2019.7.2 スマホ内斜視

今年6月開催の日本小児眼科学会&日本斜視弱視学会で取り上げられて、メディアでも話題になっている『スマホ内斜視(俗称)』

短期間のうちに、片方の目が内側に寄って、左右の視線のずれが生じる『急性内斜視』です。

片眼が内側に寄るとともに、遠くを見た時に『複視(ものが二重に見える)』を自覚し、受診に至ることも多々。

 

『内斜視』は、目を内向きにさせる筋肉の働きが強い場合、外向きにさせる筋肉の働きが弱い場合に起こります。

近くを見るときは、輻輳・調節(よりピントを合わせるために寄り目になる)のため、遠視が強い場合、遠視性内斜視を起こすこともあります。

最近は、乳児検診で見つかることも多く、幼少時に治療を開始します。

一般的な内斜視では、複視はありません。

 

『急性内斜視』は、眼科医が数年に1度遭遇するかどうかの稀な病気(脳や神経由来が多い)と言われていましたが…

学会のアンケートによると2018年1年間で5~35歳の急性内斜視患者の診察経験は4割(158/371人)以上。

そのうちスマホなどデジタル機器由来と関連があると思われた患者は約8割。

という結果。

 

学会では…『デジタルデバイスと斜視』のブースで、色々な症例が発表され、考察されました。

低年齢(小学生)では、視機能が未発達なので、影響を受けやすいのではないか?

近視の正しい矯正がされていないのが要因の一つでは?

患者さんたちの調節力(近くを見るときにピント合わせをする力)は正常だったので、従来の内斜視とは違うのではないか?

などなど…

 

スマホやタブレットが引き金になる可能性は高いのですが、因果関係はまだ解明されていません。

医学的には、因果関係がはっきりした後、治療法や予防法が確立されます。

 

読書の平均距離は30センチほど。

スマホだと7センチほど短い距離で見ていると言われています。

正しい矯正(度の合った)メガネで、読書と同様の距離(30センチ位)で、スマホやタブレットは見るようにしましょう。

また、長時間見ていると、輻輳(近くを見るときに目を寄せる眼球運動)ばかりになってしまいます。

最長1~2時間にとどめ、遠くを眺めることで、開散(遠くを見るときにやや目が外向きになる眼球運動)もします。

『30分見たら10分休む』くらいが、良いと思います。

 

『スマホ内斜視』と疑われた場合、まずはスマホの使用を控えます。

それでも回復しない場合(けっこう多い)は、視線が真っすぐになるような角度を付けたプリズム眼鏡をかけます。

目の筋肉に、ボツリヌス毒素の注射をすることもあります。

最終的には、手術(目の筋肉を動かす)です。

 

『スマホ内斜視』の言葉が独り歩きする懸念はありますが、2008年日本でスマホ発売以来の、新しい病気という気はします。

ベッドで寝そべりながらスマホ。

お風呂でもスマホを離さない息子。

『はあ~(母の嘆息)』

3人の息子に一斉ライン『スマホ内斜視注意!発症したら手術になることも!詳細は母まで!』少々脅しておきました。

『はい』

『ほーい』

既読スルー

 

眼科医としても母親としても、気になる病気です。

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2018.3.6 子供の近視

小児眼科学会が名古屋で開催されました。

向上心旺盛な当院の視能訓練士は、2日間にわたり、熱心に聴講してくれました。

 

この学会は、子供の目の病気に特化した内容で講演されます。

専門施設で行われている特殊・高度な医療から、開業医レベルの身近なことまで多岐に渡ります。

 

今回の教育講演のひとつ、『学童の近視をどうするか』

近視が進行すると、黄斑変性や緑内障などの病気を発症するリスクが高まります。

それらのリスクを下げるためには、学童期に、出来るだけ近視進行を抑制することが重要です。

 

屋外活動の増加は、近視抑制効果があることが分かりました。

1日1時間屋外で過ごすと、対象の13%に近視進行抑制効果がありました。

また、近視発症時期を遅らせるのに有効とも言われています。

院長が子供の頃は、毎日外で遊んでいましたから、現在、強度近視ではありますが、そのおかげでいくらかは軽減されているのかもしれません。

(近視は、遺伝が大きく関与します)

 

他に、累進多焦点コンタクトレンズ(コンタクトレンズに段階的に度が色々入っている)や、オルソケラトロジー(ハードコンタクトレンズを着けたまま寝て、日中の近視度を緩和する)も、近視抑制効果は報告されていますが、日本ではまだ近視抑制法として認可はされていません。

さらに、薄い濃度の調節麻痺点眼薬も有効という報告があり、治験中だそうです。

 

よく、保護者の方が、『私も近視だけど、こんなに早くメガネかけなかった』と我が子と比べられます。

屋外活動の減少、屋内遊びの多様性の増加(TVゲーム、スマホ、タブレットなど)が、近視化を早めているには違いないようです。

 

『スマホ内斜視』という言葉も出ました。

1日4時間以上4か月以上スマホを使用すると、内斜視(目が内側に向く)になりやすくなるそうです。

特に目とスマホの距離が20センチ以下では、大きく負荷がかかるので要注意です。

『スマホ育児』がなかった院長の子育ての時代は、まだ良かったのかもしれません。

 

『子供の近視』は、小さい子を持つ親なら関心が高いことと思います。

ネット情報に惑わされず、目の前の主治医にご相談ください。

 

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