8月10日 映画鑑賞もバリアフリーで快適に!

目や耳の不自由な人にも映画を鑑賞してもらおうと、音声や字幕で解説を付ける「バリアフリー上映」がゆっくりと広がっている。

 

今月20日、東京・練馬のシネコン、T・ジョイ大泉。目の不自由な観客向けに字幕や解説を音声で流し、イヤホンで聞いてもらう音声ガイド付き上映があった。

映写室の窓からマイクを手にしたスタッフ5人がスクリーンを見つめる。字幕を男女4人で分担して読み上げ、1人が登場人物の動きなどを解説する。

音声ガイドを手がけたボランティア団体のシティ・ライツ(東京・北)は、2001年からこうした「シアター同行鑑賞会」を年間50回ほど開催している。

インターネットで寄付を募り、日本語吹き替え版と音声ガイドの制作費の70%にあたる50万円を集めるなど、採算面で独自の工夫をし、昨年11月には自前の映画上映の場も開設した。

 

8月11~15日に東京・渋谷で開催する子どものための映画祭「キネコ国際映画祭」は今回からバリアフリー上映を始める。

作品には、ライブによる吹き替えと音声ガイド、耳の不自由な人向けの日本語字幕を付ける。字幕は漢字を使わず、ひらがなで表記する。

NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)によると、14年に公開した邦画615本のうち日本語字幕付きは66本、音声ガイド付きは6本だった。まだ十分とは言いがたいが、東宝が昨年度の配給作品の93%に日本語字幕を付けるなどバリアフリー上映は広がりつつある。

 

さらに、字幕制作などを手がけるパラブラ(東京・中野)は「電子透かし」と呼ぶ技術を導入した鑑賞システムを開発。秋から実証実験が始まる。人に聞こえない信号を映画に挿入し、メガネ型端末やスマートフォンで信号をとらえ、字幕や音声ガイドを視聴する。人件費を軽減し、端末に字幕を表示することで健常者と一緒の鑑賞がより容易になると期待される。

 

高齢化社会の中、音やセリフが聞き取りにくい観客もいる。バリアフリー上映を当たり前のことにしていかなければいけない時代が近づいているのかもしれない。

 

(日本経済新聞 7月28日)

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