 

きちんと検査をして、異常がなければ不安になる必要はありません。

急に、いつもと違うたくさんの数の浮遊物が見えたり、視力が低下したり、見えない部分が出た場合は、すぐに検査を受けてください。

 

最近は、飛蚊症に対してのレーザー治療を行う施設もあります。

硝子体の濁りをレーザーで紛糾します。

ただし、自費診療です。

気になって仕方がないと言う人は、試してみてもいいかもしれません。

 

院長も強度近視で、時々、ミジンコみたいな浮遊物が見えます。

生理的な(病気ではない)飛蚊症だから、慣れるしかありません。

『おっ!ミジンコが出てきた、出てきた』

積極的治療(自費)を受ける気はありません。

加齢と上手くつきあう覚悟の院長です。

 

 

 

 

カテゴリー:眼に関すること

2020.3.17 全盲デュオの演奏会

全盲二人組による小さなコンサートを聴いてきました。

主催は愛知県保険医協会女性医師・歯科医師の会。

 

バイオリンは29歳の稲葉さん。

バイオリンは5歳から。

 

ピアノは37歳の国枝さん。

ピアノは7歳から。

 

二人とも『未熟児網膜症』により失明したそうです。

 

『未熟児網膜症』とは…

網膜血管(目の奥の血管)は胎齢30週で完成するのですが、未熟児で生まれて、母体から外界へと環境が急変すると、まだ若い(弱い)血管が異常に増えて、悪さをします。

治療をしても、場合により網膜剥離を起こします。

周産期医療の進歩で、超低体重児も生存率が向上していますが、重症の網膜症も増えています。

現在、小児の失明原因の1位です。

 

そして、二人は『就労継続支援B型』施設からの派遣です。

 

『就労継続支援B型』は…

年齢、体力などの面で、雇用契約を結んで働くことが困難な人が、軽作業などの就労訓練を行うことが出来る福祉サービスです。

受給者証が発行されると、作業により生産された製品やサービスの出来高に応じて工賃が支払われます(事業所による)。

得意なことを就労に生かせないか…と考えていたところ、二人の得意分野の音楽に目を付け『DUO ABBEY』というデュオを結成したそう。

 

『メヌエット』『ユーモレスク』からアラジンの主題歌『ホールニューワールド』など、全12曲。

 

稲葉さんのこだわりのせいか、バイオリンの絃の調整で、開始が遅れたり、中断することもありましたが、それは想定内のようで、ピアノの前で、稲葉さんの声がかかるまでじっと待っていた国枝さん。

バイオリン側のステップ2回が曲の開始の合図です。

 

最前席の院長は、二人の表情、指の動きをじっと見ていました。

ピアノを弾く指は、何回も鍵盤から離れるのに、一度も間違えずに指は動き、曲が続きます。

弓を弾く位置、弦を押さえる位置も、ぶれたりしません。

 

点字用の楽譜はほとんどないそうです。

音楽を聴いて、それを自分で音階にして、楽器で再現。

曲は自分の耳だけで暗記して演奏します。

盲人は、他の感覚、特に聴覚は大変発達・鋭敏になると言われていますが、さらに、優れた音楽的才能があるからこそ、成せる技です。

また、一人で弾くだけでなく、相手と合わせるのは、より難しいことだと思います。

 

目を閉じて聞いていれば、目の見えない人達が奏でているとは想像もできない、心に響く素晴らしい演奏でした。

 

障害を持っていても、持っていなくても、人の価値は変わりません。

 

それぞれの出来ること・得意なことを発揮できる社会に。

 

『DUO ABBEY』の活躍を期待します。

 

良い音楽を聴き、心落ち着かせた院長でした。

ふだん『動』が多めの院長ですが『静』の時間も大切にしたいです。

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2019.8.20 虫が飛ぶ

日々の診療の中で、『虫が飛んで見える』『糸くずのようなものが見える』と訴えて来院される患者さんがあります。

基本的な検査をした後は、瞳を検査薬で大きくして精密眼底検査を勧めます。

この場合、帰りは、車を運転して帰ることはできません(瞳が開いて眩しくなり、ピントが合わないので)。

 

精密検査をした後、ほとんどの患者さんには『飛蚊症(ひぶんしょう)ですね。心配ないですよ』とお話しすることが出来ます。

 

『飛蚊症』とは、眼球内に糸くずや虫(蚊)のような黒い影が飛んでいるように見えることです。

眼球内には、硝子体(しょうしたい)というゼリー状の物質がつまっています。

若い時は、ゲル状で網膜にぴったりくっついています(ゼリーでしっかり充填されている眼球)。

加齢に伴い、ゼリーの中でも、水が多いところ、ゲルが強いところに分かれます。

その境界に光が入ると、光の影が、黒いものとして目に映るのです。

 

硝子体の水分が増えて、網膜の後方から剥がれることを『後部硝子体剥離』と言い、50代では25%、80代では90%の人に起こり、飛蚊症の原因となります。

 

網膜に問題がなければ、必要以上に心配する必要はありません。

『飛蚊症は治りますか?』と聞かれれば、『問題のない飛蚊症は、無くなることはないです(濁りだから)』

もちろん、濁りが光の筋道に入らなければ、目に映らないので、治ったような気になることはありますが。

残念ながら、病気でないものに治療法はありません。

飛蚊症に慣れるしか…です。

 

ただし、網膜に弱いところが見つかった場合は、定期的な検査をお勧めします。

場合によっては、網膜裂孔(網膜に穴が開く)、網膜剥離(網膜が剥がれる)につながるおそれもあるからです。

 

検査の結果、心配がないことがほとんどですが、あくまで精密検査をした結果。

精密検査をしないで、『大丈夫ですよ~』という無責任な発言は慎むのが眼科医です。

 

さて、先日、黒い水玉が見えると、来院されたAさん。

1週間前

から、黒い水玉が見えるけれど、様子を見ていたとのこと。

どんどん黒い水玉が増えるとともに、視力が落ちてきた…とのこと。

下方も見にくいです…と。

予想通り、『網膜剥離』でした。

しかも、上方から網膜が剥がれており、中心にかかっています。

緊急性マックス!

結果についてお伝えし…

『即、病院へ紹介します。緊急手術になります』

『そんな大変なことになっていたんですか?』

『そうなんです。乗ってきた車は、そのままにして、出来るだけ体と頭を動かさないように、タクシーで向かってください』

 

その日、緊急手術になったAさん。

Aさんの車は、しばらく当院駐車場にそっと置かれたままでした。

術式から、術後はベッドの上でうつむき姿勢(治療のため)を強いられているAさんを想像する院長でした。

 

幸い、Aさんの術後は良好。

視力も回復しました。

『助かりました~』

 

飛蚊症の原因は、病気ではないものがほとんどです。

しかし、網膜剥離や硝子体出血・炎症などの場合も、稀にあります。

気になれば、検査を受けてくださいね。

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