10月21日 ガイドメイクで「自身!」

視覚に障害があっても気軽に化粧を楽しめる「ガイドメイク」が、少しずつ広まっている。資生堂ジャパンが開発し、今秋から全国の特別支援学校などと連携してセミナーを開催。参加者の中には、来春に大学進学や就職を控えた生徒も多く、化粧を通じて「自信をもって社会に出たい」との気持ちを後押ししている。

 

9月上旬、愛知県の岡崎盲学校。高等部の生徒たちがアイシャドーを指先に付け、もう片方の手で眉の位置を確かめながら、色をのせていった。周りにいた講師から「似合う」「かわいい」と声をかけられると、ほおをゆるませていた。

 

ともに3年生で、化粧は初挑戦という赤松春佳さん(17)は「うまくできるかなと思っていたけど、こんなにきれいになるんだ」と笑顔。卒業後は就職予定という石野加恋さん(17)は「身だしなみとして必要だと思うので、家でも練習してうまくなりたい」と声を弾ませた。

ガイドメイクは、目が不自由な人が自身の手指などを頼りに、スキンケアからメーキャップまでを自分で施す化粧法。資生堂ジャパンは、当事者の困りごとに耳を傾けながら、化粧品の選び方や使い方、手順の伝え方などを研究。2019年から、視覚障害団体などと連携し、中高年を対象にしたセミナーを本格スタートした。今回は、10月10日の「目の愛護デー」に合わせて、新たに社会へ巣立つ高校生たちを応援しようと企画。来年1月までに全国13校で開催する計画だ。

 

視覚に障害がある人が化粧をするときに特に心配しているのが、「ファンデーションの色ムラ」や「眉や唇の輪郭からはみ出ること」という。そのためガイドメイクでは、ファンデーションを付ける際は、スポンジではなく毛足が長いパフの使用を勧める。「ムラができるのを防ぎ、より自然に仕上がる」と担当者。眉は、アイブロウを持つ手とは逆の人さし指を眉の上のラインに寝かせるように沿わせ、眉頭から眉尻にかけて少しずつ描き足す。パウダータイプを使うことで失敗しにくくなる。唇も同様に、利き手とは逆の人さし指を「ガイド」にし、口紅を滑らすように塗る。

セミナーでは、化粧水や乳液などの適切な使用量をイメージできるよう、手で触って分かるスケールを用いて確認。男子生徒はスキンケアのほか、ボディケアやヘアケアも教わった。

担当者は「ご自身ではみえなくても、周りから『きれいですね』『似合っているね』と声をかけることで、より自信を持って外出したり、誰かに会おうと思えたりする。今後の化粧の力で、皆さんの活躍を後押ししたい」と話している。

10月8日 眼病予防 小児期カギ

文部科学省の学校保健統計調査(2022年度)によると、裸眼視力1.0未満の小学生は37.88%、中学生は61.23%と、過去最多になった。

大府市では22年度から「子どもの近視予防プロジェクト」に取り組んでいる。「小児の近視予防は、将来の重い目の病気を防ぐことになる」と、その意義を強調する。

近視は光が網膜の前で焦点を結び、遠くのものにピントが合わない状態。目の奥行き「眼軸」が長くなることが主な原因だ。眼球が前後に伸びると、網膜の組織が薄く、もろくなり、網膜が破れてはがれる網膜剥離になりやすくなる。剥離が周辺部で起きれば視野欠損、網膜の中心で物を見るのに重要な部分「黄斑」で起きると大幅な視力の低下をきたす。視野が欠ける緑内障は、光を網膜から脳に伝える神経節細胞が痩せていく病気。眼球内を満たす液体の圧力「眼圧」の高まりが原因として知られているが、近視が進んで網膜が引き伸ばされることも症状が進む要因に。黄斑にもろい血管が新たにでき、そこから水漏れが起きてむくみ、視細胞が働かなくなるなどの「近視性黄斑症」にもなりやすくなる。

近視の度合いを示すマイナスの値(D=ディオプトリ)が「1」大きくなるごとに、網膜剥離が30%、緑内障が21%、近視性黄斑症が58%と、それぞれなる確率が上がる。マイナス6D以上の強度近視では近視でない人に比べ、網膜剥離に22倍、緑内障に14倍、近視性黄斑症に41倍なりやすくなる。早くに近視になった人ほど、強度近視になりやすいといい、まさに子どもの頃の近視予防が、目の健康を守る。

近視は、一般的に近くを見る作業を続けることがよくないとされ、屋外で1日2時間以上活動すればリスクが減ると報告されている。ただ、進行するメカニズムは分からないことが多い。

2024.10/8 中日新聞

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10月1日 物語つなぐ 声の白杖

視覚障害者に映画を楽しんでもらうため「声の白杖」を提供する活動がある。瑞穂区のボランティア団体「視覚障碍者の情報環境を考える会 ボイス・ケイン」が取り組む「シーン・ボイスガイド」。移り変わるシーンを会員がつぶさに伝え、理解を助けている。

6月下旬、天白区のビルの一室で映画「大名倒産」が上映されていた。越後のサケ売り小四郎が藩主となって、貧しい藩を救うために奔走する内容だ。席に座っていたのは10人。皆、視覚障害がある。スクリーンにはサケのうろこを包丁で黙々とこそぐ男と見守る男の子が映り、「シャー、シャー」という音が流れた。

音だけでは何が起こっているか分からないのでガイドを務める会員がすかさずシーンの説明を加えていった。

視覚障害者の加藤秀一さん(63)は『視覚障害者にとって一番やっかいなのは、音の空白シーンで物語のつながりが絶たれてしまうこと。今回はガイドのおかげで大変楽しめた』と満足げな表情を見せた。

映画は約2時間。ガイドが読み上げた台本は作り上げるのに3ヶ月かかり、130ページを超える。視覚障害者が音声から理解できる部分は説明を省き、分かりやすく簡潔な言い回しにする。

代表で元ラジオDJの岡本典子さん(83)は「大切なのは言葉選び。すっとイメージできるようにしています」と説明する。例えばトンネルの中を自転車が走るシーンでは「『だんだん明るくなってきました。もうすぐ出口です』と伝えると一度も光を感じたことのない人はピンとこない。だから『ペダルをこぐ音が早くなります。もうすぐ出口です』と言うの」

会員は現在46人で、名古屋、日進、春日井の各市を拠点に活動。岡本さんが講師を務めるガイド養成講座は500人以上が受講した。「視覚障害者と同じ立場になって、伝わる言葉を一生懸命考えると障害への理解も深まる」と岡本さん。「その経験は日常生活で視覚障害者と会った時に生きるはず」と話す。

(中日新聞 2024年9月24日)

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