2021.11.2 身代わりどじょう

信心の浅い院長ながら、寺社仏閣も訪ねるのは好きなミーハーです。

しかし、眼科医ゆえ『目』に関するご利益処には、一番関心があります。

学会先でたまたま見つけたお寺。

スタッフが見つけてくれたお寺。

患者さんが教えてくれたお寺。

その度に、当院の患者さんの眼病平癒を願い、お守りをいただき、院内に。

もちろん、眼科医(院長)が診断治療の道筋を示し、患者さんが点眼・通院順守の前提あってのプラスαですが。

現代医学が発展しても、治らない病気も多々。

しかし、現代医学だからこそ、少しでも進行を遅くしたり、不自由さを最低限に出来る治療を、医学的根拠を持って提示できます。

 

久しぶりに、見つけた『目』のご利益処。

しかも、縁日が開催される日が、たまたまの休診日。

この日を逃したらいつ行けるか…

決行すべし!

 

目的地は、富田林(大阪府)の瀧谷不動明王寺。

 

新幹線・近鉄経由で。

駅からは徒歩15分とのこと。

グーグルマップを用意するも、人の大きな流れが。

付いていけば間違いなさそうです。

お参りに向かう人は、平均年齢70歳超。

ウォーキングではないので、緩い服装、足取り。

縁日なので、出店も多く、のぞきながら歩いて行けます。

関西弁の話し声が良いBGMです。

豆・寿司・炊き込みご飯・野菜果物・こんにゃくなど食べ物。

洋服・帽子・靴下・タオル・靴・食器などなど。

全部合わせると、よろづや(雑貨屋)が開けそう。

 

目的の『瀧谷不動明王寺』に到着しました。

「日本三不動の一つ」といわれ、目の病気にご利益があるとされています。

いつものように、患者さんの病気平癒を願い、「晴眼守」のお守りを。

 

ここには、本堂に参る他に、色々な建物があります。

 

今回の目玉?は、『身代わりどじょう』

お不動様に目を助けてもらおうとお願いする際には、どじょうを持って参り、それを瀧谷の川に放してお願いすれば、このどじょうの眼が自分の眼の身代わりとなり、眼病から助けてもらえると伝えられています。

言い伝えでは、この川に放たれたどじょうは、すべて片眼は失明して白くなっているそうです。

お不動様がどじょうの姿となって、自らの片目を捨てて身代わりになってくれるからだそうです。

昭和の初めに、お坊さんが調べたところ、川には片眼の白いどじょうばかりだったそうな。

 

眼科医としては、どじょうが、遺伝性の角膜混濁をきたす病気に罹っていたのではないか…とも思うのですが(罰当たり)。

ヒトだったら、○○、○○などなど…と、角膜混濁をきたす病気とその原因を考えてしまうのも、職業柄。

 

信心が足りないながらも、どじょう流しをしてみます。

缶に入ったどじょうの稚魚が並べられています。

一つ選んで購入します。

お願いを込めて、樋からどじょうを優しく放流します。

そこから、下の川に下っていきます。

小さな浅瀬ですが。

 

お願いを背負って大きくなってね。

 

神聖な場で、浅草のどぜう鍋、安来のどじょうのから揚げ…浮かぶ院長は、本当、信心より煩悩(反省)。

 

眼病以外に『芽の出るお不動様』と言われ、勉学、スポーツ、芸事、商売などにも御利益が。

また、縁日の日、経木は当日の護摩行で唱えてもらえます。

そのため、多くの人で賑わうお不動さんのようです。

 

『晴眼守』で患者さんの顔が少しでもほころんでもらえたら幸いです。

院内におまつりしてあります。                           

 

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2021.10.26 恋です!変です?

「恋です!」

10月から始まったラブコメディードラマ。

新聞番組欄の案内に惹かれ、見ることに。

 

弱視で盲学校に通う主人公ユキコと純粋(かつ短思考)なヤンキー少年・森生が出合い、それぞれを理解しあい、惹かれあっていくというストーリー。

 

白杖を持ち、点字ブロックを歩いているユキコ。

ある日、ユキコの進行先の点字ブロック上に座って、他のヤンキー達とたむろしていた森生。

ユキコの白杖が森生に当たったことが出会い。

恋の始まりです。

 

あり得ない設定ではありますが、若い二人のラブコメディは、『視覚障害』というハンディも、重くならず。

 

弱視と言っても、盲学校に通うレベルになると、視覚障害者認定を受けているはずです。

私たち眼科医(障害者認定資格要)は、認定のための申請用の診断書を書きます。

数年後に変化する病気(回復もしくは悪化)なら、〇年後に再申請が必要になります。

全盲の場合は、等級が変わることはありません。

 

名古屋市では、小学校により弱視学級が設けられており、院長の受け持ちの小学校の一つでは、数年前まで開級されていました。

盲学校まで行くほどでもないけれど、教科によっては、特別な配慮が必要な場合です。

年一回、生徒の現状について、教育委員会・盲学校・弱視学級併設学校関係者(教師・眼科医)で会議が開かれます。

弱視学級は、該当者がいなければ閉級になります。

 

さて、ユキコは、白杖を使い颯爽と点字ブロックを歩いていきます。

白杖は、自分の先に障害物がないかを確認するので、障害物や物の位置を把握するのに有用です。

 

携帯電話や時計は音声で。

映画も音声ガイド付きのを利用します。

目が見にくい人にとって音は大変重要です。

そのため、雑音が多いところは、聞きたい情報を取り出すのに苦労します。

 

おかずとのコントラストがはっきりする食器の色、指を切らないようガードを付けたり材料とのコントラストがはっきりしたまな板。

その他、いろいろ日常の工夫が出てきます。

 

そのような視覚障がい者あるある話は、案内人として、当事者でもあるお笑い芸人の濱田祐太郎さんが解説(ドラマにしては珍しい)してくれるのも興味深いです。

 

森生に『ユキコさんは普通ですよね。俺に比べて…』と言われ『私が普通?』と聞き返します。

森生にとっては、弱視であろうが、社会(学校)生活をきちんと送っているユキコは、まさしく普通。

二人の身長差が大きく、声が届きにくい解決策として、自分(森生)の身長を縮める方法が見つからず、ハイヒールをプレゼントしてしまう森生。

考えなしではありますが、その一途さが見ていて微笑ましいです。

 

白杖を持つことは普通じゃなくなる。

中途失明の方はそう思う人が多いです。

自分は普通じゃなくなるんだ。

でも、良くも悪くも普通って何?

 

かなり視覚障害が進んでいても、白杖を希望されない方もいます。

白杖は、進行先の障害物を予測するものでもあり、周囲に配慮を促し、自身の安全を守るものでもあります。

ドラマで使用されているものや、折りたたみもあり、状況に応じて使用することも可能です。

白杖を持つことは、視覚障がい者として自分を認めること。

白杖を持つ=障害を受容。

 

重くなりがちなテーマを、明るくコミカルな恋愛ストーリーで描いたところがすごい!

まずは、楽しみながら、興味を持ってもらえれば。

オバサン(院長)、このドラマは見逃せません。

変です?

 

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→2018.3.13  R-1グランプリ

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2021.10.12 目の愛護デー

10月10日は体育の日と、今も連想する昭和世代の院長ですが、目の愛護デーでもあります。

10/10を縦に並べると眉毛と目に見えるからです。

 

愛護デーにちなみ、眼の健康について。

 

子どもの視力は悪化傾向にあります。

学校での視力検査で、裸眼視力1.0未満の学生は年々増加。

2020年度では小学生約30%、中学生約60%、高校生では約70%弱の割合です。

もっとも、1.0以上だからと言って、遠視や乱視が隠れているかもしれませんし、近視なのに頑張って裸眼視力を出している場合もあるので、ひとつの目安です。

片眼だけが視力不良の場合も、気づかないことが多いので、『受診のお勧め』をもらったら必ず眼科受診してください。

 

近視は、近くにピントが合いやすく、遠くがすっきり見えない状態です。

近視進行につれ、眼球の奥行(眼軸長)も長くなり、強度近視の眼球はラグビーボールのような形状です(ふつうは球状)。

 

遠視は、遠くが見やすいのではなく、遠くも近くもピント合わせをしないと見えない目です。

近くを見るときのほうが、ピント合わせの力を大きく使うので、近用作業(読書や勉強)に疲れたり飽きやすいこともあります。

遠視の程度によっては、裸眼視力がよくても、眼鏡装用を勧めます。

 

乱視は、茶目(角膜)の縦と横のカーブが違っていて、ピントの距離が合う距離が違っている目です。

ほとんどの人は、多少なりとも乱視があります。

患者さんが自己申告で、『私、乱視があるんです』と言われる場合も、問題になる程度とそうでない微小な乱視と様々です。

眼科的に問題になるのは、乱視を入れないと矯正視力が出ない場合。

一般に角膜はほぼ円形をしていますが、乱視が強いと楕円のイメージです。

 

 

弱視は、視力が育っていない眼の状態を言います。

生直後の赤ちゃんは、まだ視力がほとんどなく、その後周囲の刺激を受けて、視力が発達します。

3歳児健診、就学時健診は節目の検査です。

健診で受診を勧められたら、必ず来院してください。

早く発見することで、視力の成長は可能です。

タイムリミットは8~9歳なので、弱視治療の有効期間は限られています。

 

学童期には、近視と診断されることが多いのですが、原因は『遺伝』と『環境』です。

強度の近視は、眼軸長が伸びている(ラグビーボール状)ので、身長と同様、遺伝によるものは大きいです。

眼軸長は成長により伸びますが、伸び率に差があります。

また、近年は、端末による近用作業(PC、タブレット、スマホ、ゲーム)が増え、屋外活動が減る傾向にあるため、環境要因も大きくなっています。

実際、昨年のコロナ渦での一斉休校期間に、子供の近視は、ずいぶん進行しました。

 

20/20/20ルール。

20分端末を見たら20秒以上20フィート(約6メートル)遠くを見ましょう。

明るい部屋で作業をしましょう。

目が乾燥しないよう、意識して瞬きをしましょう。

寝る前には、見ないように。

睡眠リズムの乱れになります。

太陽光での屋外活動も有効です。

学校の休み時間や体育だけで十分時間は確保できます。

強い日射しでなくても有効です。

 

近視の研究は、近年どんどん新しい知見が報告されてきています。

近視が強くなるに従い、網膜剥離、緑内障になりやすくなります。

強度近視だと、近視のない人に比べて、網膜剥離は22倍、緑内障は14倍の発症率です。

 

学校医として、地域のかかりつけ医として、診ていた子供さんたちも、もう立派な成人。

そのお子さんたちがやってきます。

デジタル端末で何でも調べられる昨今。

眼も心も不安になりやすいから、目の前の眼科医に聞いてくださいね。

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2021.9.14 見つめられても…

高校生のA君が、お母さんと一緒に来院されました。

『1年位前から、息子と話していると、片眼が外に向いているんです』と、心配そうなお母さん。

 

『自分では、気づいていますか?

お母さん以外の周りの人から言われたことは?』と本人に質問。

 

自分で気にしたことはない。

母親だけが気にするだけで、周りは誰も気づいたり、指摘しないそう。

父親からも(まあ、この年頃だと、父親と顔を合わることも少ないでしょうが)。

 

『まじ、きもいんですよ~この人(母を指して)。

話してると、俺の顔じっと見てきて…まじ、うざいんっすよね~

それで、なんか変…とか言ってくるし…』

院長の脳裏に『うっせわ~♪』が流れます。

母親の前で…

 

『まあまあ…診察始めましょう』

 

診察を始めます。

ペンライトを持ち、正面視させると、両眼ともまっすぐ前を向きます。

しかし、斜視検査をすると、片眼が外側に向きます。

輻輳(寄り目)は十分できています。

軽い近視あり。

その他、眼の病気はありません。

片眼の外れ方も軽度なので、立体視は正常でした(斜視だと立体的に見る力が育たないことがあります)。

 

『お母さんのご指摘のように、やはり、片眼が外向きますね。

いつもは正面視で問題ないので、間欠性外斜視です』

『え~何々?まじっすか~』

 

間欠性外斜視は、正面視だと、まっすく前を向いているのですが、何かの拍子で片眼だけが外側を向く斜視です。

外向きの力が多々強いので、片眼が外側を向いてしまいます。

いつも(恒常性)ではなく、時々(間欠性)。

緊張が取れたときとか、気が抜けたときに、片眼が外れやすくなります。

なので、人前(学校などでの緊張状態)では気づかれないことが多いです。

家で家族が気が付くか、自分で気が付くか…

子どもが小さいときは、母親(たまに父親)が気付くことがほとんどです。

学校検診で見つかることもあります。

 

治療は、外向きの程度により、経過観察・眼鏡・手術があります。

Aくんには近視もあったので、眼鏡を処方することにしました。

 

『どう?』

『いい感じっす』

『お母さんが気付いてくれて、眼科受診することになって良かったですね~

お母さんほど、Aくんのこと見つめてくれる人はいませんよ。

だから、変化に気づけたんだから。

うざいなんて言わないで。

ね~お母さん』

お母さんをしっかりフォロー。

 

『わかるけど、時々マジうざくなるんですよ~』

息子の言い分もあるけれども…

 

息子も、思春期の頃、母の気持ちも知らず人前でボロクソに言ったよな~

母の愛は無限の慈愛です。

パートナーの愛は、恋愛から始まる有限の愛。

長い年月をかけて、慈愛になるのだけれど(院長も慈愛の域に…)。

 

親子連れが来院される度に、自分の子育てを顧みて、診療後、安心して帰っていただきたいと思っています。

 

*来週は『公センセの部屋』お休みします

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2021.9.7 赤毛のアンと緑内障

ステイホームが続くようになって、院長の読書熱も復活。

新刊も読みますが、児童文学や古典も気になるように。

 

さて、先日書店で見つけた『赤毛のアン』

何十年かぶりに、同じ訳者(改定あり)の文庫シリーズが目に留まりました。

 

もう一度読みたい!

いつか読もうと思っても、老眼・ドライアイに加え、集中力の欠如が起こりうる現実。

読むなら、今!

 

赤毛のアンシリーズは、『赤毛のアン』から始まって『アンの思い出の日々(上・下)』まで全12巻。

今では大人買いです。

 

『赤毛のアン』

孤児院のアンは、グリン・ゲイブルス(物語の場所)の独身のマシューとマリラ(兄妹)に引き取られます。

アンは11歳、マシュー60歳、マリラは50代。

美しい自然の中で、多くの人と関わりながら成長していくアンの物語です。

アンの年齢に近かった少女(院長)は、アンを中心に物語に夢中になっていましたが、いまやマシュー・マリラと同世代。

冷静になって様々な立場で読む自分がいます。

 

 

さて、このお話の中で、マリラは、度々頭痛を起こします(以下原文抜粋)。

 

『~頭痛のせいなんだよ。

近ごろ、しょっちゅう痛むのさ、眼の奥のあたりがね。

スペンサー先生は眼鏡のことばかりやかましく言いなさるけど、いくら眼鏡を変えてもちっともよくならないんだよ。

6月の末に島へ有名な眼科医が来るから、ぜひ見てもらいなさいと先生が言いなさるんだが、私もそうしなくてはなるまいと思うのさ。

読むのも縫うのも不自由でね。~』

 

『~あの眼科医が、明日、町にみえなさるから診てもらって来いと言いなすったんだよ。~

私の目に合ったメガネをつくってもらえばありがたいことだよ。~』

 

マリラは眼科医に診てもらいます。

『~もう読書も裁縫も、眼に負担がかかることは一切やめなさいって。

泣くのもよくないんだとさ。

それで先生のおっしゃる通りの眼鏡をかければ、これ以上悪くなるのは食い止められるし、頭痛も治まるだろうって。

そうしなければ、半年のうちに目が全く見えなくなるっていうんだよ。~』

 

少女(当時の院長)は気にも留めず読み進めたのに、眼科医(院長)の今、その部分で停止、考察。

マリラは、緑内障を患っていたのではないか…

 

緑内障には隅角が広い開放隅角緑内障と狭い閉塞隅角緑内障があります。

閉塞隅角の患者さんは、何かのはずみに、隅角がより狭くなると、眼圧が上がります。

遠視の人が多いです。

うつむいて作業をすることで(特に暗いところで)、隅角がより狭くなり、眼圧が上がります。

そこそこ上がると、眼が押されるような疲れ・痛みや眼精疲労、頭痛が起こります。

ただし、姿勢によって、改善されるので、眼から由来するとはなかなか気が付きません。

また、加齢により白内障になることで、隅角が狭くなりがちです。

何かの拍子で、隅角が閉塞してしまうと、急激な眼圧上昇と激しい眼痛・頭痛を起こします。

頭の病気かも?と思っていたら、眼の病気だったという『緑内障発作』です。

 

マリラは、中等度以上の遠視で、慢性閉塞隅角緑内障だったのではないか…というのが、院長の見立てです。

頭痛・眼精疲労など、小さな眼圧上昇を繰り返した結果だったのでは。

すでに、視野欠損(自覚の有無は別として)もあったのではないでしょうか。

 

現代だったら、マリラに手術を勧めます。

 

100年以上前、作者のモンゴメリは、どんな病気を想定して描写したのでしょうか?

赤毛のアンで、眼の病気に出会うとは…

 

1巻目にして、足踏みをしてしまった院長。

全巻制覇まで、ゆっくり読み進めていこうと思います。

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2021.8.31  パラを見る

東京2020パラリンピックが開催されています。

オリンピックはニュースで結果を知ったくらいでしたが、パラリンピックのいくつかは、中継で見ました。

『障がい者スポーツ医』としてはぜひ見なければ!

『障がい者スポーツ医』とは、障害がある人たちがスポーツを生活に取り入れ実践していくためのスポーツ指導者です。

日々の健康増進のためのスポーツから、競技としてのスポーツまで指導内容は多岐にわたります。

専門科目は多岐にわたるので、恐らく、各々自身の専門科を活かしたスポーツに関与することが多いと思います。

院長は眼科医なので、視覚障がい者スポーツに特に興味があります。

 

視覚障がい者の種目としては

ゴールボール

5人制サッカー

陸上

水泳

柔道

自転車(二人乗りで前に晴眼者、後ろに視覚障害者)

 

視覚障がい者と言っても、その程度は様々です。

視力の程度(全盲~0.1)や視野の程度によってクラス分けがなされます。

クラス分けをするのは、障がい者スポーツ医の中でもパラリンピック級の選手のレベルを判定できる上級の医師たちです。

障がいの部位(視覚や身体、知的)などにより、各種目ともクラス分けがなされています。

個々の障害が競技に及ぼす影響を出来るだけ小さくし、平等に競い合うために必要な制度です。

 

さて、一番気になっていたのは、ゴールボール。

ゴールボールは、視覚障がい者だけが対象で、交互に投球して相手のゴールを狙い、得点を競うスポーツです。

 

院長は、2回、ゴールボール実践体験があり、少し身近に。

まず、視覚障害の程度による不公平をなくすために、アイシェード(真っ黒なゴーグル)をします。

これで、まったく見えなくなります。

選手3人が横並びに位置するのですが、相手がどこにいるか見当がつきません。

鉛の鈴が入っている重さ1.25キロのボールを相手のゴールにシュートします。

ボールがガードされれば得点にならず。

ガードをくぐり、狙い通りにゴールに入ると得点が取られます。

暗闇の中で歩く、ボールを投げる(というより重いので転がす)…

音のするボールが向かってくるのはわかっても、正しい方向は?ガードするためにどの位置に向かっていけばよい?足取りも及び腰…

わずかな体験なのに、ぐったりの院長でした。

 

さて、実際の試合をテレビで見てみると…

投球の時点で、まったく違います。

体験の時は、選手はもう少しゆっくり投球していたと記憶していますが、勝負をかけた本番は全然違います。

ぐるっと回転させソフトボール投げ+砲丸投げも混じっているような投げ方(院長表現下手)で、すごい速さでバウンドして相手のゴールに飛んでいきます。

スピンの効いた時速60キロ程度ともいわれる重いボールをガードできるのは、圧巻です。

聴覚と触覚を研ぎ澄ますことで、ボールの軌跡や他選手の動きが分かるのでしょうか。

 

他の競技も見ましたが、障がいを克服して何かを成し遂げるのは大変なことです。

日常生活でさえハンディがあるのに、ましてやパラリンピックに出場など想像を絶するものがあります。

障がいを克服(残存機能・他機能を生かす・代替する、補装具を使う)して、健常人でさえ成し遂げられないスポーツの頂点に立ったパラアスリート。

 

パラリンピックを詳しく知り、大きな興味と知識を持って観戦できたことは、障害者スポーツ医として最初のステップ。

今後は、地域の障がい者スポーツの普及・指導に関わっていきたいです。

 

※関連記事もお読みください

→2020.3.3 障がい者スポーツ医

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2021.8.24  寝押しのイメージ

眼鏡処方希望で患者Dさんが初診で来院。

ふだんはハードコンタクトレンズ(HCL)装用で左右とも視力1.2。

しかし、50代になり、近くを見るのはコンタクトなし(裸眼)のほうが見やすくなり、コンタクト装用も疲れるようになり…眼鏡はどうかな…と言うのが受診のきっかけ。

 

軽い近視があり、この年齢だと、裸眼で一番焦点が合いやすい程度です。

眼科的には異常はありませんでした。

近くは裸眼で見ることにし、遠用眼鏡の処方を始めました。

しばらくすると…検査スタッフが『眼鏡で矯正視力がしっかり出ません。HCLだと出ていたのですが』

 

HCLの使用状況を聞きました。

連続装用可のHCLだったので、連続装用(ずっと付けっ放し)していたと。

一般にHCLは連続装用と終日(起きている間)装用対応のものがあります。

連続装用可であっても、眼科医の指示のもと、夜勤など限られた仕事の場合に限定すべきで、自己判断で自由に付けっ放しで良いわけではありません。

 

やはり…

『HCLをずっと付けっ放しだったので、角膜(茶目)が押され続けて、角膜カーブがより平坦になってしまっているんです。眼科的に、角膜カーブがフラット(平坦)になると、近視が減る計算(詳細は割愛)になります。

なので、本日測定した近視の程度は、本当の値より低く出ている可能性があります』

Dさん、少し難しそうな顔。

眼球模型を見せながら…

『寝押しのイメージで…HCLで角膜を押すと、角膜は少しのっぺりするんですね。そうすると、角膜がのっぺりすることで、近視が減る仕組みなんです』

『なるほど!寝押しね。わかりました』

その後、『寝押し』っていうワード、懐かし~で盛り上がりました。

 

寝押しとは、布団の敷布団の下に衣服を敷いて、一晩寝て体重をかけることで、再度スカートやズボンのひだや折り目を付けることです。

アイロンより手軽な方法です。

院長が中高生の頃は、学生の毎晩のルーティンだったと思います。

 

我が家では息子の制服のズボンにアイロンを当てるほど、気の利いた母(院長)でもなく、ベッド生活なので脱いだ制服をそのまま着ていたような…

 

『寝押しって知ってる?』息子たちに聞くと

『何それ?知らない』という答え。

現代では死語になっている!?

 

さて、Dさんには、1週間ほど、HCLを中止してもらうことにしました。

再診時、角膜のカーブは前回に比べてややスチープ(急峻)になっていました。

近視も、前回測定時よりやや強めに。

これが本来のDさんの近視度数と角膜カーブ。

スムーズに視力も出て、眼鏡処方に至りました。

 

最近は、ソフトコンタクトレンズ(SCL)が大多数を占めるので、角膜カーブは以前より大きく問題になりませんが、大事な指標ではあります。

 

良く見えるようにする治療の一つに、オルソケラトロジーがあります。

角膜矯正療法と言う意味です。

個々の角膜形状に合わせてデザインされた専用コンタクトレンズを夜間装用することで、角膜カーブをよりフラットにします。

簡単に言えば、角膜の寝押しです。

夜寝るときに、個々にデザインされたHCLをして、朝起きたら外す。

日中は裸眼で過ごせる。

手術のような侵襲はないため、学童児でも受けられる方はあります。

ただし、継続が必須(止めたら戻る)ですし、その都度、角膜カーブに合ったHCLを作成しないといけません。

 

院長も強度近視なので、裸眼ですっきり見えることに憧れた時期もありました。

50代になった今、裸眼で近くが見えることの有り難さを感じる日々です。

近視…眼鏡で見えるんだったら、全然悪い目じゃないですよ!

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2021.7.13 うその病気

日本眼科学会認定、眼科専門医の更新手続きの案内が届きました。

専門医を取得後、5年間で、学会や講習会への出席・眼科雑誌などの課題提出・書籍の執筆投稿などなど決められた単位を100単位以上取得。

眼科医として従事していること。

これらの条件を満たしていれば、更新手続きに進みます。

通常は5年ごとの更新です。

満期は9月30日なので、5年満期までにあと2か月ありますが、院長はすでに4年で100単位以上を取得しているので、早速更新手続きをする予定です。

 

眼科(大体は大学病院とその関連病院)に5年以上従事し、決められた数以上の症例の報告、手術件数、学会発表、論文発表などを達成し、専門医受験資格が得られます。

5年間眼科医として従事していると、そこそこ診療も手術もできるようになってきます。

しかし、専門医試験には、5年間日常診療だけやっていれば太刀打ちできるかと言うと、そういうものでもなく…

5年目までの臨床医は、日々の診療に追われています。

また、大学病院などの専門施設にいると、必然的に専門分野の患者さんが多くなり、患者さんの病気に偏りが生じます。

眼科専門医試験には、眼科学すべての分野の基礎から応用までが出題されます。

単純に知識として覚えればよい基礎問題から、写真(目の色々な部分や検査結果)を見せられ順に解答していく応用問題まで。

専門医受験が決まると、仕事の合間を縫って、机上の勉強。

医師国家試験以来の机上で集中の勉強です。

 

2日間にわたり、東京で実施されます。

1日目は筆記試験。

2日目は諮問です。

筆記以上の緊張、試験官は大学の教授陣です。

 

1日目はまず大丈夫、と臨んだ2日目。

1問目はもう覚えていませんが、恐らく楽勝。

2問目は、手術の器具を見せられました。

これは、何に使用しますか?

○○の手術の時です。

どのように?

(持って)○○のように。etc 次々と質問、解答が繰り返され、クリア。

3問めは、〇歳男性見えない主訴で来院患者(架空)の情報を渡されます。

視力は右眼○○左眼○○、眼圧右○○左○○

『まず何の検査をしますか?』

『○○です』

答えると、その結果を示されます。

眼底写真を見せられます。

『視野はどうですか?』

視野結果を見せられます。

『○○はどうですか?』

『○○です』

思い浮かぶ病名がどんどん否定されていきます。

主訴と検査結果が合いません。

『患者さんは、見えないから診断書を書いてほしいと言ってるんですがね…』

『すみません、書けません…』(泣きそうになっている…)

『先生(当時若輩の私)、これは詐病の症例です。こういう症例に遭遇することも頭において頑張ってください』

 

詐病とは、経済的または社会的な利益の享受を目的として病気であるかのように偽る詐欺行為です。

見えているのに視覚障害者を装ったり、聞こえているのに聴覚障害者を装ったりして、障害年金の受給などを企む人がいるのです。

 

幸い、現在まで、詐病を疑う患者さんに出会ったことはありませんが、今でも印象に残る最終諮問でした。

 

最終諮問が不出来だったので、落ちた~と、落胆して乗った帰りの新幹線。

考えるうちに泣けてきました。

今までで一番悲しい新幹線です。

 

詐病の診断は出来なかった(見抜けなかった)けれど、無事、眼科専門医試験合格のお知らせ。

そこからが本当の眼科医スタートでした(改めて実感)。

眼科医の道は長~い。

ずっと眼科医一筋といえども、発展途上。

 

専門医の更新のたびに、思い出す最終諮問。

今年も新しい眼科専門医たちが誕生します。

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2021.7.6  若さより老い?

高齢者のワクチン接種も順調で、1回目はもちろん、2回目接種終了後の来院も多いこの頃です。

『先生(院長)はどうだった?』

『私は、2回とも全然問題なかったですけど』

『そう?私、その晩熱出たわ。腕も痛かったし』

『副反応は若い人のほうが多いらしいですから、若いってことですよ!』

『そうかしらね~まあ、そういうことにしとこっか』

日々の診療での一コマです。

一日に何場面もあります。

 

50代院長でも、お姉様オバサン(70代)達とラウンドすれば『若いわね~』

(当然、年下ですから)

自分より下の世代からは『若く見えますね~』

(実年齢より若々しく見えるだけであって、若いわけではない)

十分自覚しているオバサン(院長)です。

でも、言われるとちょっと嬉しい。

 

院長自身、『若い子』『若い』を口にすることが多くなりました。

傷の治りで言うと、眼の表面やまぶたのキズの患者さんは日々来院されますが、40歳未満の患者さんは確実に治りが早いです。

年齢に応じて、治癒までの期間は変わります。

子どものキズは、眼に関わらず、治癒までがとても早い。

『若いから大体〇日くらいで治りますよ』

若いを強調してしまう院長です。

 

眼のパーツだけを見ても、加齢による変化は各部位で見られます。

10代20代のキラキラした眼(眼底も)は、若さゆえ。

そして、『老眼』は加齢を感じさせるターニングポイントです。

自覚するかどうかは別としても、一般には、眼科で検査をすれば、40歳以降老眼(調節力の低下)が出てきます。

若く見えていても、文字を読む距離や暗所での見え方などから、年齢が推定されてしまいます。

院長も当然老眼が出てきています。

近くにピントが合いにくくなった40代の患者さんに『老眼です』と言うと、多くは『ショック~』と返ってきます。

それでも、院長自身が体験しているので、その気持ちは若いころよりずっと共感できるようになっています。

『老眼』と言う状態は眼科学的に知っていても、実体験(院長の加齢)が加わると、更に理解が広がります。

医師が自分の専門の病気をすべて体験することはできませんが、診療の経験と誰もが通る加齢性変化により、患者さんの診療により還元できるものとなっています。

 

『若い』は遠き?過去のちょっとした羨ましさではありますが、しがみつきたいものではありません。

ただ、未熟でも、輝いていると思われるのは若さゆえなのかも。

外見は若々しさには重要な要素ですが、内面もそれ以上に重要だということも、加齢とともに気づかせてくれます。

普段接している年長の患者さんたちや、医師や趣味つながりの先輩たち(10歳以上年上)の信条・生活スタイルは、いつもお手本や目標になります。

 

結局、若さより高齢化(将来)に目が向いている院長です。

 

高齢者の性格特性としてレイチャードの5類型

1.円熟型:過去を後悔せず未来に希望を持つタイプ。寛大。

2.ロッキングチェアー型(依存型):現実を受け入れる。物質的、情緒的な支えを与えてくれる人に頼る傾向。

3:防衛型(装甲型):若い時の活動水準を維持しようとするタイプ。老化を認めない。

4:憤慨型(敵意型):老いに対する不満が他者への攻撃となって現れるタイプ。人生の失敗を人のせいにする。

5:自責型:人生を失敗だったと考えてふさぎ込むタイプ。

 

若さは過去のことですが、老いは未来。

円熟した将来に向けて、小さな積み重ねです。

カテゴリー:公センセの想い 眼に関すること

2021.6.29  ふか~い視力?

大型自動車免許の更新時、深視力検査に合格できなかったと患者(A)さんが来院されました。

 

深視力検査は、内側で棒が前後に動く箱を覗いてスイッチを押す検査です。

箱の中に2.5メートル離れた位置に3本の棒があり、中央の棒が前後に動き、左右の棒と横並びになった時にボタンを押します。

左右の棒との位置ずれを測定する検査です。

目的は、物体の遠近感や立体感の確認です。

大型車は、側・後方確認にミラーを多用するため、距離感や奥行き感が正確につかめないといけません。

眼科的には、両眼視機能の検査の亜型です。

 

院長は普通免許のみなので、実際に検査を受けたことはありません。

家人は、大型免許を持っている(一度も活用なしですが…)ので、更新のたびに深視力検査を受けています。

 

Aさんは45歳。

斜視はなく、眼位は正常です。

両眼視機能の立体視は異常なし。

眼自体に問題はありません。

軽い近視と老眼があります。

近視になったのは30代後半で、運転時眼鏡を使用することも時々忘れるほど。

裸眼視力は右0.3左0.4

眼鏡の視力(矯正視力)は右0.8左0.9。

普通免許の更新は、両眼で矯正視力0.7以上なのでパスはするのですが…

夜間の運転だと両眼で1.2くらいあるほうが安心です。

大型免許なら日常時でも尚更、良い視力が求められます。

 

一通りの診察が終わり、Aさんには、夜間運転にも十分な眼鏡を処方することにしました。

老眼もあるので、処方した眼鏡は運転時に。

それ以外は弱い眼鏡や、裸眼で見てもOKの話をしました。

 

Aさんは、再検査でパスできました。

めでたし、めでたし。

 

 

深視力検査の目的は、良好な矯正視力と立体視の確認なので、深視力検査機が置いていなくても(ほとんどの眼科にはありません)、眼科受診で何が問題かはわかります。

眼位に異常はないか。

斜視や斜位があると、立体視がうまくできないことがあります。

屈折異常(近視・遠視・乱視)があっても眼鏡やコンタクトレンズで適切に矯正されているかも大事なポイントです。

そして、何かの眼の病気があるか否か。

 

深視力検査は練習とか慣れでパスできるという話を聞いたことがありますが、矯正視力と立体視が肝(きも)です。

 

 

日々、大型免許更新のみならず、様々な用途で眼鏡やコンタクトレンズを希望され受診されます。

眼科で処方、正解です。

眼に異常がないかどうかは、とても重要なことです。

病気がなく、単純に屈折異常だけでも、患者さんのライフスタイル・用途によって処方度数が変わります。

どういう時に使いたいか。

何をすることが多いか。

仕事は何か。

性格はどうか(意外に大事!)などなど。

総合して、院長が最終度数を決定します。

病気があれば、視力や視野の程度に応じて、さらに、患者さんの要望に最大限添うよう処方します。

時には、残っている視野をうまく使って見る方法などもアドバイスします(頼りになる視能訓練士たちもお手伝いします)。

 

眼鏡・コンタクトレンズの世界も奥深いです。

今日も、患者さんに見え方の確認をしながら、眼鏡やコンタクトレンズの度数変更をする院長です。

微妙なさじ加減で、見え方の質や疲労感が変わります。

患者さんからの情報も大切。

小さな変化でも遠慮なく言ってくださいね。

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