10月4日 くらしの作文 83才女性

見えなくなっても楽しくネ
ねえ、皆さん聞いてください。私はとても変な状態でした。もともと私は重度の視覚障害者でした。ところが最近、住み慣れてた我が家で柱にぶつかったり、家具の位置がわからなかったり。一番困ったことは、玄関のチャイムが鳴っても自分の立ち位置がわからずウロウロすることです。そして夫がいるのに気づかず、ぶつかって「邪魔!」と叱られる始末です。「どうしたのだろう」ハッと気が付きました。「私は全盲になったのだ」見事に何も見えない状態に。目を開ける、目を閉じる、目を開ける、目を閉じる...。何度やっても目の前には何もありません。うすい灰色だけの世界。いつかはこの時が来ると覚悟をしていたのですが...。いよいよその時が来たのです。
心は意外と平静でした。幸い、私には元気な手がある。足がある。耳も、口も。今朝も念入りにお風呂とトイレの掃除をした。包丁だって使える。ウォーキングが大好きで、ボランティアさんやガイドさんの手を借りてドンドン歩いている。スポーツセンターには気のいい仲間がいる。
大丈夫、何とかやっていける。皆さんに助けていただいて、夫の邪魔をしないように気を付けて。負けないヨ。ねえ視覚障害者の皆さん、元気に楽しく、明るく過ごしましょうね。

中日新聞 2023.9.27

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