2019.11.19 宿題と肥満者率

医師会の講演会は、主に医学の話題ですが、今回は経済学のお話。

演者は、Eテレ『オイコノミア』という経済番組に又吉直樹さんと出演されていた、大阪大学の大竹先生。

又吉絡みで見始めた院長ですが、平易な言葉で、素人でも経済学をかじれる良質の番組でした。

 

今回のタイトルは『医療現場の行動経済学』

『行動経済学』とは、心理学や社会学の成果を経済学に組み入れた、経済学の一分野だそうです。

現実の人間の思考の傾向を考慮して、経済を考える、というもの。

 

例えば…

問1

1.コインを投げて表が出たら2万円もらい、裏が出たら何ももらわない。

2.確実に1万円もらう。

どちらを選びますか?

問2

1.コインを投げて表が出たら2万円支払い、裏が出たら何も支払わない。

2.確実に1万円支払う。

どちらを選びますか?

大多数は、問1では2を選び、問2では1を選ぶそうです(院長も同じ)。

得をすることは確実な方を取りたいけれど、損をすることは不確実な(危険性のある)方を取る傾向があるそうです。

 

同じ金額だと、得をした嬉しさよりも、損をした悲しさの方が大きくなる。

また、嫌なことは先延ばしし、嬉しいことは前倒しする傾向もあるそうです。

これらを含め、ヒトの心理をどのように医療現場の経済で活用するか。

 

薬や手術の効用・成功率と副作用・不成功率を患者さんに伝える場合。

副作用や不成功率がわずかだったとしても、患者さんはそれ以上に大きく捉える傾向があることは、自身の経験からも気づいていましたが、ヒトの心理的な傾向・癖だと初めて知りました。

医師は、エビデンスに基づいて、客観的に事実を話しますが、良いこと(回復・治癒)と悪いこと(悪化・一生の病気)では、患者さんの受け止め方が違うのは、もっともです。

 

健康診断の受診率を上げるには、どういう文面が一番有効か?

臓器提供のドナーカード同意率を上げるには?

予約の無断キャンセル率を防止するには?

大腸内視鏡の痛さの記憶を和らげるには?

などなど、数々の論文を引用し、解説されました。

医学と同様、リサーチ・集計・解析・結果・考察という流れは、経済分野の研究においても同じだと思いました。

数学も駆使し、文系というより理系なのでは?と思います。

 

中学生の時、夏休みの宿題はいつ頃やることが多かったですか?(大阪大学調査)

1.夏休みが始まる最初の頃

2.どちらかというと最初の頃

3.毎日ほぼ均等

4.どちらかというと終わりの頃

5.夏休みの終わりごろ

 

院長は1です。

『宿題後回し傾向』が強いと、喫煙率やギャンブル習慣、飲酒習慣が優位に高くなることが分かっています。

消費者金融の利用も。

それ以外に、肥満者率ともかなりの相関があることがわかっています。

 

中学時代の宿題癖で、将来の傾向までわかるとは…

 

ちなみに長男に上記の宿題の問いをしたところ…

『当てはまるの、無いわ』

『えっ?』

『だって、宿題やったことなかったもん…やろうとすら思わなかった』

選択肢に該当しない人がいるとは…

理由の詳細まで忘れましたが、何度も学校から親(院長)の呼び出しがあったからね~

相関の結果を知ると、先が思いやられます…

 

『行動経済学の知識で患者さんの意思の傾向を理解できる』

『何気ない表現で患者さんの意思決定が変わる』

 

勉強したことを日々の医療現場で試してみようと思います。

愚息が今からでも『宿題先終え傾向』になるよう、家庭でも行動経済学試してみます。

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2019.2.12 駅で落ちない噺

『駅で落ちない噺』からの障害理解と称した市民講演会(名古屋市・名古屋市障害者差別センター主催)に参加してきました。

 

演者は、上方落語協会会員の『桂福点(かつらふくてん)』さん。

先天性緑内障のため弱視。

手術をするものの、中学生の頃には全盲に。

大学を経て、落語家に。

また、音楽療法士としても活躍。

NHK Eテレ『バリバラ』にも出演。

といったプロフィール。

 

落語の前にトークが始まります。

受付で渡されたビニール袋を目の前にして、見るように言われます。

ビニールで、少々視界が悪くなります。

二つに折って、目の前に置いてまた見る。

さっきより、もっとかすんで見えます。

『更に四つに折って前に置いて見てみて~』

『八つ折にして見てみて~』

体験する私達聴衆。

八つ折では、明るさだけで、あとはぼんやり。

『これが、だんだん見えなくなるってことです。色々、程度はありますが』と福点さん。

当院には、眼科用に緑内障視野欠損などのモデル視野体験ツールはありますが、一般の人に、見えなくなっていくことを体験してもらうには、簡便でインパクトのある方法だと納得しました。

 

視覚障碍者の移動手段としては、白杖・盲導犬・ガイドヘルパーがあります。

白杖は、自分だけで行動する分、危険も多いのだそうです。

触覚・嗅覚・聴覚などをフルに使って、行動するものの、不意によそ見(スマホ)の人がぶつかってきたり、路面の点字ブロック部分に物が置かれていたり、途切れたりすると、危険度がかなり高まります。

ホームからの転落は、酔客が一番多いそうですが、視覚障碍者の転落事故はよく話題になります。

『駅で落ちない噺』も、盲学校の後輩が、転落事故の当事者になったことで、後輩を取り巻いていた環境・落下の現状など掘り下げて検証。

ユーモアも入った創作落語になっておりました。

 

名古屋市地下鉄は、ホーム柵があります。

ホーム柵がないと、白杖で、間違って車両間の接続部分を探ってしまい落下することもあるそうです。

気分が悪くなって落下ということも避けられます。

障害のある人、無い人にとっても安全のための予防策として、とても評価できると思います。

 

点字ブロックも階段から降りてきて、一番近くの車両に乗り込めるよう誘導されています。

また、線路に近づくにつれて、点字ブロックの大きさ・形が変わっていきます。

遅まきながら、気づく院長です。

 

先日『ヘレンケラー』の伝記を久しぶりに再読したところ。

ヘレンケラーの時代よりはずっと障碍理解も浸透しているものの、まだまだかもしれません。

 

『こんな夜更けにバナナかよ』映画もいいですが、原作(ノンフィクション)は、また考えさせられる本です。

 

院長も微力ながらお手伝いが出来るように、出来ること(まずは医療)頑張ります。

 

 

 

 

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