2025.12.16 ワニは口からも目からも
読んだ本の舞台へ…今風に言えば聖地巡礼。
新聞で太宰治の作品『津軽』に関する記事を見た時、以前『津軽』を読んだことを思い出しました。
弘前・青森・ねぶた祭・ストーブ列車・特急しらかみの旅・酸ヶ湯温泉など過去何回かスポット的に訪問している青森県。
『津軽』を読みながらJR津軽線で北上、北端の竜飛岬までが今回の弾丸旅。
2022の災害で蟹田以降は運休のまま。
乗り合いタクシーで北上します。
はるか向こうに北海道が見える竜飛岬は、歌の通り北の外れです。
津軽の三厩(みんまや)地区の描写は、文学碑にもあります。
風が強く竜飛岬・階段国道・文学碑以外は読書の時間。
さて、帰りに少し時間があったので、『津軽』にも地名が出てきた大鰐温泉へ。
弘前からほど近い温泉町です。
津軽藩の湯治場として栄えた街です。
真っ先に向かった先は、湯魂石薬師堂(ゆだまいしやくしどう)。
結構有名だと思っていたのに、誰もいませんでした。
津軽藩主津軽為信が、難治の眼病を患った。
ある晩、夢の中に薬師如来が現れ『大庭の茶臼山公園下から湧き出る温泉で目を洗えば治る』とのお告げがあり、そのお告げに従って葦原を探させた。
大石の下から熱湯が湧いているのを発見し、その温泉で目を洗ったら、難治の眼病が治ったとのこと。
為信は大変喜んで、そこに薬師堂を立てたとのこと。
ワニの口から熱い湯が出ており、触ると『熱い!』
体温よりかなり高い温水による滅菌効果があったのでしょうか?
難治の眼病と言っても、温泉水で改善するくらいなら、前眼部眼病変だったのか??
ともあれ、眼病に対するご利益はあるようです(お守りはない)。
温泉水を出すワニはずっと見てても飽きません。
足湯(ぬるめ)に浸かりながら口から温泉を出すワニを見ていると『ワニの涙症候群』が浮かんできた院長。
目の前のワニは口から温泉、昔勉強したのはワニの目から涙。
『ワニの涙症候群』とは、顔面神経麻痺から回復した患者さんが食事中に涙を流す、顔面神経麻痺合併症のひとつです。
発症から6~9か月後に出現し、頻度は3.3%。
ワニは食事中に泣くという14世紀の古い物語や、ワニが獲物を食べるとき偽善的な涙を流すという伝承から由来するとか。
顔面神経障害後の再生神経線維が、回復過程で、顎下腺から涙腺へと間違って誘導された結果、咀嚼や味覚刺激の際に、唾液分泌の代わりに涙液分泌が起こると考えられています。
患者さんに遭遇したことはないけれど、記憶の片隅に勉強したことが残っていました。
もう一度呼び起こして勉強できたのも、医学生時代の下書きがあるから。
さて、足湯だけでなくご利益のあるお風呂に入らねば。
駅前に大浴場や売店完備のコミュニティセンターがあるものの、やはり此処は公衆浴場に入りたい。
地元民の御用達、老女たちの中に入っていきます。
『やっぱり温泉は良いね~』
大鰐もやしも名物。
温泉水で生育する売り切れ必至のもやし。
大鰐もやし公認のもやしラーメンを食べます。
1本1本が『1本でも、もやしです!』と主張するくらいのシャキシャキです。
津軽を旅しながら『津軽』を読み切り、前回とは違う読後感。
新しい本を読むのも楽しいけれど、再読もまた楽しいと思うこの頃。
思いがけず見つけた眼に効く温泉。
最後は、青森名物『味噌カレー牛乳ラーメン』で〆。
スポットで出かけるのは非効率と思われがち。
でもスポットだからハードル低く、飛び出せ日常!が出来ています。
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