2022.8.9  仕事が回りません

『8月は上半期で一番忙しい時期です』

産業医を担当しているスーパーの店長さん。

土用の丑から始まり、夏休みのレジャーやお盆の集まりなど、お客さんの購買力がアップ。

スーパーの売り上げもアップを狙います。

『忙しい時、余裕のない時に労働災害は起こりやすくなります』

 

コロナ禍と繁忙期が重なり、残業時間も増えているようです。

各部門とも新規アルバイトやパートさんを指導し、仕事を任せられるように…とお願いする店長さんは、自分(院長)の姿が被ります。

 

安全衛生委員会は、会社側(産業医もこちら側)と労働者側の何人かのメンバーで構成されています。

 

惣菜部門より出たのは『暑いです!』

当然、火を使い調理をするので、巡視していても室内温度はかなり上がっています。

加えて、総菜部門に隣接する壁面に室外機が設置されているので、さらに室温上昇です。

『こまめに水分を摂ってください』産業医(院長)。

『室外機は移動できないですよね~』(と、店長さんを見る)

後は…

『ちょっと触っていいですか?』

制服の生地が化繊です。

自宅用ではないので、火傷予防にも長袖着用が望ましいのですが、これでは暑いわ~

『惣菜部門だけでも、化繊から綿100%に出来ないでしょうか?会社全体の問題になるかもしれませんが…』と、店長さんに提案を依頼(報告書も提出)。

 

各部門から、気になる事を挙げてもらいます。

 

安全衛生委員会の後は、いつもの巡視。

巡視時も、スタッフに何か気になる事がないか尋ねるようにしています。

 

『品出しで腰が痛くなるんです~』と、パートのオバサン(以下パートさん)。

『しゃがんで持ち上げるようにすると良いですよ』産業医のオバサン(院長)(以下産業医)。

『そんなことしてたら、仕事が回りませんよ』(パートさん)

回る仕組みを考えないと。

腰にやさしい運搬の仕方を定着させないといけないわ~

『まあ、コルセットしてるからまだましですけどね』(パートさん)

『コルセットで腰の負担は減るけれど、腹筋と背筋を鍛えると良いですよ』(産業医)

『朝から晩まで仕事して、家帰ったら、またやることだらけだから、そんな暇ないですよ』(パートさん)

オバサン(産業医・院長)アドバイスするも、オバサン(パートさん)手強し。

自身は腹筋・背筋を鍛えてから腰痛とは無縁になったのですが、普及活動は困難を極めそう…

スポーツ医の立場からも…腰痛予防だけでなく、腹筋背筋を鍛えると姿勢がよくなります(若見せ効果もあると思う)。

まずは、自重の腹筋を1回から。

慣れてきたら、負荷をかけたり、腹筋の部位に分けてトレーニングしたり…(メニュー色々実行中)

 

さて…『そんなことしてたら、仕事が回りませんよ』のセリフ、当院でも時々聞きます。

サンダーなどの研磨で鉄紛が目に刺さり来院されます。

すごく早いスピードで目に飛入するので、一瞬の出来事です。

院長は、専用の針やドリルで丁寧に鉄粉や錆(数日経つと錆が出る)を削り取ります。

『保護眼鏡付けてましたか?』の質問に、

『そんなことしてたら、仕事が回りませんよ』と答える患者さんの多いこと。

職場のマニュアルは、労働災害を回避し安全に仕事をするための指南書なので、守りましょう。

 

店長さんと巡視中に、鮮魚コーナーで。

『刺身は、厚すぎても薄すぎてもダメで、ちょうどいい厚さがあるんです。そういうことも研修受けるんですよ』

なるほどなるほど。

水産部門Aさん(安全衛生委員)作のお造りはお値打ちで美味しそう…

買って帰ろっと。

そんな余裕も出てきた産業医です。

 

 

 

 

 

 

カテゴリー:クリニックに関すること 産業医

2022.7.5 プラン75

『来週、免許返納するの』

『え~!?』

『後期高齢者(75歳)になったら、返納するって決めてたから。ちょうど、誕生日が来るから』

ある日の医師会の会合にて、A先生(女性)。

もうそんな年齢とは思えないほどのお元気さです。

『仕事はどうされるのですか?』

『車はやめても、仕事は続けるわよ』

あっぱれ!

隣で『僕は、前期高齢者(65歳)になりました』とB先生(男性)。

『A先生、すごいですね~。僕は後期高齢者になったら引退しようかな~』

B先生は多趣味。

毎日、趣味だけで予定が埋まりそうです。

『やっぱり、仕事が好きなのよ。患者さんと向き合って仕事することが。ストレスの元凶でもあるけどね』

敬老パスの使用頻度、高齢者受給者証の制度、自身の健康など…内容は多岐にわたり、テーブル最年少とはいえ、しっかりオバサンの院長はふむふむと(老後の)参考になることばかり。

 

先日、今話題の映画『プラン75(倍賞千恵子主演)』を見てきたばかりの院長。

そのことを話すと、みなさん『どうだった?見たいと思っている』との声声。

 

『プラン75』は、75歳(以上)になったら、生死を選択できるという国の政策。

まだ人生を送りたいという人には無理強いはされませんが、先の人生プランを描けなくなった時の選択肢として用意されています。

プラン75を選択すると、現金10万円をすぐ支給され、好きなように使うことが出来、死ぬ前日まで相談員が毎日電話でサポートしてくれます。

死ぬ前にある程度安らかな(あきらめの?)境地を作り死にいざなう。

もちろん心変わりも可能です。

この政策のお陰で、国も高齢者を支える若者負担も減る画期的な策とのこと(映画では…)。

このシチュエーションの中で、ホテルの清掃員を解雇された一人暮らしの主人公がどうなっていくか…

院長は一人で鑑賞したのですが、劇場はほぼ60代、70代の観客で埋まっていました。

 

老後なんて遠い未来だと思っていた頃。

開業当時、かなり年配の現役の女性医師と話す機会があり、年齢を聞いたところ、当時の院長の倍以上!

自分の人生の倍以上の人が、まだ現役で仕事をされている事実に驚きでした。

今や、親子ほどの年齢差の若い医師が誕生。

彼らから見れば、私たちの年代の医師は、遠い存在のオジサンオバサン医師。

きっと医師人生30年と聞いてもピンとこないと思います。

しかし、医師会や学会で院長より更に年長の諸先輩の話を聞くと、老後は近づいているけれど、それなりに明るそうです。

オバサン院長ですが、久しぶりに『若いわね~』の言葉を浴びた一夜でした。

 

『過去に戻れたら○○歳と言う人がいるけれど、私は、今が一番いいと思ってるの』

A先生の力強い言葉。

院長も、まだまだ若輩者ですが、オバサンの今が一番ベスト(更新中)と思っています。

 

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 公センセの日常の出来事

2021.11.30  オバサンのおかげで…

先日、地下鉄で街へ。

途中まで文庫本を読み、スマホに切り替え…

知らぬ間にウトウトしていたようです。

停車駅の駅名表示にハッとして、『あれっ!?もう丸の内?』と、隣に話しかけます。

院長の顔をまじまじと見たのは、眼鏡をかけた60代と思われる年上オバサン。

誰?

当然向こうも、このオバサン(院長)どうしたの?と驚いた顔。

日曜日の夫との外出モードになっていたよう。

『失礼しました!家族と一緒に出掛けていたと勘違いしまして…(そんなことある?)』冷や汗。

『そうでしたか。それより、乗り過ごされなかったですか?』

『名古屋なので大丈夫です』

2駅の間、なぜか話が盛り上がってしまったオバサン同士でした。

年上オバサンは、桑名集合のウオーキングに行くそうで、お勧めのコースを教えてくれました。

楽しいエピソードになったのは、隣がお姉さんオバサンだったおかげ。

もし、隣が○○だったら違う展開が…また妄想で遊べそうですが、失態には注意です。

 

寝過ごした一件で、忘れられないのは、三男のハプニング。

当時小学1年生の三男。

スイミングクラブの送迎バスは、大人で徒歩15分の学区外停留所まで。

しかも、時間は、当院の診療時間開始後です。

1年生になったばかりの子供一人でお迎え場所まで行かせることは、当時、心配で出来ませんでした。

仕事をしているために、送迎バスの停留所まで連れて行って乗せるだけの時間が取れない歯がゆさ。

わずかな隙間時間を助けてほしいと思っているワーキングママは今も多いはずと思います。

 

対応策として、自院の傍の停留所から市バスに乗せることにしました。

送迎バスより早く出ることになりますが、診療前にバス停に一緒に行き、乗車を確認することが出来ます。

乗車時、運転手さんに行き先を告げる

運転手さんのすぐ後ろの席(最前列)に座る

2つの決め事です。

走り去るバスに手を振って、午後の診療に臨む院長でした。

 

ある日の診療中、受付から電話の取次ぎがありました。

出てみると、オバサン(恐らく60代~70代)。

『○○(息子)君のお母さんですか?』

『はい、何か?』

『今○○君に代わりますね』

『○○ちゃん!?どうしたの!?』

『うんとね~新瑞橋まで来ちゃった~』

 

オバサンの話によると…

その日は遠足の日だったので、疲れてバスの中で眠ってしまったそう。

降りるべき停留所はとっくに過ぎて、終点で降りるオバサンに気づかれたという始末。

息子は、思わぬ展開に泣きべそ。

家の電話番号は覚えていなかったけれど、クリニックの名前は言えた息子。

オバサンが公衆電話から当院に電話をかけてくれました。

かくかくしかじか…

『では、折り返しのバスに乗せますね。○○(乗車場所)のバス停で降ろしてもらうよう、さっきの運転手さんに言っておきますね』

『お手数おかけしました。よろしくお願いいたします』

 

ドキドキ…

無事に息子は戻ってきました。

オバサンのおかげ。

母は安堵と自責の念。

 

あの時の出来事は、息子にとっては大事件。

今もしっかり覚えています。

もちろん母もしっかり覚えていてますが、思い出すたびに胸が痛むエピソードです。

『あの時は~』と笑い話にしてくれる息子に、働き続けてきた母は救われます。

今日30日は三男の誕生日。

大人になっても、母にとっては小さいままの息子が心の中にいます。

 

オバサンのおかげで…

そんな日常の一コマに登場する、名もなきオバサンになれたら…と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2021.11.16 目が黄色い!?

日常診療で結構多い訴えのひとつは、『眼が黄色い』

医学生の時は、眼が黄色い=黄疸=肝機能障害と覚えたものですが、医療も発達し早期発見早期治療の現在、少なくとも日常診療で黄疸を見つけることはありません。

しかし、患者さんの中には、『黄疸では?』と問診に付け加えている場合も。

 

気にして来院される患者さんの多くは女性です。

茶目(角膜)の3時、9時方向の白目(結膜)が黄色っぽくなっています。

やや隆起している場合もあります。

『瞼裂斑(けんれつはん)』と言います。

結膜に限局し、角膜には及ばないのが特徴です。

病気ではないので、治療の必要はありません。

例えて言うなら『眼のしみ』

紫外線の曝露が要因とされています。

加齢により、紫外線の曝露量が蓄積され多くなるので、30代くらいから見られることも。

 

ただし、瞼裂斑に炎症が起こり、充血や痛みが出れば、瞼裂斑炎(けんれつはんえん)となり、炎症を抑える治療をします。

また、瞼裂斑は時として、ドライアイの症状を悪化させます。

瞼裂斑が大きめのドライアイの人は、涙が瞼裂斑方向(3時、9時)に流れていきやすい(盗涙とも言われます)ので、ドライアイ症状が悪化しやすくなります。

治療の必要がない旨を伝えると、安心される一方、長年(多くは加齢)の紫外線曝露と知りショックを受ける患者さんも。

院長自身は、意外にも、瞼裂斑を認めません。

眼科医30年、専ら暗室での仕事が奏功しているのかも?

 

実際、中学生を対象に、石川県の内灘町と沖縄県の西表島で瞼裂斑の出現を比べたスタディがあるのですが、より紫外線の強い西表島では中学生でも瞼裂斑が認められた報告があります。

さらに、アフリカでは、出現率が高くなっています。

 

さて、茶目(角膜)に白っぽい出来物が…と来院されるのが『翼状片(よくじょうへん)』です。

瞼裂斑と同じ位置(多くは鼻側)に出来ますが、白目(結膜)の一部が、角膜に侵入してきます。

自覚がないことがほとんどですが、大きく侵入してくると、充血や異物感を伴います。

さらに、角膜中央に向かって進行すると、乱視が強くなってきます。

翼状片は何年、何十年もかかって進行します。

しかし、乱視が強くなってきたり、黒目(瞳孔)と茶目(角膜)外側との真ん中くらいまで侵入したら、手術を勧めます。

翼状片の原因も、紫外線の曝露と考えられています。

 

 

病院時代には、瞼裂斑が主訴の患者さんを診ることはありませんでした。

重症疾患や、希少疾患が多くを占めます。

開業して、地域のお医者さんになると、ちょっとしたことでも相談に来院されます。

治療の必要がないものについては、心配ないとお伝えしますが、共感と安心を提供することも大事だと思っています。

 

オバサン(院長)になって、眼科医経験・人生経験を積んだ分、共感できることは多くなりました。

年を重ねるのも悪くないと思うこの頃。

オバサンだけどオバサンじゃない!のモットーで。

(このニュアンスわかってもらえますか?)

 

こちらもご覧ください

サングラスどう?

 

 

 

カテゴリー:公センセの想い 眼に関すること
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