2020.10.20 抗がん剤と眼

『まつげを抜いてほしい』患者さんは、よく来院されます。

多くは、高齢の方で、まぶたの脂肪の減少などにより、まぶたの肉付きが変わり、まつ毛が内に向き、角膜に当たりゴロゴロしてきます。

傷が出来たり、当たる刺激で涙が出ます。

内側から外側まで全体に内に向いている場合は、手術適応もありますが、部分的な場合は抜去することになります。

 

Aさんもまつげを抜いてもらうために来院されました。

初めて診察した時のAさんの逆まつげにはびっくりしました。

1本1本が太くて、いろいろな向きにカールしているのです。

ビューラーの同方向へのカールではなく、明日・明後日・明々後日方向へ『くりくり』

眼科医人生の中で初めて見るまつ毛の形態でした。

しかも、攝子(せっし)でつまむと、根元からはらはらと抜けていきます。

『驚かれたでしょ!?』

『はい、眼科医を割と長くやっていますが、初めてです』

『これ、抗がん剤の副作用なの。しばらく、定期的に抜いてくださいね』

 

眼科では、初診時、眼以外にも、内科的な病気がないか申告してもらいます。

高血圧や糖尿病は目にも大きく影響します。

しかし、癌までは、眼科医に打ち明ける方はほとんどありません。

 

診療後、調べてみると、Aさんの抗がん剤は『分子標的型』

がん細胞に存在する特殊な物質をピンポイントで攻撃する抗がん剤です。

目に関する副作用として、まつ毛が長くなる長生化やバラバラの向きに生える睫毛乱生がありました。

 

何ヵ月か、まつ毛を抜きに来られていたAさんですが、ある日の診察で…

いつものくりくりのまつ毛がなくなっています。

以前より細く短く、しかし、しっかりした本来のまつ毛に戻っています。

『まつ毛、元通りになったでしょ。抗がん剤、変わったの』

抗がん剤の中止・変更でこんなに変わるとは!?またまた、大きな発見でした。

 

緑内障の点眼では、時に、角膜の傷を引き起こすことがあります。

Bさんは、右眼の緑内障のため、眼圧を下げる点眼薬を右眼だけにさしていました。

眼圧下降効果もあり、順調でしたが、ある日、角膜に傷が。

点眼している右眼だけでなく、もう片眼の目も。

点眼薬による副作用ではなさそう…

様子を見ていたところ、次の受診時は『見えなくなってきた』

角膜の表面の傷だけでなく、濁りまで出てきていました。

眼科的に検査しても説明が付きません。

またまた眼科医人生初。

もう一度Bさんに他科の病気を尋ねました。

『そうそう、今、がんの治療してるんだよね』

 

約1か月後、来院されたBさん『前みたいに、見えるようになった!』

診察すると、1か月前の、角膜の傷や濁りはほとんど治っています。

先の抗がん剤が中止になったそうです。

Bさんの抗がん剤は、殺細胞性。

細胞が分裂して増える過程に作用し、細胞増殖の盛んな細胞を傷害します。

 

この手の抗がん剤は、眼科医の中では、鼻涙管(涙が鼻へ流れていく道)が狭くなったり詰まったりして起こる流涙は周知になっています。

そのための手術なども報告されています。

 

院長が医師になってからの抗がん剤の開発・発展は著しいですが、眼科開業医との関わりはほとんどありません。

抗がん剤による眼への副作用(すべての患者さんにではない)を、今回、しっかり勉強しました。

貴重な症例を与えたくださったAさん、Bさんに感謝と引き続きの治療にエールを送ります。

医師何年経っても、学ぶこと多しです。

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2020.5.26 ステイホームで見すぎちゃう

院長のスマホは、週の始めに、先週のスマホ総視聴時間を知らせてくれます(元々そういう設定?)。

ステイホームになってから、スマホだけでなく、タブレットやPCを見る時間の増えたこと、増えたこと。

 

さて、しばらくぶりに来院される子供の患者さん。

『家でゲームしかすることなかった』『外で遊ぶの禁止だったから』『課題より、ゲームの方に行ってしまう』『ステイホームだと見すぎちゃう』

『そうよね~家の中じゃ、ゲームくらいだもんね~。でも、前回より少し近視進んでいますね』と院長。

『やっぱりそうですか。学校休校を良いことに、一日中ゲームでした』とお母さん。

 

生まれたての赤ちゃんは、ほとんど見えません。

しかし、1歳で約0.2に、2歳で約0.4に視力が発達します。

3歳になるまでに急速に視力は発達し、3歳時健診前後では約1.0になります(月齢個人差有り)。

就学前には約1.0~1.2に発達します。

視力だけでなく、眼球運動やピント合わせも急速に発達していきます。

何気なくしている『見たいものにきちんとピントを合わせる(調節)』『見たい方向に目を動かす』『見続ける(固視)』『細かい字を追って読む(追視)』も、目の発達過程で獲得するもの。

更に『たくさんの刺激の中から自分の見たいものを選択して見る(音もそうですね)』『微妙な、物の立体感がわかる』などもそうです。

身体を動かすことで、目との協調運動も高まります。

例えば、屋外で鬼ごっこをしたら、遠くの広い範囲を確認したり、鬼との距離を確認したりと、視覚と身体全体を使います。

 

ところが、スマホ・タブレット・PCなどを操作している時は、ほとんど身体を動かしません。

画面との距離も、一般の読書距離(30センチ)より短く、20~25センチ(もっと短い距離の人も)に固定されています。

ピント合わせも常に同じ距離のままです。

眼球運動も、小さな画面の範囲のみ。

 

近視の人は、多くが遺伝的要素によります。

しかし、最近では、近視人口が世界的に急増化していて、環境の関りも大きいとされています。

姿勢が悪く、対象物との距離が30センチ未満だと、近視が進行することが報告されています。

小さいうちから近くの物だけを見る習慣になると、姿勢も悪くなり、何でも近づけて作業をするようになってしまいます。

また、長時間の近くを見続けることは、近視進行を早めることも報告されています。

最近では、太陽に含まれるバイオレット光が近視進行を抑えることがわかってきました。

1日2時間以上、屋外で遊ぶと、親が近視でも近視発症率が抑制されたという報告もあります。

散歩でも、公園でのんびり(その間、スマホなどは禁です)でも、バイオレット光は十分に浴びられます。

 

早く学校が始まって、外で思い切り遊べるといいね!

 

今年度の学校健診はコロナの影響で、例年よりも実施時期がずれます。

担当の眼科健診は、学校再開後、出来るだけ早い時期に行う予定でいますが、もし、それまでにご心配なことがあれば、ぜひご相談ください。

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2020.4.14 『あいうえお』から

ここのところ、スマホ・PC・読書・テレビの時間が増えています。

 

リアルタイムのテレビ視聴は、3月までの朝の連続ドラマのみでしたが、最近はNHKニュースは欠かさず。

最近の重大会見では、同時手話通訳も行われています。

 

あちこちチャンネルを替えてみたり、番組欄をよく見るようになると、NHKのEテレも興味深い番組が多々。

『見つかる、見つかる、見つかるEテレ♪♪』というフレーズを口ずさんでしまう院長。

 

ある日、手話の番組を目にしました。

手話にマスクは困るよね…

 

ふと、思い出したのは、国立リハビリセンターでの『障がい者スポーツ医』講習会。

新型コロナの話題が出始めた頃。

聴覚障害スポーツ担当講師(耳鼻科医)から、聴覚障がい者はマスクがあるとコミュニケーションが取りづらい話を聞きました。

だから、平時の診察時はマスクはしない。

手話が、単に手の動きだけではなく、顔の表情も大きく関わってくるからです。

なるほど~

 

当院には、4人の先天性聴覚障害の患者さんが、今までに来院されています。

意味として聞き取りが出来る発語の方も、そうでない方もみえます。

言葉を知らない外国の人と意思疎通するような、大きな身振り手振り、表情を駆使しコミュニケーションを図ろうとする院長ですが、細かなことは筆談です。

短い時間で会話のすべてを文章で書くのは難しいので、単語か、短文になります。

『困っている』とか『嬉しい』『安心した』という表現は、患者さんの表情や身振りからも推定。

患者さんも、院長の身振りと顔の表情、口の動きで理解しようとしてくれます。

 

Aさんは、20年以上お付き合いのある患者さんです。

ほぼ1~2か月おきに来院されます。

身振り手振りと表情で大まかにコミュニケーションを取り、その後、筆談で診察の結果や薬の確認をします。

Aさんが院長の白衣から覗く服を褒めてくれたり、Aさんの新しいカバンに気づいたり…など診療以外のコミュニケーションもあるのですが、手話の使えない院長は、見た(見えた)感じで判断しています。

発語の際は、手話も伴うことが多いのですが、表情を読み取るのに精いっぱい。

 

そんな経緯もあって、早速テキストを購入。

 

『手話』は手の動きなどを使ってメッセージを伝えあう『視覚言語』です。

目を合わせて会話し、眉の上げ下げや目の見開き・細かい首振りも重要な役割をします。

手話にも単語と文法があり、それをまず覚えないといけません。

ふだん使っていない指の動きは、なかなか難しいものです。

 

まずは『あいうえお かきくけこ』まで。

繰り返し、指を曲げたり伸ばしたり。

家人に『あいうえお かきくけこ の中から何か単語言って!』

『こう』(手話の単語で表現する院長)

『いけ』(同上)

『かき』(同上)

『おかき』(ちょっと待って~と、テキストで確認する院長)などなど。

子供がひらがなを習い始めた時のようです。

今から覚えられるかしら?

 

『久しぶり』

『元気』

『さようなら』

『お願い』

『〇歳です』出来る挨拶は、まだこれだけ。

 

手話の道は始まったばかりですが、道のり険しそう…

 

まずは、手話でAさんに挨拶(だけ)してみます。

 

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障がい者スポーツ医

GW10連休前半

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2020.3.31 ハリネズミかイノシシか

食器の展示や売り場を見るのが好きな院長です。

子供たちが小さい頃は、童話や戦闘物のキャラクター柄もありましたが、子供の成長とリフォームを機に処分。

今は、大部分が白の洋食器、オープンストック(いつでも単品から買足しが出来るロングセラーシリーズ)で統一されています。

美的センスに乏しいので、白は何にでも合って、盛り付けに手間取りません。

食洗器にかけられることも、時短家事の最優先事項。

和食器・漆器の出番は、手洗いを考えると、心に余裕のある時に…となります。

 

先日、近くのお店の食器売り場を散策。

目に付いたのは、横向きのイノシシ柄の小皿と小鉢。

白地に紺の線で小さなイノシシが3種類、柄になって描かれています。

紺の線で描かれたイノシシ、紺で塗られて中に白抜きのあるイノシシ、輪郭の中全て紺の縦線で塗りつぶされているイノシシ。

院長は、好きな動物(飼いたいとは思わない)が数種類あり、そのうちの一つがイノシシです。

すぐ隣にブタがあったのですが、全く心惹かれず。

 

食器を買う時は、慎重になる院長ですが、値段がとても手頃だったのと、サイズが小さく(直径10センチほど)スペースを取らないと判断。

チョコやクッキーを入れるおやつ用にぴったりだわ、と購入。

 

さて、家に帰って、小皿と小鉢を洗おうとして、裏を見ると『ハリネズミ』と書いた小さなシールが。

『?』

財布からレシートを出してみると、『プレート(ハリネズミ)』『ボウル(ハリネズミ)』の印字が。

『これって、ハリネズミだったの!?』

 

家人に買ってきた小皿と小鉢を見せます。

『この動物、何だと思う?』

『イノシシでしょ?何で?』

かくかくしかじか…

『まあいいじゃん!イノシシに見えるんだし…』

 

後日、もう一度、そのお店に行って、店員さんに尋ねます。

『これって、何の動物でしょうか?』

『少々お待ちください。(皿をひっくり返して)ハリネズミですね』

『そうですか…』(それはずるい~)

 

家人のみならず、もう少し広げて確認します。

『何に見える?』

『イノシシ』

『違うの。ハリネズミなんだって』

『え~!?そうなんですか!?』

 

院長周囲は、イノシシ派が圧倒的(10人中8人)。

ハリネズミと答えた2人にびっくりです。

今回購入したハリネズミがイノシシに見えるのを院長独断検証。

イラストのハリネズミの針が楔形で針を連想しにくい(イノシシの毛並みに見える)。

白地に描かれたハリネズミは、針部分(胴体)と頭部分の境がなかった(よくよく見ると、紺地の方は境目があるようにも見えるが)。

前足・後ろ足の幅が広く描かれ、走っているように見えるので、ハリネズミのちょこちょこした感じより猪突猛進のイノシシをイメージしてしまう。

 

いずれにしろ、食器のイラストレーターはハリネズミを描き、購入者(院長)はイノシシと信じて購入。

気付かなければイノシシのまま。

それでも、使う度に、ハリネズミVSイノシシと柄を見てしまう院長です。

 

描いた人と見る人の捉え方の違い…

 

そういえば…当院のマスコットキャラクター『あんこうちゃん』も。

看板にも診察券にも、描かれているアレです。

当初『くじら』のマークとよく言われました。

『違うんです、あんこうです。ちょうちん(イラストでは☆)が付いていますよ』

『でも、海の上に浮かんでいますよね~』

『ハイハイ、確かに』

 

院長小学6年生時の自作のイラストです。

当時、芸能人のサインを真似て、自分のサインを描くのが流行り、その一環で、自分のマスコットキャラクターを作ったような…(その後、一度もサインする機会はありませんが)。

卒業文集の裏表紙のカットに採用されました。

『あんこうちゃん』はその頃から、進化成長せず今に至ります。

突っ込みどころ満載ですが、これも見方は自由です。

ハリネズミのこと、言えません。

 

自分にとっては、イノシシの小皿と小鉢。

おやつタイムに大いに活用したいと思います。

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2020.2.25  名古屋市もの忘れ検診

院長は眼科専門医ですが、『名古屋市もの忘れ相談医』でもあります。

スタッフも講習を受けて『認知症サポーター』です。

眼科はせ川こうクリニックは『認知症の方にやさしい店』に指定されています。

当院では、患者さんと会話の多いクリニックゆえか、眼科診療中の会話の中で『あれ?』と『認知症』を疑うとスクリーニング検査をし、『認知症サポート医・専門医』に繋げています。

『認知症』も軽度だと、簡単な会話は成立するので、既に内科にかかっていても、気付かれないこともあります。

 

今年度から、『名古屋市もの忘れ検診』が始まっています。

当院も実施医療機関です。

 

検診に関連して、国立長寿医療研究センターの先生から認知症の講義を受けてきました。

 

認知症に大きく関与しているのは…

中年期では、高血圧・肥満・聴力障害

高齢期(60歳~)では、うつ・糖尿病・運動不足・社会孤立・喫煙だそうです。

 

中年期の肥満は発症リスクを上げるけれど、高齢期にはやや太っている(ぽっちゃり)の方がリスクを下げます。

また、やせ(BMI<20)もリスクを上げます。

高齢期には、無理に痩せてはいけません。

体重減少と認知症も相関ありです。

 

糖尿病は認知症発症のリスクを上げますが、糖尿病性網膜症(眼底に出血など起こる)など末梢血管の循環が悪くなると、さらにリスクが高まるとのこと。

眼科と認知症もリンクしています。

 

喫煙もリスクありなので、禁煙をお勧めします。

喫煙は、眼科の病気(加齢性黄斑変性症など)を含め、ほとんどの慢性の病気のリスクになっていますが。

 

運動習慣も大事です。

推奨は1日60分ほど、1週間に3~4回、中~強度の強さで続行すること(体力のない人、機能の衰えがある人はこの限りでない)。

有酸素運動、筋トレ、太極拳(体幹を使う)などの運動が有効です。

 

あとは、社会との繋がり。

繋がりの大きさは関係なく、外部社会に参画することが重要。

 

内容は、どれも、スタディ(研究)に基づいた事実や仮説であり、非常に興味深い内容でした。

眼科以外の勉強は、いつもリフレッシュ出来て楽しい!と思うのは院長だけ?(もちろん眼科の勉強も楽しいですが)

 

人生100年時代。

現在95歳以上だと、女性の4人に3人、男性の4人に1人が認知症です。

誰もが、なり得る認知症だからこそ、発症リスクを抑える努力(予防)をしたり、早期発見・治療に主眼が置かれてきています。

認知症になったとしても、社会生活に支障を及ぼさずに、天寿を全うする。

これが、今の認知症治療の目標です。

 

認知症の患者さんを、目の病気の依頼で往診します。

認知症の程度も様々、認知症の進行具合も様々です。

 

『名古屋市もの忘れ検診』は、1年に一回受けられます。

65歳以上で認知症と診断されていない市民が対象です。

受付にお申し出ください。

 

まだ若い(と言っても中年…)院長は、今のうちに、リスク軽減に努めたいと思います。

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2020.1.14 地域医療実習

今年度より、藤田医科大学医学生の地域医療実習の受け入れ機関となりました。

5年生への進級が決まった4年生、もしくは5年生がstudent doctor(学生医師?)として、地域医療機関(病院や開業医)に実習に来ます。

初の受け入れ第1号は、好青年のMくん4年生。

 

院長が医学生だったころとは違い、今は、カリキュラム全てが前倒しになっています。

4年生までに、基礎科目(解剖・生化学・薬理などなど)だけでなく、臨床科目(内科・外科・産婦人科などなど)も終了。

国家試験も前倒しで2月(院長の時代は4月)です。

 

藤田医科大学では4年生から臨床実習です(院長の時代・岐阜大は6年生のみ)。

国家試験のシステムも内容も激変しているようです。

30年なんて一昔どころではない期間、親子ほどの差がある学生を見てそう思います。

 

『〇内科のT教授に教わった?』

『はい、すごく勉強されていますよね』(そりゃそうです)

『大学の同級生なの』

『え~!?そうなんですか!?』

同級生の何人かは、大学教授に就任しています。

T君(教授)もその一人。

学生の立場からは『は、は~』と恐れ多い教授T君と、『は、は~(母)』みたいな実習先の院長(私)。

『月とすっぽん』ではありますが、双方、もうそんな年齢、立場なんだわ~

 

院長の傍で、診療の様子を見てもらいます。

当院は緑内障患者さんが多いので、院長自ら眼圧を測ります。

『教科書のその機械で測るの、初めて見ました!』

『こんな風に見える眼底カメラ(オプトス)、初めて見ました!』

初めてがいっぱい。

M君が持参した眼科の教科書は、今風のイラスト多しの廉価な本と、由緒ある『現代の眼科学』の第13版。

『お~!まだ、あるのね!』

院長室の本棚にある学生時代の『現代の眼科学』は第3版。

ここでも時代を感じます。

 

昼休みの往診も同行してもらいます。

眼科の往診は意外だったようですが、患者さんに会い、状態や病名を知ると納得。

 

開業医は、毎日毎日同じことの繰り返しのようですが、患者さんは一人一人違うので、全く同じということはありません。

尋ね方、診療の仕方、説明方法、薬の処方内容、世間話など、個々に対応できるコミュニケーション能力は大事です。

知識も、技術も、検査機械も、医師を続ける以上留まることなく更新していかなければいけません。

特に、個人の開業医は、自分で課さないと、進化していきません。

医療現場以外の体験も、プラスになることは多いので、好奇心もあった方がいい。

などなど、熱い?思いも、先輩医師として、語った次第です。

『患者さんとの距離が近いことに驚きました』

病院よりは、そうだと思います。

距離が近いことが、開業医の強みであり、地域医療を担う上で重要なことだと意識して、診療をしています。

 

M君との距離も縮まり、息子のように愛着がわいた1週間。

最後は、鏡開きのぜんざい(毎年の院長お手製)を食べて、『実習お疲れさまでした!』

 

どの科を選ぶにしても、モノになるまでは、辛くても諦めないで!

止めないで続けることこそ、医師の道が開け、更に続けることが出来ます。

M君、頑張って!

オバサン医師(院長)からのエールです。

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2019.12.17   ハンフリーもやってきた

忘年会のシーズン。

当院ではお昼が定番。

いつもよりちょっとお洒落して、いつもよりちょっと美味しいものを、いつもよりちょっと素敵なお店で。

 

今回は高層ホテルで和食を。

 

まずは、全員で一年の振り返りをします。

昨年の忘年会で『2019年は電子カルテを導入します』と宣言したことは実行(カスタマイズ道半ば)。

その後、予定外で、OCTA(光干渉断層血管撮影)、オプトス(超広角眼底撮影)を導入。

そして先週、ハンフリーフィールドアナライザー(HFA:通称ハンフリー)の新モデルを2台導入しました。

ハンフリーは緑内障を始め視神経や網膜の病気で、視野の程度や進行を確認するためにとても重要な視野計です。

当院には常時2台、一時は3台が稼働していました。

検査機械も経年劣化か、時々調子が悪くなります。

2代目モデルは修理をしても(うん十万です!)また故障の可能性がある…とのことで、2台とも新モデル導入を決断しました。

新モデルの特徴は、短時間メニュー(だけど信頼性は高い)が出来たことです。

集中力の続かない人、腰痛などで長くじっと座っているのがつらい人など、今までの視野計よりも時間が短縮した分、身体的精神的負担が軽減されます。

3代目モデルは、よりコンパクトになり、よりスピーディーに。

 

OCTA、オプトス、そして新モデルのハンフリーもやって来て、今年は、開業以来、最高の設備投資をしました。

『新規開業みたいですね』とスタッフ。

院長は経年変化(劣化ではなく成長と信じています)していますが。

患者さんに、より精度の高い検査機器で診療を受けてもらいたいのは、院長の願いです。

院長はじめスタッフの診療へのモチベーションも上がります(勉強することも増えますが)。

 

さて、女性ばかりの当院では、話題に事欠きません。

『趣味』『お出かけ』『流行り物』『ハマりもの』『コンビニデザート』などなど…

一人発言すると、『☆(そのあとに続く会話)』『☆』『☆』で盛り上がります。

 

雑談の後、本日の司会からお題が。

『やってみたいこと』

その一つに

『30日間、毎日スーパー銭湯で岩盤浴して、備え付けの漫画を読破したいです!』永年頑張ってくれているAスタッフ。

『う~ん、有給30日はちょっと…』と、院長。

『定年退職したら、ですよ』Aスタッフ。

『でも、7日間なら…いや、まず3日連続有給取れるように来年は何とかするから、まずはお試し(岩盤浴と漫画)で3日やってみたら?』

『う~ん、そしたら本当の温泉に行く方が良いかもしれないですね~。なんて、3日休んだら、仕事気になっちゃうかも』

新しいスタッフも増える予定です。

来年は、スタッフの有給消化を目指します。

 

今年はハード面の充実、来年はソフト面の充実を。

至らない院長をフォローしてくれるスタッフに『感謝』の忘年会も盛会に終わりました。

こちらもご覧ください「OCTA(オクタ)講習会」

こちらもご覧ください「Optosがやって来た!」

こちらもご覧ください「電子カルテがやってきたけど…」

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2019.12.3 まぶたがぴくぴく

『まぶたがぴくぴくする』と、心配になって来院される患者さん。

話を聞くと…

『突然起こるんです』

『1日に何回も起こります』

『数秒くらいの繰り返し』

『いつのまにか収まっているんです』

『収まっていたと思ったら、また急にぴくぴくするんです』

などなど。

 

自分の意思に関係なく、筋肉が勝手に動くことを『不随意(ふずいい)運動』と言います。

 

日頃の診療で多いのは、上記のような症状を訴えられる患者さんです。

片眼のまぶたに、限局的であることも特徴です。

目の周りにある眼輪筋(がんりんきん)の不随意運動で、正式には『眼瞼ミオキミア』と言います。

原因は、眼精疲労やストレス・寝不足…など。

ゆっくりと休息を取ると、知らないうちに症状が消えていることがほとんどです。

 

ただし、自己判断せず、眼科的な病気が隠れていないか、診察を受けてください。

 

片側のまぶたや口の動きがおかしいのは、『顔面けいれん』です。

まぶたがぴくぴくするだけでなく、顔半分の筋肉が過度に動く場合は、顔面神経の支障が起きている可能性があります。

原因の精査・治療のため脳外科へ紹介することが多いです。

 

本当の意味での『眼瞼けいれん』は、両まぶたに発症です。

『目が開けにくい』

『目を開けているとつらい』

『目を閉じていた方が楽』

挙句に、『運転が危ない』『歩いていてもぶつかってしまう』などなど。

 

中枢神経系の伝達異常と言われていますが、原因の詳細は不明です。

40歳未満では、向精神薬や睡眠導入剤内服が要因の一つとも言われています。

『眼瞼けいれん』の患者さんは、目が開けにくいだけでなく、まぶしさや不安症状も伴います。

ボツリヌス毒素のまぶたへの注射が第一治療法です。

ただし、数か月で効果が切れてしまうので、再度行う必要があります。

当院ではボツリヌス毒素の注射はしていませんが、『他院で注射したが再発した』患者さんは、効果持続期間が終了したためと考えられます。

また、ボツリヌス毒素が効かない場合もあります。

眼瞼けいれんの専門医は少ないため、かなり深刻な患者さんには、遠方へご紹介することもあります。

 

さて、先日(2019.11.19)『メーテレ』テレビの朝番組『ドデスカ!』で『まつ毛ダニ』のお話をしました。

『まつ毛のきわまで清潔に』とお話ししましたが、まつ毛内側にあるマイボーム腺(脂が出る)を詰まらせるのも良くありません。

目を温めるホットアイマスク(おしぼりでも可ですが冷めやすい)はお勧めです。

涙成分を安定させるので、ドライアイにも有効です。

さらに、リラックス効果が大きいです。

安眠できるので、院長は就寝時にも愛用中。

ストレスによる、『まぶたのぴくぴく(眼瞼ミオキミア)』にもお勧めです。

 

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2019.11.19 宿題と肥満者率

医師会の講演会は、主に医学の話題ですが、今回は経済学のお話。

演者は、Eテレ『オイコノミア』という経済番組に又吉直樹さんと出演されていた、大阪大学の大竹先生。

又吉絡みで見始めた院長ですが、平易な言葉で、素人でも経済学をかじれる良質の番組でした。

 

今回のタイトルは『医療現場の行動経済学』

『行動経済学』とは、心理学や社会学の成果を経済学に組み入れた、経済学の一分野だそうです。

現実の人間の思考の傾向を考慮して、経済を考える、というもの。

 

例えば…

問1

1.コインを投げて表が出たら2万円もらい、裏が出たら何ももらわない。

2.確実に1万円もらう。

どちらを選びますか?

問2

1.コインを投げて表が出たら2万円支払い、裏が出たら何も支払わない。

2.確実に1万円支払う。

どちらを選びますか?

大多数は、問1では2を選び、問2では1を選ぶそうです(院長も同じ)。

得をすることは確実な方を取りたいけれど、損をすることは不確実な(危険性のある)方を取る傾向があるそうです。

 

同じ金額だと、得をした嬉しさよりも、損をした悲しさの方が大きくなる。

また、嫌なことは先延ばしし、嬉しいことは前倒しする傾向もあるそうです。

これらを含め、ヒトの心理をどのように医療現場の経済で活用するか。

 

薬や手術の効用・成功率と副作用・不成功率を患者さんに伝える場合。

副作用や不成功率がわずかだったとしても、患者さんはそれ以上に大きく捉える傾向があることは、自身の経験からも気づいていましたが、ヒトの心理的な傾向・癖だと初めて知りました。

医師は、エビデンスに基づいて、客観的に事実を話しますが、良いこと(回復・治癒)と悪いこと(悪化・一生の病気)では、患者さんの受け止め方が違うのは、もっともです。

 

健康診断の受診率を上げるには、どういう文面が一番有効か?

臓器提供のドナーカード同意率を上げるには?

予約の無断キャンセル率を防止するには?

大腸内視鏡の痛さの記憶を和らげるには?

などなど、数々の論文を引用し、解説されました。

医学と同様、リサーチ・集計・解析・結果・考察という流れは、経済分野の研究においても同じだと思いました。

数学も駆使し、文系というより理系なのでは?と思います。

 

中学生の時、夏休みの宿題はいつ頃やることが多かったですか?(大阪大学調査)

1.夏休みが始まる最初の頃

2.どちらかというと最初の頃

3.毎日ほぼ均等

4.どちらかというと終わりの頃

5.夏休みの終わりごろ

 

院長は1です。

『宿題後回し傾向』が強いと、喫煙率やギャンブル習慣、飲酒習慣が優位に高くなることが分かっています。

消費者金融の利用も。

それ以外に、肥満者率ともかなりの相関があることがわかっています。

 

中学時代の宿題癖で、将来の傾向までわかるとは…

 

ちなみに長男に上記の宿題の問いをしたところ…

『当てはまるの、無いわ』

『えっ?』

『だって、宿題やったことなかったもん…やろうとすら思わなかった』

選択肢に該当しない人がいるとは…

理由の詳細まで忘れましたが、何度も学校から親(院長)の呼び出しがあったからね~

相関の結果を知ると、先が思いやられます…

 

『行動経済学の知識で患者さんの意思の傾向を理解できる』

『何気ない表現で患者さんの意思決定が変わる』

 

勉強したことを日々の医療現場で試してみようと思います。

愚息が今からでも『宿題先終え傾向』になるよう、家庭でも行動経済学試してみます。

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2019.11.12 ずっとAだったのに…

中学3年生のB君が来院しました。

『最近、プリントとかを離して読むようになったんです。離したほうが見やすいって言うんです。若いのに』と付き添いのお母さん。

裸眼視力は右1.2左1.2でしっかり見えています。

近くの見え方も、右1.0左1.0で全く問題なしです。

『学校の視力検査ではずっとA(1.0の指標が読める)だったんです』

眼科の病気になったこともないので、生まれて初めての眼科受診でした。

眼位(目の向き)は正常。

診察でも異常はありません。

 

眼科では、視力検査と同時に、屈折検査(機器)も行います。

データによって、近視・正視・遠視・乱視があるのか、どの程度なのかが分かります。

B君は軽度遠視が出ていました。

 

乳幼児の多くは軽度の遠視ですが、就学時の頃には正視(近視も遠視もない状態)になります。

軽度の遠視では問題はありませんが、強度の遠視では近くも遠くもぼやけて見えるようになり弱視になることが多々あります。

また、無理にピントを合わせようと調節すると両目が内向きになる内斜視を起こします。

小学校低学年までの子供は、調節力(ピント合わせ)が強いので、視力が良くても、遠視が隠れていることもあります。

また、視力が出にくく近視の値が出ても、実は近視ではない場合もあります。

子供では、調節を完全に取ることが出来ないため、調節を麻痺させる検査用目薬を使い、正しい値を把握します。

 

中学3年生だと、通常の屈折検査で十分です。

しかし、B君は『視力良好』『でも、近く見づらい』『軽度遠視』から、調節麻痺点眼を使い検査をしました。

すると…中等度の遠視が隠れていました。

これじゃあ、近くが見にくいわ~

 

B君は生来中等度から強度の遠視があったと推測されます。

3歳時健診以降、視力や眼位で異常が見つかることが多いのですが、B君はたまたま眼位異常もなく視力低下もなくスルーしてきてしまったのでした。

老眼と違って、調節力が十分あり、近くも見えるので、本人も周りも気にしていなかったようです。

中学3年生になり、勉強量も増えてきたあたりから、近くにずっとピントを合わせるのが辛くなってきたようです。

早速、遠視のメガネを処方することにしました。

 

後日、出来たメガネの確認にB君来院。

『すごく良く見えます。目も楽だし』

B君、良かったね。

お母さんも、『あれ?』と思い連れてきてくださって良かったです。

ぐっと、勉強しやすくなったはず。

受験、頑張って!

 

視力検査は、意義があります。

ただし、視力検査だけでは、分からないこともたくさんあります。

視力が良くても、例えば『本を読んだり細かい作業をすると集中できない・すぐ飽きる』場合、強い遠視が隠れていることもあります。

子供(未成年)は、自分からはあまり訴えないので、周囲が『あれ?』と思ったら受診をお勧めします。

一番楽な(目の)状態で、最大視力を出すアドバイスをするのが眼科医です。

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