9月2日 視覚障害者を誘導「AIスーツケース」

取っ手を伸ばすと地面から120センチほどの高さ。見た目は一般的なスーツケースとさほど変わらない。だが内部には、本来なら荷物を入れる空間にバッテリーやモーター、コンピューターがぎっしり入っていた。重さは28キロに及ぶ。

大まかな仕組みはこうだ。まず、利用者は取り付けられたスマートフォンでAIと対話し、目的地を設定。車輪を動かすモーターがスーツケースを自立走行させ、目的地まで誘導する。その際、センサーやカメラの画像により障害物を認識。ルートを常に自動計算しながら、人や物にぶつからないように案内していく。約3センチまでの段差なら問題なく走行できる。

握っているハンドルの上部にはコインほどの大きさの円盤は取り付けられ、そこに親指を当てておけば、スーツケースが進む方向を円盤が動いて示してくれる。速度も手元で調整でき、スーツケースが勝手にスタスタと進んでしまうことを防げる。

日本IBMなどの企業でつくるコンソーシアムの事務局長、及川政志さんは「もっとスムーズに動くようにするなどの技術的な課題はある。法整備、社会的に受け入れられるかという点でも社会での活用にはまだ遠い」と話す。それでも「このスーツケースに安心して身を任せることによって、視覚障害者の人たちが周りの雰囲気を楽しめるような余裕が生まれる。新しい場所に迷わず行けて、いろいろなことが楽しめるようになる。そんな世界が実現すればいいなと思っています」と力を込めた。

 

2025年8月25日 中日新聞

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