2023.10.24 見える!

秋の学校視力検査、就学時健診が始まりました。

学校での視力検査は、ABCDと4段階で判定しています。

A 1.0以上

B 1.0指標が見えない

C 0.7指標が見えない

D 0.3指標が見えない

眼科での視力検査のような詳細な値は示されません。

 

それでも、学校生活を送る上での目安になります。

A 教室の一番後ろからでも、黒板の字がよく見えている。

B 後ろの方でも黒板の字はほとんど読めるが、近視の始まりの可能性が高い。

C 後ろの方では、黒板の字が見づらく、近視になっていたり他の病気があるかも。

D 前の方でも黒板の字ははっきり見えていない可能性があるので、眼科で診察対処を。

 

就学時健診時は、初めての場所(小学校)のせいか、泣いたり緊張している新一年生も見受けられます。

院長は必ず就学時健診の際に、目の病気の有無と視力検査の結果を伝えます。

B以下があった場合、程度に応じて、もう一度(速やかに~就学までに)視力検査を受けるよう勧めます。

 

結果を聞いて、子供に『○○ちゃん、目悪かったの!?』と聞くお母さん。

子供からしたら『知らんがな~』

小さな子供に視力低下の自覚はありません。

『たまたま緊張していただけです』

『視力検査が理解できてないんだと思います』と、受診する必要はないと言い張るお母さん。

悪い結果は信じたくないけれど、再度眼科で検査して問題なければよいし、何か見つかれば就学に備えて対処することが出来ます。

 

学校からの受診のお勧め用紙を持参される患者さんたち。

Dでも『見えている』『困っていません』と言う人もあります。

見えるは、その人の感じ方もあるので、はっきり見えてなくても『見える』と言うのは事実です。

ただし、学校生活に支障ないように必要な(はっきり見える)視力が必要とされています。

免許を取るにも、自分の『見えている』では通らないのと同様に。

 

視力検査で受診された時、子どもは、ピント合わせの力が強いため、通常の屈折検査では正しい状態(近視?遠視?乱視?また程度)が分かりません。

そのため検査用点眼薬で毛様体筋の緊張を取り、正確な屈折程度を確かめます。

 

点眼薬で近視に出れば、間違いなく近視で、回復は見込めません。

 

当院でも行っているオルソケラトロジーは、初めて近視と診断された時にスタートするのが好機です。

もちろん近視と既に診断された方にも適応です。

コンタクトレンズを付けて就寝、起床したら外す。

昼間は裸眼(1.0~1.2)で生活できます。

特に水泳や接触スポーツ・バレエなどの習い事にも安心です。

 

当院のオルソケラトロジーの患者さんたちも、良好な視力で学校生活を楽しんでいます。

もちろん定期検査をしっかりし、院長が責任を持ってフォローしています。

 

親(大抵母親)が、コンタクトの管理をすることになります。

母と子のスキンシップが朝晩出来る(せざるを得ない)ので、母子のスキンシップは遥か昔になってしまった(息子たちは成人)院長としては羨ましい限り。

朝起きてコンタクトレンズを外したら、子供が『見える!』って言ったんです。

お母さんからの嬉しい報告。

 

次男はアトピーがひどく、一時期、毎晩処方された軟膏を指に塗って、布で巻き、その上にネットをかぶせていました。

『最後に帽子(ネットをそう呼んでいた)被せようね、帽子並んだね(5本指)~良くなるといいね~』で終了。

面倒な時もあった指の治療も今となっては懐かしい思い出です。

 

オルソケラトロジーも、きっと母子(主に母)の良い思い出になるはずです。

 

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2019.11.12 ずっとAだったのに…

中学3年生のB君が来院しました。

『最近、プリントとかを離して読むようになったんです。離したほうが見やすいって言うんです。若いのに』と付き添いのお母さん。

裸眼視力は右1.2左1.2でしっかり見えています。

近くの見え方も、右1.0左1.0で全く問題なしです。

『学校の視力検査ではずっとA(1.0の指標が読める)だったんです』

眼科の病気になったこともないので、生まれて初めての眼科受診でした。

眼位(目の向き)は正常。

診察でも異常はありません。

 

眼科では、視力検査と同時に、屈折検査(機器)も行います。

データによって、近視・正視・遠視・乱視があるのか、どの程度なのかが分かります。

B君は軽度遠視が出ていました。

 

乳幼児の多くは軽度の遠視ですが、就学時の頃には正視(近視も遠視もない状態)になります。

軽度の遠視では問題はありませんが、強度の遠視では近くも遠くもぼやけて見えるようになり弱視になることが多々あります。

また、無理にピントを合わせようと調節すると両目が内向きになる内斜視を起こします。

小学校低学年までの子供は、調節力(ピント合わせ)が強いので、視力が良くても、遠視が隠れていることもあります。

また、視力が出にくく近視の値が出ても、実は近視ではない場合もあります。

子供では、調節を完全に取ることが出来ないため、調節を麻痺させる検査用目薬を使い、正しい値を把握します。

 

中学3年生だと、通常の屈折検査で十分です。

しかし、B君は『視力良好』『でも、近く見づらい』『軽度遠視』から、調節麻痺点眼を使い検査をしました。

すると…中等度の遠視が隠れていました。

これじゃあ、近くが見にくいわ~

 

B君は生来中等度から強度の遠視があったと推測されます。

3歳時健診以降、視力や眼位で異常が見つかることが多いのですが、B君はたまたま眼位異常もなく視力低下もなくスルーしてきてしまったのでした。

老眼と違って、調節力が十分あり、近くも見えるので、本人も周りも気にしていなかったようです。

中学3年生になり、勉強量も増えてきたあたりから、近くにずっとピントを合わせるのが辛くなってきたようです。

早速、遠視のメガネを処方することにしました。

 

後日、出来たメガネの確認にB君来院。

『すごく良く見えます。目も楽だし』

B君、良かったね。

お母さんも、『あれ?』と思い連れてきてくださって良かったです。

ぐっと、勉強しやすくなったはず。

受験、頑張って!

 

視力検査は、意義があります。

ただし、視力検査だけでは、分からないこともたくさんあります。

視力が良くても、例えば『本を読んだり細かい作業をすると集中できない・すぐ飽きる』場合、強い遠視が隠れていることもあります。

子供(未成年)は、自分からはあまり訴えないので、周囲が『あれ?』と思ったら受診をお勧めします。

一番楽な(目の)状態で、最大視力を出すアドバイスをするのが眼科医です。

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2019.7.30 見えるのに見えない

小3のAちゃんが、学校からの受診のお勧め用紙を持って来院しました。

視力検査の結果、両眼D、D。

Dは0.4指標が見えないということです。

半年前に当院受診時は、右1.2左1.2でした。

もう一度、視力検査をしてみても、右0.1左0.1です。

矯正眼鏡を入れても、視力は上がりません。

念のため、点眼薬を使って、隠れている遠視がないかの確認もしましたが、遠視・近視・乱視とも問題ありませんでした。

眼球自体の問題はありません。

 

こういう場合『心因性視力障害』を疑います。

目の心身症の一つです。

ストレスが原因で、目に何らかの症状が出ることがあるのです。

視力障害として現れることが多いですが、色覚異常(色の見え方が違う)や眼瞼痙攣、チックとして現れることもあります。

 

眼科医ですが、念入りにヒアリングをします。

家族構成、学校での様子・友人関係、習い事などなど。

保護者と院長がお話をし、患者さんの話はスタッフが聞くことが多いです。

大人にとっては些細なことでも、本人にとっては重大なことであることが多々あります。

家庭内の問題では、『お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから』と、我慢することが多い、上の子の患者さんが多いように思います。

学校では、クラス替えなどで、友人と離れた、新しい友人が出来ない、授業についていけないからつまらない…など。

習い事でびっしり放課後のスケジュールが埋まっていますが、本人は乗り気ではないものの、親の期待に応えようと頑張っている場合。

なぜかピアノの時だけ楽譜が読めなくなる…など。

 

 

また『メガネ願望』から、視力障害を起こすこともあります。

クラスの子がメガネをかけ始めた…兄姉がメガネをかけ始めた…など。

メガネ願望の視力障害に、トリック(眼科医のさじ加減)を使ったメガネを処方すると…

次回、出来たメガネでの視力はバッチリ!です。

自分好みの素敵なメガネを、褒めてあげると、とても嬉しそうです。

『どこも悪くないのに~何で~』と決して本人に言ってはいけません。

 

心因性視力障害では、日常生活は見えるから生活に危険は及ばないのですが、いざという時(例えば視力検査)には、見えないのです。

 

保護者と面談をして、ストレスの原因の解決に向けての対応策や、時には点眼を使いスキンシップを図ることを提案します。

低学年のうちなら、『ぎゅ~』と抱きしめるのも効果的です。

 

たくさんの見えない(視力の出ない)小さな患者さんに向き合ってきました。

ワーキングマザーとして、決して出来た母ではありません(院長)が、自戒も込めてお話ししています。

子供が可愛くない親なんていませんが、良かれと思ってしていることや、無意識な行動や発言が、子供を傷つけていることも少なくありません。

親も精いっぱい、子供も精いっぱい。

時に、繊細な子は、心身症になってしまうこともあるのです。

親が反省することも多々ありますが、自分を認めてあげることも大事です。

特に仕事を持っていると、何か子の問題が起こったとき、『愛情不足?手間かけ不足?』と自分(親)が不安になりがちです。

後から振り返ると、子からずいぶん試練を与えられたけど、乗り切った!と思える日が来ます。(←院長自身のことです)

かかわる時間が少なくても、『大好き!』というメッセージと、子供の話を傾聴・共感することが大事です。

 

『だから、大丈夫です。必ず見えるようになりますよ』とお伝えします。

 

Aちゃんは、骨折でしばらく体育や課外活動ができず、疎外感を持ってしまったようです。

メガネをかけて、みんなが褒めてくれたことで視力も改善。

骨折も治り、元気に活動できるようになったら、メガネをかけることを忘れることも。

 

眼科医ですが、時々、精神科的アプローチをすることもあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

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