7月8日 高齢期の斜視 甘く見ないで

「高齢期の斜視は、アイフレイル(視機能の衰え)の一種。軽視すべきではない。」

国際医療福祉大医学部教授で同大熱海病院(静岡県熱海市)眼科部長の後関利明さんはこう指摘する。

高齢期で特に多いのは、眼球を支える組織の老化による「サギングアイ症候群」だという。

眼球や目を動かす筋肉を支える組織が、加齢に伴い薄くなってたるんだり、断裂したりして、目を動かす筋肉もずれを起こす。その結果、周囲に気づかれにくい程度の小さな角度の上下回旋斜視になったり、視線をうまく調節できず、遠くを見るときだけ内斜視になったりする。

「車を運転していてセンターラインが二重に見える」という「複視」の訴え以外にも、視線のずれが「ぼやける」「焦点が合いにくい」「距離がつかみにくい」といった乱視のような症状で現れることも。後関さんによると、内部の支える組織と表面の皮膚組織の変性は類似するといい、瞼が下がる「眼瞼下垂」や、上まぶたが瘦せてくぼむといった特徴が顔に出やすいという。

予防法は今のところない。治療は、眼球を動かす筋肉のバランスを改善するための筋肉を付け替える手術をしたり、視線のずれを補正するプリズム眼鏡をかけたりする。

後関さんによると、手で片方の目を覆って物を見て、両目でみるよりくっきりと見えれば、斜視の可能性がある。それを眼科で伝えると、診察の助けになるという。

2025/7/8中日新聞より

7月7日 盲学校児童 力士にタッチ

県立名古屋盲学校小学部の児童8人が、中川区にある大相撲名古屋場所(中日新聞社共催)の八角部屋名古屋宿舎で力士と交流した。

児童たちは手の大きさを比べたり、両手で力士の腹を押してみたり。力士同士がぶつかり合い「バチン」と音が響くと「迫力がすごい」と声が上がった。

2年の金田一斗真さんは「手がお父さんより大きかった。抱っこしてもらえてうれしかった」と笑顔。「ご飯をどのくらい食べるの」と質問した2年の永田美結さんは、丼で3~4杯は食べるとの答えに「そんな食べられるなんて不思議」驚いていた。

参加した序二段力士の北勝伊(ほくとよし)さんは「みんな元気で応援もしてもらい、パワーをもらった」と笑った。

名古屋市千種ライオンズクラブが2日に開催。目の不自由な子どもたちに相撲や力士のすごさを知ってもらおうと企画した。八木茂前会長は「力士や土俵に触れたのを良い思い出に、いろんなことに挑戦してほしい」と話した。同クラブは同部屋に米100㎏を贈呈した。

 

2025年7月5日 中日新聞より

7月4日 視覚に頼らないレシピサイト

食品メーカー味の素は、視覚障害者も使いやすいレシピサイト「音でみるレシピ サウンドフルレシピ」を公開している。

同社は、視覚障害者の声をサウンドフルレシピに生かした。混乱の元である広告は挟まず、読み上げ間違いを防ぐ工夫もこらす。

たとえば、自動音声が100gを「100ジー」、1/2を「1スラッシュ2」、主菜を「ぬしな」と読み上げてしまうのを防ぐため、あらかじめ「100グラム」「2分の1」「しゅさい」とかな書きなどにした。

2025年7月4日 朝日新聞

7月4日 見えない人も見える人も 感じて料理

目が見えなくても、一人で調理ができるし、過程を楽しめる。「見えなくなったからこそ出会えた料理の楽しみ方を、見える人にお裾分けしたい」。そんな思いで発信する人がいる。

「料理大好きのみき」こと声楽家の川端美樹さん。弱視だったみきさんが視力を失ったのは、広島の実家を離れて通っていた特別支援学校高等部のとき。寮で一人暮らしで、その頃から料理を始めた。

いまは視覚障害者がある夫と二人暮らしで、毎日弁当を作る。食品のパッケージのなかには、形など触っただけで判別できないものも。そんなときは文字は画像などを音声で伝えてくれるアプリを起動し、スマホをかざして読む。

「もし、当事者が料理をしたがっていたら、周囲はできるだけ手を出さず、挑戦させてあげてほしい。怖がらずやってみる。失敗は改良の糸口。何事もなれです」

2025年7月4日 朝日新聞

6月18日 目を閉じて冒険ボードゲーム

ボードゲーム人気が高まるなか、尾張旭市が職員の提案をもとに6歳以上を対象にしたボードゲームをつくった。目を閉じたままプレーする「冒険者」が、「案内役」の指示だけを頼りにフィールドを探索。敵を倒しながら経験値や道具を手に入れ、最後にボスを倒す。

目と目とが合った相手を石に変えてしまう怪物を倒すため、2人1組でプレー。怪物と目を合わせないため、「冒険者」役は目を閉じたまま探索しなくてはならない。

もう一人は「ナビゲーター」となり、冒険者が持つ杖を操って指示を出す。フィールドには4種類のモンスターが散らばっていて、対戦しながら経験値や道具を手に入れていく。この2人1組の設定により、ボードゲームならではの面白さを味わいながら目が不自由な状況も体験。特に子供たちには障碍者と介助者の立場を理解してもらい、思いやりの気持ちを育んでほしいという狙いがある。

ボードゲームは100セットを制作した。5月中旬までに小学生らが利用する市内の児童館9カ所に配備した。

市は今後、普及を目指して一般販売や、ふるさと納税の返礼品として活用を検討するとしている。

 

2025年6月16日 朝日新聞より

6月18日 点字考案200年 変わらぬ役割

点字がフランスで考案されて今年で200年。視覚障碍者による情報のやりとりに大きな役割を果たしてきた。

 

名古屋市中村区で今月1日にあった「祝200歳 点字の誕生祭」。点字はフランスの盲学校生、ルイ・ブライユが1825年に考案した。

靴下商社のマリモ(名古屋市)は全盲の人でも触って色が分かる靴下「みちる」を出展。はき口の近くに、黒なら「BLK」といった形で、色を示すアルファベットと点字を圧着した。

生活上同組合コープあいちは、携帯電話の端末を使って商品の情報を音声化し、ボタンで注文する仕組みの「音声カタログ」を紹介。

イベントを主催した社会福法人名古屋ライトハウスは、点訳を請け負ったり、点字の本や音訳した録音図書を貸し出したりするなどして視覚障碍者を支えてきた。ライトハウスの森さんによると、鉄道の自動券売機や金融機関のATMなどには、全盲の人でも使えるようにテンキーが設置されていたり、点字の案内が付されていたりしている。一方、飲食店での普及が進む注文用タッチパネルの端末は、そういう配慮がなされていないという。森さんは「タッチパネルが視覚障碍者のバリアになっていることを知り、使えない人がいたら柔軟に対応してほしい」と願う。

 

2025年6月16日 中日新聞より

2月18日 点字ブロック

点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)は、ある発明家によって日本で生まれた。

点字ブロックを考案した三宅清一さんは、交差点で白い杖を持った視覚障害者が、車道を横断する際に横を車が勢いよく走り去ったのを見かけて、「盲人の安全歩行」のための補助具を考えた。

そこで考案されたのが、コンクリートブロックの表面に凹凸をつけ、注意を喚起することだった。突起はどんな形で、何個つけるのが適切かなど、試行錯誤を重ね、最終的に7列×7列で計49個の半球状突起をつけた形に行き着いた。その見た目が点字に似ていたことから、「点字ブロック」と名付けられた。

点字ブロックは「視覚障害者にとって、安全安心に道路を歩くためのみちしるべ」であり、我々の命を守ってくれる生命線」である。点字ブロックは、全盲の障害者だけではなく、見えにくさに不自由を感じる人たちも多く使う。そのため、「彼らがたどれるように目立つ黄色であることが重要」だか、新しい建物などの場合、デザインに配慮して黄色を避け、床材と同系色のものが選ばれることがある。その結果、わからずに転んだりする人もいるという。

点字ブロックは今も進化を続けている。点字ブロックに丸や直角三角形のマーキングを行い、それをスマホのアプリで読み取ることで、現在位置や周辺の施設などの音声情報を提供する「コード化点字ブロック」の敷設を進めている。

(朝日新聞 2025年2月8日)

2月14日 目の難病に希望の「光」

慶応大学と名古屋工業大学などの研究チームは13日、光を当てることによって狙った神経細胞の活動を操作する「光遺伝学」という技術を使い、目の難病で失われた視覚を再生する遺伝子治療薬の臨床試験(治験)を始めたと発表した。6日に慶大病院で1例目の患者に投与した。光遺伝学の臨床応用は国内で初めてという。

治療薬は高い感度で光に反応するタンパク質「キメラロドプシン」をつくる遺伝子が入っている。

治験の対象は、「網膜色素変性症」。視野が徐々に狭まって視力が低下し、最終的には失明する場合もある。網膜をつくる複数層の神経細胞のうち、最も外側での光のセンサーの役割を果たす視細胞の機能が失われるのが原因。国内に約3万人の患者がいるとされる。

今回は失明状態の患者に投与した。1カ月たつと視細胞の内側に残っている神経細胞でタンパク質がつくられ、視細胞の代わりに光を検知することが期待される。今後、有効性と安全性を確認していく。治療法のない病気なので期待が高い。

2025.2.14中日新聞

2月14日 霊長類 危険察知で視覚発達か

ヘビが怖いのは、うろこのせいなんです。

人間やサルなどの霊長類は、ヘビのうろこに脅威を感じ、いち早く察知しているという研究結果を名古屋大学大学院の川合伸幸教授が発表した。

川合教授によると、ヘビを見たことのないサルや人間の幼児は、ヘビの写真を他の動物の写真よりも早く見つけることがこれまでの実験などでわかっていた。しかし、ヘビのどのような特徴に反応するのかは解明されておらず、うろこのほか、足のない細長い体や体の色などが要因として考えられていた。川合教授はうろこに着目し、本物のヘビを見たことのないニホンザル3匹を対象に実験。9枚の白黒写真から一枚だけ別の動物を選ばせた。8枚のイモリから1枚のヘビを選ぶ場合と、8枚のヘビから1枚のイモリを選ぶ場合を比べると8枚のイモリから1枚のヘビを選ぶ方が3匹とも見つける時間が早くなることがわかった。その差は全体の傾向としてわずか0.04~0.05秒程度だったが、ヘビ相手では「生死を分ける時間」になるという。さらに、イモリの体にヘビのうろこの画像を合成した白黒写真を使って同じ実験を実施。見つける早さを比べると、2匹はヘビを選んだ時間と同じで、1匹はそれよりも早くヘビのうろこをつけたイモリを見つけた。

川合教授は「ヘビの独特の動きや細長い形ではなく、うろこに対して敏感に反応していることが分かった」と分析。

 

「霊長類はいち早くヘビが察知できるよう、視覚を進化させてきたと考えられる」とし「野生の猿による農作物被害の防止に、うろこが役立てられるかもしれない」と期待を込める。

(中日新聞 2025年2月5日)

 

2月5日 「瞽女」心打たれ唄い継ぐ

かつて、盲目の女性旅芸人が三味線を片手に全国を唄い歩く「瞽女」の文化があった。

担い手は減り続け、最後の一人とされる小林ハルさんが亡くなって20年。

独特の文化を受け継ごうと、やはり全盲の広沢里枝子さんが各地で唄を披露している。

「瞽女」が活躍したのは、福祉制度が十分に確立していない時代。

「瞽女」は目の見える「手引き」の女性によって2、3人で娯楽の少ない農村漁村を巡り唄(長い歌で30分以上あり発生も独特)を披露して金や米といった生活の糧得た。

女性の視覚障害者が自立するには限られた選択肢しかなく想像できないくらい過酷だった。

ただ、今も社会に出るのは簡単なことではなく、広沢さん自身も目が見えないことを理由に就職を断られたり女性の障害者は重複の差別を受け、抑圧や不条理は今もある。

それでも、社会全体や当事者、みんなで少しずつ切り開いて楽しい唄はとことん楽しく、悲しい唄はとことん悲しく。生きるために受け継いだ唄を通して「瞽女」の生き方を伝えられたと前を向く。

(中日新聞 2025年2月3日)

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